JAXAは、現在「復旧へ向けて準備を進めて」いるとしている。

SLIMの月面探査計画は、高精度の「ピンポイント着陸」技術を使ったことから、「ムーン・スナイパー」とも呼ばれている。日本は今回、アメリカ、旧ソヴィエト連邦、中国、インドに続き、月面着陸を成功させた五つ目の国となった。

しかし、制御下での着陸が完了した喜びも、電力レベルの低下と共に心配に変わっていった。

その結果、バッテリーシステムが完全に止まるよりも、機体をスリープ状態にする決断が下された。

JAXAは、「1/20 0:20(JST)の着陸後、太陽電池の発電が確認できなかったため、バッテリ残量12%の時点で復旧運用時に過放電で機能喪失したバッテリにより再起動が阻害される事態を避けるべく所定の手順に従ってバッテリを切り離しました。これにより、1/20 2:57(JST)に探査機は電源OFFとなりました」と説明している。

SLIMが着陸したシオリ・クレーターは、月面赤道のすぐ南に位置する

画像提供,NASA/LRO

画像説明,

SLIMが着陸したシオリ・クレーターは、月面赤道のすぐ南に位置する

しかし技術者たちはシャットダウンの前に、SLIMの置かれた状況の詳細と、月面への降下に関する画像とデータの収集に成功した。

「プロジェクトチームとしてはたくさんのデータが取得できたことを確認し、ほっとするとともにワクワクしはじめています」とも、JAXAはソーシャルメディアで書いている

その上で、今週中にSLIMの状況や現段階での成果を発表するとしている。

月の探査計画では、太陽が東の地平線から昇る「月における日中」の早い時間に着陸しようとする。これによって宇宙船は、太陽が西に沈んで暗闇に包まれるまでの「地球における2週間」、月面で太陽光を浴びることができる。

SLIMが着陸したシオリ・クレーターは現在、「月の朝」を迎えている。もし推定通り、SLIMの太陽電池が西を向いているなら、電池が太陽光をとらえて発電を始めるには、「月の午後」まで待たなくてはならない可能性がある。

SLIMは、独立して月面を移動する2台の小型プローブ(月面探査車)を搭載しており、着陸直前にこの2台は正常に分離できたことが送信データからうかがえる。

SLIMには赤外線カメラも搭載されており、これで数日間かけて月面を撮影し、月面の岩石の組成などを調べる予定だった。電力復旧後にこの調査をどれだけ行えるかは、不透明な情勢となっている。

過去の事例から統計的に、月面着陸は非常に困難なことが分かっている。成功例は約半数にとどまっている。

昨年には日本の民間企業、ispace (アイスペース)が月面着陸を試みた。しかし同社の「HAKUTO-R」は、搭載コンピューターのソフトウェア不具合で月面上の正しい高度が判断できず、月面に落下した。

アメリカの民間会社アストロボティック・テクノロジーは18日、月着陸機「ペレグリン」の着陸を断念。ペレグリンは推進システムの故障のため、着陸を試みることができないまま、地球の大気圏に突入して燃え尽きた。

動画説明,

日本の探査機が月面に高精度の軟着陸 宇宙探検の新時代

(英語記事 Japan hopes sunlight can save stricken Moon lander

 

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