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食事が終わると少し疲れもとれたような気がした。

 

 

「オレ、ちょっと行ってみるよ」

 

「ん?大野さんたちのとこ?」

 

「うん、翔ちゃんはどうする?」

 

「オレたちも行くよ」

 

 

結局、知念の案内で浜に行くことになった。

 

 

知念はたぶん、寝ていないのだろう。

顔色が悪いうえに、何もしていないと泣きそうな顔をして歯を食いしばっている。

 

 

無責任な慰めの言葉など掛けようがなかった。

 

 

 

浜に着くと、急遽建てられたような小屋に案内された。

 

 

「雅紀さまよろしいですか?」

 

「うん、、知念?」

 

「はい、みなさまをお連れしました」

 

 

中に入ると、一番奥に大野さんが開けられた窓の外をジッと見て座っていた。

 

その前には、手付かずの食事が、、、。

 

 

「おーちゃん、食べなきゃ、、。

 おーちゃんが倒れたら、智さんが心配するよ」

 

「相葉ちゃん、、、、。

 ごめん、いらん」

 

「いらないじゃなくて、無理にでも食べて!

 知念だって、頑張って食べてるんだよ」

 

「大野さん、お願いします。

 召し上がってください」

 

 

知念にも説得されて、しぶしぶ箸をとったおーちゃん。

 

 

 

「大丈夫です。

 必ず、智さまは帰って来てくださいます。

 私を一人置いて、どこかへ行かれるなんて絶対にない。

 必ず、私を迎えに来てくださいます」

 

 

弱々しいながら、でも、ハッキリと知念が呟いた。

 

 

「そうだな。

 知念。ごめん。

 智がお前をほったらかしにするなんて、そんなことするはずないよな」

 

おーちゃんがやっと少し笑うと、知念もホッとしたようだ。

 

 

 

 

「雅紀さん、どうですか?

 海、そんなに荒れてるようには見えないけど、、、」

 

「そうですね。

 今日は、割と穏やかなので、家臣たちが何艘か船を出して探してます。

 まだ報告はないけど、何とか今日には見つけてほしいと、、、」

 

雅紀さんも遠く海を見詰めていた。

 

 

 

 

そこで、何時間が過ごしたけど結局その日は何の進展もなかった。

 

 

 

疲れた身体を引きずって、船で捜索していた家臣が帰ってくる。

 

お互いに成果が得られずに帰って来たと知ると、あからさまにガッカリしているのを見るのはつらかった。

 

 

 

 

まだ、”大”の民には、何も知らされていなかった。

限られた家臣たちのみが、智さんのことを知っているだけだった。

 

 

なぜ?というオレに、

 

「民には民の暮らしがある。

 みなに知らせて探したりしたら、きっと智に怒られる。

 長として育てられた智のことだ、自分のことだけで民の暮らしを妨げることは望んでいない」

 

かずさんが雅紀さんと同じように海を見詰めながら、オレの疑問に答えてくれた。

 

 

 

 

智さん、雅紀さん、かずさん、、、。

それぞれが国の長となるべく育てられてきた人たち。

 

 

その人たちの覚悟は、、、、なんと大きなものなんだろう、、、。

 

 

 

 

オレは、、、、こんな覚悟を持った人生を生きてる人たちを他に知らない。