【Researcher's Eye】 奥 健太郎:共同研究のススメ | ねぇ、マロン!

ねぇ、マロン!

おーい、天国にいる愛犬マロン!聞いてよ。
今日、こんなことがあったよ。
今も、うつ病と闘っているから見守ってね。
私がどんな人生を送ったか、伊知郎、紀理子、優理子が、いつか見てくれる良いな。

曽田歩美様に頼んでマロンの絵を描いていただきました。

【Researcher's Eye】奥 健太郎:共同研究のススメ

三田評論ONLINEより

  • 奥 健太郎(おく けんたろう)

    慶應義塾大学法学部教授
    専門分野/日本政治史

最近、仲間とともに、奥健太郎・清水唯一朗・濱本真輔編著『政務調査会と日本の政党政治──130年の軌跡』(吉田書店、2024年)という学術書を刊行した。政党の政策決定機関である政調会の歴史を明治期から平成期まで追跡した1冊で、その歴史的な射程の長さ、政治学者と歴史学者の共同研究という意味で、なかなかユニークな1冊になったと思っている。

実は、私はこれまでにも2冊の共同研究の論文集を刊行した。3冊目ともなると、よほど共同研究好きな人間と思われるかもしれない。しかし、共同研究はなかなか骨の折れる仕事である。まず、単純に日程調整や会場設定といったロジスティクス面での調整コストは、案外ばかにならない。しかし、それにまして大変なのは、サブスタンス面での調整コスト、つまり「共同」の密度をどの程度に設定するのか、その塩梅がなかなか難しい。

具体的にはこういうことである。歴史の共同研究でいえば、単に時代を振り分けて、各執筆者が自由に主題を設定し、それらを単純に総和させるのであれば、共同研究はさして難しいことではない。しかし、実のある共同研究を行うためには、ゴールにむかう道筋を仲間と吟味し、分析の視点を共有する必要があると思う。上記の共同研究では、政調会の何に注目しながら分析していくのが有意義なのか、その視点の設定になかなかエネルギーを使った。しかし、その一方で決め事を作りすぎると共同研究は息苦しくなり、モチベーションもあがりにくい。研究者は良くいえば「自由」を愛し、悪くいえば多かれ少なかれ「我儘」な人種だからだ。

ともあれ、こうした困難を克服しながら行う共同研究は、やはり面白い。仲間の知力、情報収集力、分析力を動員して、ゴールにたどり着くときの達成感はたまらないものがある。また仲間とあれこれ議論しているうちに、斬新な視点を発見した瞬間、つまりアイディアが化学反応を起こしたときの知的興奮は、個人研究では得られない贅沢な瞬間である。

再び宣伝となって恐縮であるが、私たちの間ではどのようなアイディアの化学反応が起き、その結果どのようなゴールにたどり着いたのか、新著『政務調査会と日本の政党政治』を手に取って、確かめていただければ幸いである。

 

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。