知的財産の法的保護: 慶應義塾大学法学部・法学研究科 君嶋祐子教授 | ねぇ、マロン!

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おーい、天国にいる愛犬マロン!聞いてよ。
今日、こんなことがあったよ。
今も、うつ病と闘っているから見守ってね。
私がどんな人生を送ったか、伊知郎、紀理子、優理子が、いつか見てくれる良いな。

曽田歩美様に頼んでマロンの絵を描いていただきました。




メインタイトル:知的財産の法的保護
慶應義塾大学法学部・法学研究科 君嶋祐子教授

Title:Protection of Intellectual Property
Professor Yuko Kimijima, Faculty of Law, Keio University(Intellectual property law)


【説明】
私が特許法の研究を始めた90年代初頭には、発明は、国家による特許権設定があって初めて財産権の対象として保護される、という考え方が、まだまだ一般的でした。
一方で、産業界では、発明やノウハウを秘密として管理し、秘密情報を開示する相手には、秘密保持義務を負わせ、ノウハウをライセンスして対価を受け取る、といった取引慣行が定着しつつありました。
その保護を明文化し、強化してきたのが、不正競争防止法における営業秘密の保護です。

■法的に保護するのはなぜ?

発明もノウハウも、人が創作したアイデアそのもので、いったん秘密保持義務を負わない人たちに知られるようになれば、誰でもそのアイデアを他人に伝達したり、使用したりすることができる情報です。
そんな情報について、特許権や営業秘密として法的に保護するのはどうしてでしょうか。
それは、営業秘密であれば、情報を秘密として管理することによって、特許権であれば、特許クレームや明細書に発明を記載することによって特定し、秘密情報にアクセスしようとする者、発明を実施しようとする者が、その情報が誰かの権利又は法的利益の対象となっているということがわかるような仕組みが確立しているからです。
また、先端科学技術の開発には、優秀な研究者たちの人件費や、多額の研究開発費が必要です。
多額の投資をしても、投資を回収して余りある利益が見込まれるなら、営利企業や投資家は、研究開発に先行投資をします。そのために重要なのが、特許権や営業秘密の安定的な保護なのです。

■技術標準化の試み

一方で、知的財産権の保護が強すぎると、知的財産の利用にも多額のコストがかかるため、対象となっている技術が普及しなくなるおそれがあります。そのような問題を解決するために、技術標準化の試みも進んでいます。
技術標準化において、特許権者らに研究開発投資の回収の機会を保障しながら、標準技術の利用者に不当な負担とならないよう、法的枠組みを作るのが重要です。

■ビッグデータの保護や利活用が注目

現在、ビッグデータの保護や利活用が注目されています。
データについては、データを提供する個人や企業、データを収集する企業、データを加工する企業などが関わり、また、その過程で人間だけでなくAIが介在します。その結果作成されたデータ・セットの利活用について、どのような取引慣行があるか、それを立法で保護すべきかについて、検討しています。
このように、技術の発展や取引実態の変化に応じて、民法や手続法の基本に立ち返りながら、知的財産の法的保護について考察するのが、私の研究の醍醐味です。