21...nino

 

 

 

 

 

 

 

Jが言ってたとおり、宿はがら空きで、簡単にJの分も部屋をとれた。

 

 

 

「お二人でこちらに?

 珍しい、、、こんなシーズンオフに何か目的でも?」

 

宿で受付する時に聞かれてしまった。

 

 

 

「いえ、、別に、、。

 ただ、夏にサークルの合宿でこちらに来て、良いところなので、また来たかったんです」

 

「あぁ、そうなんですか。

 合宿で、、。

 でも、、今は、あまり観光する所もありませんが、、」

 

「あの、、、向こうにある、、森なんですが、、」

 

「え、、、。

 森、、が、、どうかしましたか?」

 

「えっと、、随分、広いなぁ、、と思って。

 確か、、湖もあるんでしたよね?」

 

「はい、、。

 池と湖の丁度中間のような大きさですが、、。

 水は、とても綺麗ですよ。

 、、、、。

 そうだな、、、今の季節なら、、朝霧も、、ない、、から、大丈夫か、、」

 

 

後半は、聞こえるか聞こえないくらい小さな声で言われたけど、、。

オレは、しっかり聞いたぞ。

 

 

「え?霧がどうかしましたか?」

 

「、、、、、。

 お客さん、、。

 あの、、あまり、、言いたくないんですけど、、。

 森に朝霧がでた朝は、、湖に近づかないでくださいよ」

 

「それは、どうして?」

 

「、、、、この辺の言い伝えでは、、。朝霧の出た朝、、静かな森に入ると、、」

 

「、、入ると、、?」

 

隣で、『ゴク』っと潤くんが唾を飲込む音がした。

 

 

 

「いえ、、、やっぱり止めておきましょう。

 わざわざお客さんを怖がらせることもない」

 

 

それからは、何を聞いても、宿の人は、何も応えてくれなくなってしまった。

 

 

 

「にの~~~。やっぱ、ヤバいって。

 あの何かを隠してるような宿の人の態度見た?

 めっちゃヤバいってぇ」

 

部屋に案内されて、荷物を置くと、早速、Jがやってきた。

 

 

 

「、、、、、、。

 オレ、、別に、Jに着いてきてって頼んだ覚えない。

 怖かったら、帰っていいんだよ」

 

「そんなこと出来ないの分かってるくせに言わないでよ。

 居ますよ、居ます。

 ちゃんと、にのの骨は拾ってやるから」

 

「、、、それ、、冗談だよね」

 

「ふふ、、冗談」

 

 

、、、、、、。

 

J、、ほんとに怖がってるのか、そうでないのか、、。

 

 

 

とにかく、、オレたちは、、

 

 

来たんだ。

 

 

 

夏の想い出としてだけで、片付けることが出来なかった。

 

 

あの、、、森に、、。