不登校の支援について、国会で超党派「法案」が議論されていたことを「しんぶん赤旗」で知りました。

超党派議連で検討していた「多様な教育機会確保法案」ですが、いろいろな経過から通常国会での成立を断念したということです。


我が家の娘も筋金入りの不登校児で、小学校3年生から中学までいろいろありましたが、今ははりきって大学に通っています。

「信じて待つ」ことが大事だとあらためて思います。


記録として「藤森毅・日本共産党文教委員会責任者にききました」の記事全文を掲載します。





不登校――子どもは自分を責め、親も悩みます。不登校の子どもへの支援について、超党派議連で検討していた「多様な教育機会確保法案」の経過もふくめ、藤森毅・日本共産党文教委員会責任者にききました。


子どものSOS

 ――不登校を共産党はどうとらえていますか?

 藤森 不登校は病気でも怠けでも罪悪でもない、子どもが発しているSOSだと強く思います。

 その様相はさまざまですが、大事なことは、子どもが何らかの支援を必要としているという事実です。それは「ゆっくり休むこと」だったり、「関わってくれる、おとなの存在」だったり、場合によっては「さまざまな暴力からの解放」だったり等々です。

 支援は「学校が絶対」では成り立ちません。その子の人権、その子が必要としている支援がまずあって、それに役立つ多様な場をおとな社会が保障するのが筋です。

 昨年度の不登校数は小学生約2万6千人(全児童の0・39%)、中学生約9万7千人(全生徒の2・76%)で、1980年代から急増し、高止まりです(グラフ)。これだけ増えているのは、教育や社会の側に相当問題があるからで、その改革の視点を失ってはならないと思います。

 ――当面の施策で重要なことは?

 藤森 何より、今困っている子ども、親からみて相談するにたる相談窓口、安心しながら成長できる場を広げることです。長年の課題ですが本当に「これだ」という場が少ないのが現状です。

 今現在、そういう役割を果たしている多様な場を認知して、財政的支援を行うことが急がれると思います。

 その一つにフリースクールがありますが、助成制度がなく学費は年間数十万円で、スタッフの3割が無給など関係者の熱意でぎりぎりの所で支えられているのが現状です。親としての悩みを語り合って子育てを支え合っている「親の会」にも、公的支援がほとんどありません。

 例えば賃貸料だけでも保障すればどれほど相談・支援の場が広がるかと思います。

 公的には「適応指導教室」を学校復帰にこだわらずに専門家も配置して整備したり、夜間中学など従来の型にとらわれない学校をつくったり、中学卒業以降の支援、貧困との関係やアウトリーチ(訪問)なども課題です。

 地域で市民団体、教育や福祉の公的機関がネットワークをつくって支援を広げていければと思います。

通常国会の経過

  ――超党派「法案」の経過について伺います。

 藤森 直接の始まりは今年5月27日、夜間中学拡充議連(共産党も参加)とフリースクール議連の合同総会が開かれ、その場で馳浩座長(自民党、現文科相)の私案が示されたことです。夜間中学の推進、不登校への対応が主な柱でした。

 その後、幾度か会合がもたれ、不登校に関して重要な部分で意見の違いがあるのに座長が無理にまとめました。その座長案を各党が持ち帰って9月15日に合同総会が開かれましたが、自民党内でも意見がまとまらず、共産党をふくむ各党も懸念を表明し、馳座長は通常国会での成立を断念するとしました。いろいろな意味で残念な経過でした。(つづく)


 ――無理にまとめた「座長案」。懸念が集中したのは「個別学習計画」という仕組みですね。

 藤森 そうです。不登校関係の方々が声をあげ、私たちも「このままでは賛成できない」と言いました。

 個別学習計画は、保護者が作成し、教育委員会が承認すれば、学校籍を抜き、その子のフリースクールなどでの学習を学校と同様のものと認めるというものです。

 計画がなじむ場合もありえますが、「学校にいけない自分を責め、今生きるだけで精いっぱいの子どもに、学習計画なんて無理」「休息が大切なのに家庭が学校みたいにならないか」などの声があがり、元不登校の青年は「親と子どもの意見が違う家庭では、子どもは深い心の傷を負うことになる」とも指摘しました。個別学習計画が経済支援の条件とされ、その面からの強制性も心配されました。

追いつめないで

 ――なぜ当事者が反対する方向を進めようとしたのでしょうか?

 藤森 そこには、就学義務をはきちがえた、「不登校への指導=学校復帰」という国の原則があるのです。

 座長案は、「個別学習計画↓フリースクール」という例外領域を設けて、そこを支援する発想でした。しかし今述べたように副作用が大きすぎます。しかも、個別学習計画以外の不登校の子ども(不登校約12万人中11万人超を想定)には支援がないばかりか、「学校復帰」が強調されることになります。「これ以上子どもを追いつめないで」と訴えた母親の声は切実です。

 1993年に国は「誰にでも起きうること」と不登校観を転換しましたが、指導観は「学校復帰が前提」のままです。そこを改めて、全ての不登校の子どもを多様な場で支援していくことが必要で、それは個別学習計画なしでも可能です。

学校よくする力

 ――当事者たちが声をあげ政治に働きかけてきました。

 藤森 それは本当に大事なことです。

 教育再生実行会議提言がフリースクールに言及(昨年7月)、安倍晋三首相が施政方針演説でフリースクール支援を明言(今年2月)、来年度概算要求でフリースクール支援約5億円計上(新規)などの変化にもそうした面があります。同時に、支援事業を大手企業のもうけの場にしたり、フリースクール統制に利用する動きには注意したいと考えています。

 不登校への支援は誰が見ても進めなければならない所にきつつあるわけで、政党も政府も当事者とよく話し合い、その思いと知見を生かす方向で、法整備を含め支援策を検討し、前進させることが重要です。

 不登校の子どもたちの声を受けとめることは、学校や社会のあり方そのものをよくする力にもなると思います。 (おわり)


 就学義務 子どもを義務教育学校に通わせる、保護者の義務。子どもの義務ではない。子どもの権利重視から罰則付きだが、不登校は「正当な事由」による欠席とされ罰則はない。子どもの権利保障のための規定という大前提を見失うと、「就学義務があるから、不登校への指導は学校復帰」という実態にあわない議論となる。


・・・・しんぶん赤旗11/6 ・ 7(連載)より





親や当事者の子どもを苦しめるのは「『不登校への指導=学校復帰』という国の原則」という指摘に同感です。

義務教育を「学校に行くのが子どもの義務」と追い詰めず、子どもに寄り添った支援が大事だと思います。



色づくイチョウ

八王子のイチョウ=11月2日撮影