BBC NEWS JAPAN より
英エリザベス女王、死去 英王室発表
英王室は8日夕、エリザベス女王が滞在中のスコットランド・バルモラル城で亡くなったと発表した。96歳だった。
王室は声明で、「女王は本日午後、バルモラルで穏やかに亡くなった」と発表。「国王と王妃は今晩、バルモラルにとどまり、明日ロンドンに戻る」と発表した。
エリザベス女王の死去を受けて、長男チャールズ皇太子が国王となった。これからイギリスの追悼の先頭に立つ。国王は正式名がチャールズ3世となる。
チャールズ国王は声明を発表。「私の最愛の母である女王陛下の死は、私と私の家族全員にとって最大の悲しみとなる瞬間です。私たちは、大切な君主であり、とても愛されていた母の死を深く悼んでいます」とした。
そして、「女王の喪失は、国、王国、英連邦、そして世界中の無数の人々によって深く感じられることでしょう。この喪に服し変化する時期に、私と家族は、女王が広く抱かれていた敬意と深い愛情を知ることで、慰められ、支えられていくでしょう」と続けた。
首相が追悼の演説
リズ・トラス首相は、官邸前で演説。女王の訃報に「私たちは皆、打ちのめされています」とし、女王の死は「国民と世界にとって大きな衝撃」だとした。
トラス氏は女王を、「現代のイギリスにとっての礎(いしずえ)」だったと表現。「イギリスが今日のような偉大な国になったのは、彼女のおかげだ」と述べた。
また、女王が自らにとってだけでなく、多くのイギリス国民にとっても、個人的にインスピレーションを与えてくれる存在だったとし、「彼女の職務への献身は、私たち全員の模範だ」と話した。
トラス氏はさらに、「私たちは国王の家族と共に、彼の母親の死を悼み、一体となります」、「彼の母親が長い間、私たちに多くをささげてくれたように、私たちは彼に忠誠と献身をささげます」とした。
そして、「第2のエリザベス朝が過ぎ去った」とし、「神よ、国王をお守りください」と締めくくった。
スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン第一首相は、「エリザベス女王陛下の死去は、イギリス、英連邦、そして世界にとって深い悲しみの瞬間です。女王は、並外れた献身と奉仕の生涯を送られました。スコットランドの人々を代表し、国王と王室に深い哀悼の意を表します」とツイートした。
ウェールズ自治政府のマーク・ドレイクフォード首相は、女王の死去は「とてつもなくほど悲しい」とし、「史上最も長く君臨した君主として、彼女は英王政の価値と伝統をしっかりと守りました。ウェールズの人々を代表し、この悲しみの時期に、女王陛下の家族に深い哀悼の意を表します」と述べた。
最大野党・労働党の党首、サー・キア・スターマーも哀悼の意を表明し、女王を「卓越した君主」だったとした。そして、「王室にとっては深く、プライベートな喪失であり、私たちはこの時期、すべての思いを王室と共にします。国民も悲しみを分かち合っています」とする声明を出した。
バイデン米大統領らがメッセージ
外国首脳らも相次ぎ追悼の声明を発表した。
アメリカのジョー・バイデン大統領は、1982年の女王との初対面や、2021年に訪英した際に受けたもてなしを懐かしそうに回顧した。「ウィットで私たちを魅了し、優しさで私たちを感動させ、知恵を惜しみなく分かち合ってくれました。9/11後の最も暗い時代に、女王はアメリカと連帯し、『悲しみは愛することの代償だ』と私たちに痛切に思い起こさせてくれました」とした。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、女王は「心優しい」君主で、「フランスの友人」だったと追悼した。「エリザベス2世女王陛下は、70年以上にわたってイギリスの継続性と結束を体現してきました。フランスの友人で、自らの国と世紀を強く印象付けた心優しい女王として私の記憶にとどまります」と述べた。
ドイツのオラフ・ショルツ首相は、女王を「何百万もの人々の模範で、インスピレーション」だと表現。「第2次世界大戦の恐怖」の後に、イギリスとドイツの関係修復に果たした女王の役割をたたえた。また、「彼女の素晴らしいユーモアも惜しまれます」とした。
カナダのジャスティン・トルドー首相は、女王を「世界で特に大好きな1人」だとした上で、「彼女は私たちの生活において常に存在していました。そして、カナダ人に対する彼女の奉仕は永遠に、この国の歴史の重要な一部であり続けます。とても寂しい」と述べた。
家族が女王のもとに
王室は同日午前、女王が医師の管理下に入ったと発表。これを受けて、女王の子供たちは全員、スコットランド・アバディーンの西約64キロにある女王の居宅のバルモラル城に向かい到着した。
王室は声明で、「今朝さらに診察した結果、女王の医師は女王陛下の健康状態を懸念し、医師の管理下に入るよう勧告した」と説明。また、女王は快適な状態にあると付け加えていた。
王室がこうした声明を出すのはきわめて異例だった。通常、女王の医療面での問題はプライベートなことと見なされ、王室はなかなかコメントを出さない。
チャールズ皇太子(当時)は、妻のカミラ王妃と共にバルモラル城に到着。アン王女も、すでにスコットランドに滞在していた。
ヨーク公アンドリュー王子とウェセックス伯爵エドワード王子夫妻は現地時間午後5時(日本時間9日午前1時)過ぎ、同城に到着した。
孫のケンブリッジ公爵ウィリアム王子も一緒に、バルモラルに到着した。キャサリン妃は、子供たちが転校したの学校の新学年が始まったばかりのため、ロンドン近郊のウィンザーに残ったという。ウィリアム王子の弟のサセックス公爵ハリー王子も、スコットランドへ移動中と、広報担当者が明らかにした。
バルモラル城やロンドン・バッキンガム宮殿の前にはこの時から、女王の健康を願う人々が雨の中、集まり始めていた。
王室の声明は、これまでよりはるかに明確に懸念を表現しているため、女王の健康状態に関して差し迫った懸念があることは明白だった。従来は、歩行など移動が困難だという説明にとどまっていた。
女王は7日、枢密院とのオンライン会合を欠席し、医師から安静にするよう勧告されていた。
一方で、女王が倒れたのではないかといった根拠のない憶測をしないよう、警告も出されていた。女王は6日、自らの足で立ち、リズ・トラス新首相を任命した際に笑顔で写真に納まった。
女王は7月から、長年好んで夏を過ごしてきたスコットランドの居宅バルモラル城に滞在していた。