9月のまだ暑さが残る頃、職安から受けた紹介を元に現地へ向かった


面接なんていつしたかな。大した予習もすることなく車は進む


私はあまり緊張しないが、よく緊張したフリをする。その素人臭さ、純粋さ、時には自分自身の気を引き締める。


などと考え事をしていると、じきに教えられた通りの場所へ着く。


そこには、錆で茶色に染まったトタン屋根、壁はベニヤ板か何か、合板でできたお化け屋敷の様な建築物


少し離れた所に鉄筋コンクリート建ての事務所を発見した。


看板は無いが恐らくここだと思う


私は足を進めドアを叩いた


出てきたのはヒョロヒョロで白髪の50代半ばであろう、いかにも中小企業の社長という感じの男


苦労しているのだろう。顔には艶が無く、髪も痛んでいた。


私はまた昔を思い出した。怖くなった。少し憂鬱にもなった。


ここで働けば、どうなるんだろう。


少しうつむいた顔を上げ、もう一度社長の顔を見ると目が合った


いい目だった。生きている目だ。


何日か前の事です。


私は仕事も続かず、スロットでも波に乗れず、金も底を尽いていた。


ふと鏡を見ると、そこには死んだ魚のような濁った目の私がいて


とても驚いた。顔も引きつった様な感じで、とても生気を感じない。


あわてて笑顔を作ってみたが、目が笑っていない。


私は「あさって」を見て将来を心配するどころか、今日という現在すら否定しようとしていたのだ。


何かを必死にすることで考える事を忘れたい。そう思っていたのかもしれません。


面接はうまくいき、私は雇ってもらえる事になった。会話はあまり覚えていないが。


実はこの会社の給料では、収支が赤字だった。しかし、絶対に勝てるスロットと思い込む事にした。


アパートに帰ると彼女は喜んでくれた。


私も得意げな顔で笑った





職安に行く少し前、おそらく二、三ヶ月前の事


私は金銭的不安からだろうが、精神に異常をきたしてきた。


手元にあるのは2万円。それも消費者金融から借りたもの。


これで負ければ滞納した家賃すら払えない。そんな事を考えながら何かブツブツ呟き


何か遠くというか、あさっての方を見ていた覚えがあります


何もする気が起きない


白い壁が夕日でオレンジ色に染まって綺麗でした


今でも鮮明に覚えています


色々考えました。何故、私は、社会不適合者なのだ。と


人をだましたり、だまされたり。うんざりだった。今まで勤めていた会社などに、希望も持てなかった


田舎と聞くとなんだか聞こえはいいですが、田舎社会も生きていくには苦労があります。


人のいい者や引っ込みがちな人から踏み台にされていく。


私はそういう場面をよく目の当たりにしてきました。


世渡りを知っている人と、知らない人の差がとても激しいのです。


もちろん皆生きる為、家族を養う為に必死なんです。お互いに。


ですが、私はその必死さが滑稽に見えた。


社会とは、仕事の成果を上げた人に味方する。正しい人とみなす。それがたとえ他人の懐から盗った成果だとしても、過程などは目をふさぐ。


「グレーならセーフなんだな・・・」


そんな事を思いながらいつの間にか寝ていた。



長年?生きてると、いろいろな分岐があって、その度にどちらかを選択する


今から10年前、まだ若かった


まっとうに生きる事すらだるくてしょうがない。毎日仕事もせず、朝からパチ屋に通いつめたんです


2002年位からでしょうか。当時スロットは、ライト層を取り込もうと、いわゆる目押しの容易なもの


また、ギャンブル性の非常に高い物が人気を博していました


私もまた、あっさり虜になり、勤めていた会社を退社し、いや、勝手に辞めパチ屋に入り浸りました


金は無いので、親にもらったり、当時付き合っていた子に出してもらったり。


ある日、まだよくわからないジュウオウとかいう台で、10万円勝ちました。


たった1時間弱で。とても気持ちがよかった。周りの視線が。「すげえ」


等といった声が聞こえてきそうだった。とても誇らしかったんですね。自分の存在を認めてもらったみたいで


ここならやれると思ったんでしょう


当時はまだ情報は主に雑誌で仕入れる程度でしたし、田舎って言うのもあって、結構いい台でも捨ててあったり


まさに楽園でした。


多い月で70万位稼いだ月もあり、順調でした。しかし20そこらの私には計画などもってのほかで


都会へ行ってみたり、ゲームセンターなど、金は稼ぐ分だけ出て行きます


次第に生活も苦しくなり、借金をするに至ったのです。


借りるのは簡単でした。いわゆる無人君というやつで、モニターから聞こえて来る声に従って手順を踏めば


あっという間に30万位借りれました。


当時私はアルバイトとして一応月に何回かは仕事行ってましたので、こんなでも借りれたんだとおもいます


そんなころ私に一つの決断が迫ってきたのです


当時付き合ってた子が言いました


「仕事しないなら別れたい」


私は悩みました。この生活、精神的にとても悪いという事にうすうす気が付きはじめてはいたのですが、


正直、学歴も職歴もないようなこの私にできることなんて限られている。


そう伝えました


そのとき彼女は何と言ったんだろう・・・しかし私は素直に職安に行きました。


案の定、私のやりたい仕事なんて見つかりません。私は仕事をしたくなかったのだから


しかし、彼女は条件に当てはまる仕事を探して私に見せました。


力仕事位しか当てはまりません。しかし給料は安い。とても二人で食って行くには無理があります。


借金の返済がありますから。完全に赤です


しかし彼女は、私に強く迫ります。


「わかったよ」とでも言ったのでしょうか。私はしぶしぶ面接を受けに行く事にしました