第二章 祝福と呪いの九十九【前編】


二日目の朝。


アラームが鳴る数分前、希は喉を焼くような渇きで目を覚ました。


昨夜の祝杯のワインが残っているのか、頭が重い。



(あ……昨日帰ってそのまま寝ちゃったのか……)



重い体を起こそうとして、不意に、昨日の「アザ」のことを思い出した。


寝ぼけ眼のまま、昨日外し忘れてつけたままだった腕時計の文字盤部分をずらして覗き見る。



「……っ」



一瞬で、酔いも眠気も吹き飛んだ。


そこにあったのは、昨日よりもわずかに線の細い、けれど鮮明な意志を持って刻まれた

**「99」**  という数字だった。


心臓がドクンと大きく跳ねた。



100から、99へ。



希は飛び起き、洗面所へ駆け込んで昨日と同じように手首をこすった。


痛みが走るほど強く、何度も。

けれど、肌が赤く腫れ上がっても、その下に鎮座する黒い数字は一ミリも揺らがない。



「なんで……。どうして減ってるの……?」



鏡に映る自分の顔は、青ざめ、幽霊のように見えた。





駅へ向かう道すがら、彼女の視線は無意識にある一点へと吸い寄せられていた。


前を歩く女子高生の、スマートフォンを操作する細い手首。

希は時折り小走りし、通り過ぎるタイミングでさりげなく確認する。



(……あの人は? あの人には、ないの?)



満員電車に揺られながら、希の感覚は研ぎ澄まされていた。

吊り革を握るために剥き出しになった、隣のサラリーマンの手首。



――何もない。



電車内を見渡す。

何十人、何百人という人間がこの空間にひしめき合っている。

誰もが、昨日までの自分と同じ顔をしていた。



「私だけなの……?」




***


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