ダヴィデ像を生徒に見せ校長辞任……米フロリダ州の騒ぎにイタリアの美術専門家ら当惑 | ねぇ、マロン!

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曽田歩美様に頼んでマロンの絵を描いていただきました。

BBC NEWS JAPAN より

ダヴィデ像を生徒に見せ校長辞任……米フロリダ州の騒ぎにイタリアの美術専門家ら当惑

 

ダヴィデ・ギリオーネ、BBCニュース、ローマ

David statue

画像提供,GETTY IMAGES

米フロリダ州の小中学校で、イタリア・ルネッサンスの代表的作家ミケランジェロによる「ダヴィデ」像の写真を教師が授業で6年生に見せ、校長が辞職に追い込まれた問題で、像を所蔵するイタリア・フィレンツェの美術館が当の学校の教師や生徒たちを招待した。

ダヴィデ像の写真が「ポルノ」的だという親の苦情が、校長の辞職につながったという報道を受けて、フィレンツェのアカデミア美術館のセシリー・ホルベルク館長は、ルネッサンス美術を学んでいたクラスを同館に招待した。

ホルベルク館長は、校長は「ほめられるべきで、罰せられるべきではない」と指摘。「ダヴィデ像は紛れもなく、ルネッサンス期の芸術と文化の象徴で、ダヴィデ像を見せずにルネッサンスの話をするなど意味がない」と述べた。

旧約聖書に登場するダヴィデを全裸で表した全身像は、欧州で史上最も有名な美術作品のひとつ。神への信心と石を投げるための武器だけを手に、巨人ゴリアテに立ち向かったその姿を刻んだ全長5メートル17センチの彫像だ

米フロリダ州タラハシー郡のタラハシー・クラシカル学校でこのほど、ルネッサンス美術を11歳と12歳の生徒に教える授業で、ダヴィデ像が紹介された。同校は、独自の歴史古典教育を重視する認可校。

この学校では例年、ダヴィデ像を生徒に見せる際には事前に保護者へ連絡していたものの、今回は連絡をしていなかったことから、1人の親が学校に抗議した。ほかに2人の親が、事前連絡が欲しかったと学校に苦情を伝えたという。同校のホープ・カラスクイラ校長は23日、辞任するか解雇されるか選ぶよう学校の理事会に告げられたため辞任したと、地元紙タラハシー・デモクラットに明らかにした。

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フロリダ州でのこの騒ぎに、フィレンツェ住民やルネッサンス美術の専門家たちは大いに当惑している。ダヴィデ像はイタリア・ルネッサンスの傑作で、当時の人文主義的価値観の象徴とされる。1873年からアカデミア美術館で展示されている。

ホルベルク館長はフロリダでの騒ぎに「驚いた」と述べ、ダヴィデ像が「ポルノ」的と受け止められ得るという発想は、聖書に対する理解不足に加え、西洋文化そのものを理解していないに等しいと話した。

「こんなことが本当にあったとは信じられない。あまりにあり得ないばかげた話なので、最初は偽のフェイクニュースかと思った」と館長は言う。

「裸体の描写とポルノグラフィを区別する必要がある。ダヴィデの描写に、ポルノ的な要素、性的に暴力的な要素は何もない。彼は若い羊飼いで、聖書によると、立派な服も持たず、それでも自分のわずかな持ち物で村の人たちを守ろうとした」

「ばかげている」、「親は知る権利ある」

フィレンツェのダリオ・ナルデッラ市長も、ダヴィデ像を生徒たちに見せた教師を、数多くの美術品が展示されているフィレンツェへ招いた。

「芸術をポルノと間違えるなど、ばかげている」とナルデッラ市長はツイートし、「芸術は文明で、芸術を教える人たちは尊敬に値する」と書いた。

他方、米ネットメディア「Slate」のインタビューで、タラハシー・クラシカル学校のバーニー・ビショップ3世理事長は、「ダヴィデ」像を生徒に見せることを昨年は保護者に通知していたが、今年はそうしなかったことを「とんでもないミス」だとして、「物議の伴う話題や写真について、学校が自分の子供に教える際、親は常にそれを知る権利がある」と述べている。

「我々はダヴィデ像の全身を幼稚園児には見せない。小学2年生にも見せない。ダヴィデの全身像を見せても、適切だという年齢はある。それが何歳のことなのか、これから検討する」と理事長は話した。

Statue of David

画像提供,GETTY IMAGES

シエナ外国人大学の学長でフィレンツェ美術史を専門とするトマソ・モンタナリ氏は、こうした態度を不安に思うと話す。

「第一に、教育の自由が存在しないことにがっかりする。教育は、生徒の家族がその内容を制限したり手を加えたりすべきものではない」とモンタナリ氏は言う。

「他方で文化の面からいうと、西洋世界はこれまで、原理主義や検閲はよその社会にありがちなことと捉えてきた。そして自分たちこそ、民主主義の理想を世界に広められるのだと信じてきた」

「しかし今回のような文化的後退は、西洋にも原理主義的な考え方が存在すると、はっきり浮き彫りにした」

学校の理事会では、複数の保護者や教師が校長の辞任に抗議する予定だとされているが、カラスクイラ校長はたとえ復職が提示されても応じるか分からないと取材に話している。

校長はAP通信に対して、「あまりに議論になって大騒ぎになってしまったので、(自分の復帰が)本当に最善のことなのかよくよく考えなくてはならない」と答えた。

フィレンツェではアカデミア美術館のホルベルク館長が、「壮大な彫像から美しい噴水や絵画に至るまで、イタリアにはあちこちに美術品があふれている。博物館や美術館だけでなく、あらゆる街の広場や通りに。中には、裸体像もある」と指摘。こう問うた。

「それはポルノなのか? 人間の体を芸術的に描いたからといって、ひとつの街をそっくり閉鎖すべきなのか?」

(英語記事 Italian art experts astonished by David statue uproar in Florida

 

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