物語。。。30

 

 

 

 

 

「あなたが、、本当の鬼だったら、どんなに、、、よかったか、、」

 

 

「宮、、、」

 

 

「私が、、帝の側に侍ることは、、出来ません。

 私は、、、、あなたに相応しくない。

 帝、、、あなたには、もっと華やかで、、気品に満ちた方が必要です。

 民に敬われて余りあるような方が、、。

 それは、私ではない」

 

 

「そんなことはない!

 あなたは、誰にでも分け隔てなく優しさに溢れている。

 あなたが笑うと、華が咲いたように周囲が明るくなる」

 

 

「ふふ、、、それは、帝のことでしょ?

 あなたの笑顔は、周囲をお天道様のように照らす。

 あなたの笑った顔が、、、私は、、、一番、、、」

 

 

「一番、、何?」

 

 

「、、、、、、、、。

 いえ、、、なんでも、、な、、い」

 

 

「言って、、。

 お願いだ、、」

 

 

「、、、、、、。」

 

 

「やっぱり、あなたは、私のことを好きでいてくれてるとしか思えない。

 自惚れなんかじゃない。

 私は、そう思ってる。

 お願いだから聞かせて。

 私のことを、、、本当は、、どう思ってる?」

 

 

「、、、、、好き、で、す、

 お慕いしております、、」

 

 

「二ノ宮!ありがとう、嬉しい、、

 でも、だったら、これからも私と一緒に、、」

 

 

「だからそれは、出来ない相談だって何度も、、」

 

 

「あぁ!もう!ごちゃごちゃ何言ってんですか?!

 宮さま!何をそんなに恐れているんです?

 いつもの宮さまらしくないったらありゃしない。

 私の宮さまは、そんな意気地のない情けない人ではなかった!

 いつも、、、冷静に俯瞰に物事を見ることができるお方だった。

 それなのに、、、あぁ、、情けないったら!」

 

 

私と鬼との、、、不毛な会話が続く中、、、突然、涼介が割って入ってきた。

 

しかも、、

私のことを情けない意気地なしだと言い切った。

 

 

「まぁまぁ涼介、そう興奮するなって。

 確かに、情けない会話だったけど、恋をするとな、色々と情けなくもなるもんなんだ」

 

 

「潤さまも恋をしておいでなのですか?

 私には、、、、分かりませんが、、」

 

 

「ふふ、、涼介もその内に分かる。

 だけどな、、、和宮、、、。

 確かに、雅紀と一緒に歩むことは苦労の連続かもしれん。

 でも、それ以上に歓びもあると思わんか?」

 

 

「歓び、、?」

 

 

「あぁ、苦労以上の歓び。

 愛しい人と過ごし、その人を助けてあげることができる。

 共に、、、生涯を歩める。

 なぁ、和宮、、、

 その苦労と歓びと、今、ここで今生の別れをする悲しみと比べたら、どっちに傾く?」

 

 

「そうですよ、宮さま。

 それとも宮さまの鬼への気持ちって、そんなもんだったんですか?」

 

 

そんなもん、、って、、涼介、、、。

 

 

私の、、、、気持ちは、、。

 

 

「私は、、、、、あなたの、、こと、を、、」

 

 

そこまで言った時だった。

 

 

「大変です!

 帝がどこにもいらっしゃらないと今知らせが!

 警備の者が必死に探してます!

 皆さま!一大事でございます!」

 

 

渡殿を触れ回る声が聞こえてきた。

 

 

「あぁ!しまった!バレた!」

 

「潤!」

 

「どうされますか?

 このままでは!

 もう、そっと戻ることも出来ません」

 

「宮!言って!

 私と共に歩むと!」

 

「宮さま!」

 

「和宮!」

 

「、、、私は、、、鬼と、、一緒に、、、

 、、、、、、、、。

 、、、、、、。

 これからの人生を、、

 、、、、、。

 生きていく!」

 

 

「二ノ宮!」

 

「宮さま!」

 

「和宮!」

 

「ありがとう、二ノ宮、、。ありがとう。

 嬉しい、、、

 潤!

 これから、堂々とここから出て行く。

 二ノ宮を連れて清涼殿へ戻る」

 

 

鬼が、、、、ううん、、、、雅紀帝が、私を軽々と抱き上げると、潤を振り返り言った。

 

 

「はい!承知いたしました!

 私が先触れをいたします。

 涼介も同行するように、、」

 

「はい!

 宮さま!おめでとうございます!

 涼介は、、、嬉しい、、、宮さま、、、

 きっと、宮さまの父上も母上も喜んでおられます」

 

「涼介、、、」

 

 

 

「では、参ろうか?

 潤!」

 

「はい!」

 

 

潤が渡殿に出ると、ひと声「帝のお出ましである!途を空けよ!」と言触れた。

 

 

瞬時に、方々の局から、

「えっ?」

「何と!?」と声が上がる中、、。

 

 

潤を先頭に帝に抱き上げられた私、そして涼介が、

 

 

そろそろと、、

 

まるで、、

 

 

行幸のように渡殿を進んだ。