小池都知事の「立ち止まる」発言で、築地市場の移転についてあらためてマスコミでも注目されています。

 

 

1999年、当時の石原都知事が、突然築地市場の「移転」計画を打ち出した時、中央区では区長先頭に、区議会全会派、関係団体、町会含め、「移転断固反対」の旗を掲げて、現在地再整備を求め、都知事に移転撤回を求めてきました。

 

私は、昨年2月、区議会本会議で、そのころのことから現在までの経緯をまとめて、区長に市場問題について質問しています。

築地市場移転の問題のそもそもから振り返る参考に、以下、引用します。

 

 

2015年2月25日 本会議一般質問

小栗智恵子 質問

次に、築地市場の移転問題について質問します。

東京都は、2016年の11月に豊洲新市場を開設すると発表し、現在、新市場の建設工事を急ピッチで進めています。この開設時期は、オリンピックの前に臨海部と都心を結ぶ環状二号線を完成させることを優先したもので、実際には、豊洲新市場は問題山積です。

 

2015年2月14日に、東京魚市場卸協同組合、東卸の記者会見で伊藤理事長は、合意したのは開場スケジュールだけで、具体的な内容について合意したものは何ひとつないと語り、冷蔵庫や活魚の水槽などの設備が間に合うか不安があること、新市場の物流システムや交通アクセス、入退場のあり方、新たな設備投資の費用負担などの問題を挙げています。また、千客万来施設について都や事業予定者から説明がないことや、新市場への移転を断念する業者がふえる可能性もあると述べています。2月22日には、千客万来施設から大和ハウスが辞退し、一部計画が白紙になる見通しとなったと報道されています。

 

また、土壌汚染の問題もあります。土壌汚染対策法に従えば、本来は地下水のモニタリング調査を2年間実施して、汚染がないことを確認してから新たな土地利用が可能になるところを、既に建物の建設に入ってしまっています。東京都は、世論に押され、地下水モニタリングの観測井を201カ所設置し、2014年11月に1回目の地下水モニタリングを行い、その結果を公表しました。今回の観測点でベンゼンについて調べた102ポイントの検体のうち48%で、またヒ素は70ポイントの検体のうち74%から汚染物質が検出されています。ベンゼンの最高値が0.0083と、基準値である1リットル当たり0.01ミリグラムをわずかに下回った数値だったり、猛毒のヒ素も0.06検出された地点がありました。基準値以下だとしても、汚染対策が終わったはずなのに、汚染物質は残っているということが明らかになりました。

 

無理に無理を重ねた豊洲新市場計画は、さらに工期や施設の見直しが避けられない事態となっています。安全な生鮮市場の大前提である土壌の安全性の確保もできていないし、2012年2月に都と区で合意した着実な移転も不透明なのですから、合意の前提は崩れていると考えます。いかがですか、御答弁ください。

 

東卸の記者会見では、築地市場の場外にできる築地新市場についても、新市場が2つでき混乱を招く、移転する組合員も不安を抱く、ネーミングや移転前の開業を避けるよう都が調整すべきと強調したと報道されています。以前から、築地新市場について東卸としては協力できないという姿勢でしたが、実際に築地新市場に出店する仲卸業者の方もいる中で問題が生じていないのか、御答弁ください。

 

私は、1999年に当時の石原都知事が、突然、築地市場の移転を言い出し、区長を先頭に断固反対する会を立ち上げ、日本橋プラザの前で並んで署名活動を行い、10万筆の署名を東京都に提出した当時のことを思い出します。同年9月には、中央区議会鈴木久雄議長名で築地市場の現在地での再整備を求める意見書、10月には築地市場再整備促進の要望、そして11月には築地市場再整備に関する抗議を提出しています。

 

2006年2月に都知事に出した7つの疑問を改めて見てみましたが、一、移転先の四十四ヘクタールの土地の確保、二、築地市場用地の扱い、三、交通アクセス問題、四、場外市場の問題、五、移転までの間の現市場の整備、六、土壌汚染の問題、七、財源確保の問題についての7つの疑問のうち、現在に至っても、一、新市場の土地の確保以外は問題が解消していないし、確保した土地は生鮮市場に最もふさわしくない土地だったのです。改めて、当時の断固反対の趣旨は道理のあるものだったと考えます。この立場を貫いて東京都と交渉していれば、現在地再整備が既に立派にでき上がっていたと確信します。この間を振り返って、改めて断固反対の旗をおろしてしまった責任は重いと考えます。御見解をお聞かせください。

 

中央卸売市場の開設には農水省の認可が必要です。豊洲新市場については、安全性の科学的証明と市場関係者や消費者の理解が認可の前提条件になっています。多くの都民、区民、消費者とともに、地元中央区が、安全性が疑わしい、断固反対、築地市場は現在地で再整備をの声を上げれば、国は認可できず、計画を断念させることも可能です。今からでも遅くはない。まだ、移転は実施されていません。土壌汚染が残っている事実も明らかになっています。今こそ食の安全・安心を守り、中央区に二兆円の経済波及効果がある築地市場を現在地で再整備させるために、あらゆる可能性を追求していくことを求めます。御答弁ください。

 

矢田美英区長の答弁

築地市場の移転についてであります。

食の安全・安心の確保は、当然のことながら、市場移転の大前提であります。豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事を初めとする移転に向けたさまざまな取り組みについては、東京都の責任で確実に実施し対応されるべきものと考えております。東京魚市場卸協同組合、東卸への対応につきましては、区はさまざまな機会を捉え、築地新市場の整備趣旨について説明を重ねてまいりました。また、意見交換会を通じて、施設に関する御意見を伺うとともに、募集要項にも反映させたところであります。こうした積み重ねによりまして、本事業については一定の御理解をいただけたものと認識しております。区といたしましては、市場移転という現実に即し、移転後も築地の活気とにぎわいを途絶えさせることなく、確実に継承し発展させていくため、築地新市場の開業に向け、引き続き区の総力を挙げて取り組んでまいります。

 

小栗 再質問

築地市場の問題では、歴史的にも、私もいろいろ今回改めて見てみましたけれども、中央区がやはり築地は現在地で再整備をという立場で東京都に対して7つの疑問を出して、こういう問題もあって、おかしいじゃないかということを主張してきたのに、途中で移転を容認するという立場に変わってしまいました。現実に即してやっているというお話もありましたけれども、やはり今でも土壌汚染の解決ができていない、そして、豊洲の新市場の仕組み自体が大変問題があるということもいろいろ出ている中で、きちんと過去を総括して、誤りに気づいたら引き返すということも大事ではないかというふうに思います。こういう点で、築地市場の現在地再整備ということについては全くもう考えないのか、その点について、もう一度御答弁をいただきたいというふうに思います。

 

再質問に対する区長答弁

築地市場を現在地に戻す考えはないのかという御指摘でありましたけれども、これはもう現実に即して行っているということで、市場移転という現実ですね。東京都さんの方針に沿って、今、着々と移転の準備が行われているさなかであるわけでありますから、また戻すなんていうことになりますと、それこそ混乱も起こるでありましょうし、東卸を初め、さまざまな業界の方々も戸惑うのではないか、そういうふうに思うわけでございまして、私たちはやはり現実をしっかり直視して、そして行っていかなければならないというふうに思っているわけでございます。

 

 

(写真)日本共産党が集めた

都知事宛ての「現在地再整備を求める署名」を提出

(=2010年12月23日、都庁)