BBC NEWS JAPAN より
南太平洋のナウル、台湾と断交 中国と国交結ぶ
ケリー・アン、BBCニュース
台湾と外交関係があった数少ない国の一つ、南太平洋ミクロネシアの島国ナウルは15日、台湾と断交し、中国と国交を結んだと発表した。台湾ではこの2日前に、総統選で新たな総統が決まったばかり。
ナウルは、台湾と外交関係を維持してきた12カ国の一つだった。
台湾をめぐっては、中国が自国の一部だと主張。近年、台湾と外交関係をもっていた国々と国交を結ぶ動きを見せている。
台湾は今回の断交について、13日にあった総統選の結果が中国の怒りを買ったことと関係があるとの見方を示している。
総統選で有権者らは、台湾の主権を主張する頼清徳氏を次期総統に選んだ。中国は頼氏を、過去に台湾独立を支持する発言をしていたことから「トラブルメーカー」と呼んでいる。中国は「独立」を、台湾が越えてはならない一線だとしている。
ナウル政府は15日、「(台湾を)もはや別の国ではなく、中国の不可分の領土の一部とみなす」と発表。これを受けて台湾当局は、「このタイミングは、中国が私たちの民主的な選挙に対して報復しているばかりでなく、国際秩序に対して直接的に挑戦していることも示している」とした。
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台湾外交部(外務省)の田中光政務次長は15日の記者会見で、中国が最近のナウルの「政治変動」につけ込み、財政支援によってナウルを「買収」したと非難。
「中国はそうした方法で台湾を抑圧できると考えているが、それは間違いだ。世界は台湾の民主的な発展を目の当たりにしている。このような卑劣な方法で(中国が)台湾の外交関係を奪い続けても、世界中の民主国家はそれを認めない」と述べた。
また、台湾を国際舞台で引き続き孤立させようとする中国の動きに対抗するため、同部は「強い警戒」を続けるとした。
中国は今回のナウルの決定を歓迎している。中国は人口2300万人の自治島の台湾を、いずれは中国政府が支配する、分離した省とみている。
中国外務省は、「中国との国交を再開するというナウル政府の決定は、『一つの中国』の原則が民意であり、時代の潮流であることを改めて明確にしている」とコメントした。
太平洋での影響力を削ごうと
ナウルは以前も台湾との関係を断っている。
2002年に今回同様、外交関係を中国に切り替えた。しかし2005年5月、台湾との関係を回復した。
専門家らは、ナウルの動きは予想外ではないとしている。
ニュージーランド・マッセイ大学のアンナ・パウルズ准教授(安全保障研究)は、「ナウルが(国家)承認を台湾から中国に切り替える可能性はしばらく前からあった」と説明。
同じ南太平洋の島国ツヴァルについても、「承認を中国に切り替えるよう圧力を受けている」ことが懸念されているとした。また、気候変動で壊滅的な被害を受けているツヴァル国民に対してオーストラリアが昨年11月、避難用ビザ(査証)を発行する協定への合意を急いだのは、そうした懸念の表れだと述べた。
豪シンクタンク・ローウィ研究所の太平洋諸島プログラムのミハイ・ソラ研究員は、「中国は常に台湾の影響力を削ごうとしている。多数の小国が開発利益を求めている太平洋では特にそうだ」と話した。
「台湾にとっては、外交上の友好国が世界で減るにつれ、主権を主張するうえで、ひとつひとつの友好国の重要性が増している。(中略)そして、中国がその関係を損なうため、機会を狙い続けることは十分あり得る」
(英語記事 Nauru cuts ties with Taiwan in favour of China)