おはようございます。まるマリンです😊


いろいろ驚かされた。


かの有名なポゴレリッチ事件で、センセーショナルなデビューだった彼だが、私は彼の演奏に詳しくない。

ある意味、先入観なく聴けたのでは?とも思う。詳しい方からは視点がズレているかもしれない。


でも、明らかに言えることは、今まで行ったリサイタルとは、色んな意味で全然違うものだった、ということ。



まず、私はポゴレリッチの『儀式』について知らなかった。


会場に入ると、ニットにスウェット?腰に洋服を巻き付けたおじさん?が1人、延々とピアノを弾いている。

モロ普段着、といった服装。

しかし、その音色はとてつもなく美しい。


最初に音が聞こえてきたときは、調律師かな?と思った。


え?

ポゴレリッチ?

本人?


調律師がこんなに延々と曲を演奏しないよなぁ。

ということは本人?だよね?


会場にお客さんが入っていることなど気にする風もなく、自宅でピアノを弾いているかの如く、いや、『奏でている』そう言った表現が合うような…

それにしても、その音はとてもきれい😭


客席の方も、音楽片手にプログラムを読む方、トイレに行く方、じっと聴き入る方、とかなり自由。

弾き終わったポゴレリッチ氏本人に、話しかけている方もいらした。



時間になり、会場が薄暗くなってもポゴレリッチ氏は現れない。

5分?10分?

会場内は水を打ったように静かだ。お腹が鳴ったらどうしよう、などと考えてしまうほど静か。


彼がこれから演奏するステージは、明るいスポットライトは照らされていない。


客席と、そして舞台まで、照明をギリギリまで絞り、ステージ上のピアノは緩やかな柔らかい光に包まれているようだ。


でも、それが良かったのかもしれない。

「視覚」を使うと余計な情報が入ってくるというか、ピアノの演奏を聴くというのであれば、視覚は必要ないのでは?と、問われているかのようだ。


拍手が聞こえ、彼が現れる。

(よかった、スウェットじゃない。と思ってしまった🤭)


本番でも彼は自由だった。

譜めくりの方がいるのに、今使わない?と思われる楽譜を、ドサッと床に落とす(置くではない、落としていた)


最近、巨匠と呼ばれる方が、譜面を見て演奏する姿を目にする。

私の暗譜の不安とは次元が違う話だが、なんかホッとする。


肝心の演奏だが、ポゴレリッチ氏は『一度、音楽を解体して構築し直す』といわれているが、そのあたりの解説は専門家に任せることにしよう。

私が注目したのは、解釈ではなく、


『ピアニシモの多彩さ』


ピアニストってピアニシモをどう奏でる?なのでは?


この日のプログラムはショパン、シューマン、シベリウス、シューベルト。


それぞれに素晴らしいピアニシモが出てきたのだが、風合いが全て違った。それが、演奏の途中で、私の頭の中に映像として浮かんできたから不思議。


シューマン。

私に絵の才能があればイラストで描きたいのだが、出来ない💧

クリスタルのような、霜ばしらのような細かい尖ったものが、たくさん集められているような、繊細なピアニシモ。


シューベルト。

温かみを感じる、前半のシューマンより丸みを帯びたピアニシモ。

このシューベルトはなぜか、シューマンを聴いているような気分になった。

私の知っているシューベルトと全然違う!笑

でも、作曲者シューベルトはもしかして、こう演奏して欲しかったのかなぁ?なんて思わせる、説得力があるピアノだった。


アンコールのショパン。

シューマンのときに見られた繊細な音には変わりないのだけど、何か『意志』のようなものを感じるピアニシモ。



シューベルトを弾き終わった後は直ぐに拍手が起きず、ポゴレリッチ氏がおもむろに立ち上がるのを待ち、盛大な拍手が送られた。


すると彼は、直ぐに自らの声でアンコール曲を告げたのだ。

まるでプログラムの続きのように、また楽譜を用意する。


この曲が、私にとってボーナストラックだった。


ショパン

ノクターンホ長調 op.62-2


これは、ツィメルマン氏がリサイタルプログラムで弾いた曲!


巨匠の聴き比べが出来るなんて!

なんて贅沢な!


これが、もう、本当に違った。

ツィメルマン氏とは違った。

王道と言われている弾き方とも違った。


弾き始めた最初、曲が分からず『ん?私、この曲、聴いたことあるな、知ってるぞ?』と思ったくらい😅


でも、素晴らしかった✨


全ての曲が、出すべき音、いや、ポゴレリッチが出したい音がストレートに伝わる演奏だった。


演奏後、丁寧にお辞儀をするポゴレリッチ氏。足を怪我されていたとかで、杖をつきながらの入退場だったのだが、『もう終わりですよ』と言わんばかりに、ピアノの椅子をピアノの下に入れてしまい、終わりをアピール😊(ご丁寧に譜めくり用の椅子までしまっていた😁)


なんとなく憎めない。ピアノ演奏の解釈に賛否分かれるというが、スタンディングオベーションで埋め尽くされた会場は、温かい雰囲気で包まれていた。


いい演奏を聴いた後は、心も柔らかい何かに包まれているように感じる。

そして、なぜか自分も上手く弾けるような気がする。


明日はたくさん練習したいと思った😊