東京の上野にある上野の森美術館で開催中の「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」(2026年5月29日(金)〜2026年8月12日(水))に行ってきました。
(【公式】大ゴッホ展 夜のカフェテラス 東京展 | 2026年開催)
平日の午前で日時指定券を購入して行ったのですが、さすがに6月30日まで日時指定予約優先制、7月1日以降は完全日時指定予約制というだけあって大人気でした。いや、「日時予約制」ということにして人々を煽っているのかもしれない。
それはともかく、鑑賞している人々はほぼ日本人の中年~高齢者といった方々が中心でした。写真撮影は「夜のカフェテラス」他1点以外は不可。混雑のために結構ストレスを感じました。
展覧会の構成は以下のようになっています。
第1章 バルビゾン派、ハーグ派
第2章 オランダ時代
第3章 パリの画家とファン・ゴッホ
第4章 パリ時代
第5章 アルル時代
今回の展覧会は「第1期」と称していて、「バルビゾン派やハーグ派の影響を受けた草創期のオランダ時代~印象派を中心とする画家たちと交流したパリ時代、さらにアルル時代といったファン・ゴッホの前半生に焦点」なのだそうです。
では「第2期」があるのかというとそれは来年~再来年で、「実に約70年ぶりに《アルルの跳ね橋(ラングロワ橋)》の来日が予定されている」なのだそうです。
では「大」ゴッホ展と言わずに、「ゴッホ展 前期」「ゴッホ展 後期」とか言ってよと。ゴッホの代表作がかなり揃うというのでもなさそうだし、「大」ゴッホ展というのは看板に偽りあり。
ゴッホの絵を5期に分けるとすると
1.オランダ時代
2.パリ時代
3.アルル時代
4.サン・レミ時代(精神を病んでからの療養所)
5.オーヴェル時代
このうち、この展覧会の標題にもなっている「夜のカフェテラス」はアルル時代、その他、ゴッホの作品として有名なもの、多くの人がいわゆる「ゴッホらしい絵」と感じる作品は少数の例外を除いてほぼ上の「3.アルル時代」「4.サン・レミ時代」「5.オーヴェル時代」に集中しているので、「ゴッホの絵」の固定観念がしっかりある人には本展覧会の前半部分は「これじゃない」感があるのではないかと思います。
というのも、
「第1章 バルビゾン派、ハーグ派」ではゴッホはまだ登場していなくて、ミレーやドービニー、イスラエルス等、の画家の作品が掲げられているだけ。しかもゴッホ以降の絵も。
「第2章 オランダ時代」のパートでまず目立っていたのは鉛筆やインク等で描かれた地味な風景画の素描でしたし、ひたすら暗い色調の「織機と職工」を描いた油彩や素描、ジャガイモとか種をまくとかの屋外作業の人々とか有名な「じゃがいもを食べる人々」のリトグラフ、地味な人物画、静物画等々だったので。ただ、私はこの素描を見て、やはりゴッホは素描もうまいんだなと感心しました。世の中、カンヴァスを1色で塗りつぶして丸を描いて「作品」とかカンヴァスに偶然のしずくのシミをつけて芸術だとか言ってきた人もいるけれども...私はそれは大嫌い、インチキに見える...そんな人たちもデッサンとか素描とかやれば本当はうまいんだろうかなと。でなければ、藝大・美大でなんのためにデッサンの試験をするのかと。
「第3章 パリの画家とファン・ゴッホ」ではやはりゴッホ以外のマネとかルノワールとか、モネとかピサロとかセザンヌとかマクシミリアン・リュスとかの関りのあった画家たちの作品ばかりでしたし。
それでようやく
「第4章 パリ時代」に至って再びゴッホの作品が出てくるのでした。ここには「モンマルトルの丘」とか「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」とか「バラとシャクヤク」とか出てくるけれどもこれが「ゴッホ」のイメージに本当にピッタリかと言うとそうでもない。ではあるけど展示されているうちの一部の静物画や室内画、自画像には段々「ゴッホらしさ」が出てきます。
「第5章 アルル時代」に「夜のカフェテラス」が出てきます。
ただ、この展覧会というのは「夜のカフェテラス」全面推しで、ただただ「夜のカフェテラス」を「正面から」鑑賞する・写真を撮るためだけのために長蛇の列に並ばないといけませんでした。これがなんと言ってもストレス。まるで50年以上前に上野動物園にパンダが来たときみたいな圧倒的な「見世物感」がありました。いや、作品自体は素晴らしいのです。でも、「正面から鑑賞するためには長蛇の列に並んでくださいね」というのは、逆に言うと「並ばないとかなり斜めからしか見られませんよ」という訳で。いや、絵は良かったのですが、ただ「ここまでして野次馬的に観るのもなんだかな」と思ったのも正直なところで、しかし「斜めからしか見えない」というのも圧倒的に悔しいから仕方なく並びました。
(「夜のカフェテラス」 by フィンセント・ヴァン・ゴッホ 油彩/カンヴァス 1888)
展覧会を出てから図録を買おうとすると、またそのために外に出て、25分並ぶのだという。「図録は通信販売もできますよ」となってはいたけれども、そんなものは絵を観た直ぐに買うのが良いのであって、後日ネットでなんてのは冷めてしまう。
絵の観覧時の混雑は仕方ないけど、ミュージアムショップに行くのに長時間並べだの、再度入場券を出さないとショップにも入場できませんというのは、結構ストレスが溜まります。Webチケットだと、ブックマークしていても時間が経つとIDとパスワードを入れないと再表示されないみたいなことも起きうるし毎度毎度それもストレス。この美術館でやる展覧会、構造とプロセスが良くないのではといつも感じてしまいます。狭いからどうしようもないということなのかな。
ではあっても、この展覧会「ゴッホの前半」であり、必ずしも「大ゴッホ展」でも無かったけれども、それ以外に「ああ、ゴッホの若い頃はこういう作品も沢山描いていたのか。素描もうまい」、という発見もあります。蝶が卵から蛹になっていく(前半)のを見るような展覧会。蛹から蝶への過程(後半)は次回来年の展覧会ということだと思うけれども、ゴッホに興味がある方は是非。

