唐突だが、私はめちゃくちゃお腹が強い。
人生においてお腹壊した経験はかなり少ない方だと自信を持っている。
故に、賞味期限という概念にも激甘。
まぁいけるっしょ!とだいたい期限過ぎても抵抗なく食べるし、まず問題ない。
あとは、落ちたもの。
テーブルに落ちたものは当然セーフ。
家の床に落ちたものも汁じゃなければほぼセーフ。
シュパッと素早く拾ってパクッと食べる。
まず問題ない。
そうやって生きてきた。
もちろん夫や子に同じ感覚でいてはいけないという常識はあるので、
夫や子が食べるものは期限切れや落ちたものは避けてきたのだが、
最近やっと問題に気が付いた。
落ちたものを拾って食べる母を、
長男はガン見している。
子は親の背中を見て育つ。
まずマナーやらモラルやら衛生観念やら、
そんなものはない丸裸の状態で生きている息子。
これからいろんな常識を学んでいく必要がある中で、
見ているのは、
背中を丸めて米粒を拾って食べる母の姿。
当然、落ちたものを拾って食べる息子になりました。
「ちょっと!床に落ちたものは食べちゃダメ!」
と怒った顔をしてみせるも、
説得力皆無。
つい30秒前には私が落ちたしめじを拾って食べていたのだから。
「は?お前なに言ってんの?」
という顔で長男が見ている。
悲しきかな、これに関しては圧倒的に長男の表情が正しい。
あーまずいなぁ、これ直したいなぁ、
でもなぁ、もったいないんだよなぁ、
捨てるフリして食べようかなぁ、
てかもう癖なんだよなぁ、
困ったなぁ……
と頭を悩ませつつも、フードロス削減と掃除を一石二鳥でできるこの拾い食いを自分の中ではかなり正当化していて、なあなあに探していた。
SDGsを掲げる時代だしね!
日本人は食べものを捨てすぎ!
もったいないの心大切にしてこ!
とか思ってた。
てか私がすぐさま食べるから比較的床も綺麗に保ててるわけで、ルンバいらずでそこもエコじゃない?とか思ってた。
そんなつい先日。
長男と通い始めたばかりのプレ幼稚園に参加。
午前におやつの時間があり、
某クリームサンド型ビスケットが配られた。
「わぁ!◯◯ちゃんビ●コ大好きだもんね、よかったねぇ!!」
と、同じ机に座る女の子親子が嬉しそうにしているのを微笑ましく見ていた。
お菓子に関しては超人的食欲を見せる男、長男。
秒速で食べ終えてボケーっとしていた。
女の子は、好物だからなのかちょこっとずつ大切に食べていてまだまだ残っていた。
そんな時、他のテーブルの男の子が駆け出したことにびっくりしたのか、手に持っていたビ●コ(多分1/5も食べていないサイズ感)を落としてしまった。
衝撃的な表情の親子。
しばらく呆然としていたものの、お母さんが我に返った。
「◯◯ちゃん、残念だったね。これはもう食べられないから、また新しいの買って今度食べよう?」
優しく説得するお母さん。
ふ、不憫だなぁ……と思って見ていたその時。
シュパッッ!
パクッ!!!
え?ゴムゴムの実?と思うほどの手の速さで、
かわいい息子が人様が落としたビ●コを拾い食いしていた。
唖然とする親子。
謝り倒す私。
「あ、いえ、どうせ捨てるものだったから…」
と優しく答えてくれるお母さん。
そうですよね。
ゴミですもんねこれね。
うちの息子、ゴミ食べてますもんね。
勝手に食べたことに加え、見苦しい様子をお見せしたことに関して陳謝した。
誤り倒した後、もっしゃもっしゃとビ●コを食べる息子を見て思った。
さっきの拾う動作、スピード、
間違いなく私の動作そのものだった。
私30年もこんなことしてたのか…
本件をもって私はマザールンバを卒業。
落ちたものは食べない方針で生きていくことにした。
人間の尊厳を思い出させてくれた、
あの親子と息子に感謝。