BRM307たまがわ400km石廊崎 【完走】 自分との闘い
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BRM307たまがわ400km石廊崎
完走しました(26時間25分)。
【総括】(というより、スタート前の心情)
まだ啓蟄の3月初旬の時期に400kmを走行するのは私は初めてでした。
三寒四温を経て、季節は冬から春に向かいますが、この日は「寒」のほうで、朝の気温は5℃前後。しかも雨模様。このような気象条件ならばDNS、という人も少なくありません。ましてオーバーナイトを含む400kmです。実際、この日のスタート地点は、エントリー数を考えると、ずいぶんと人はまばらでした。
なんとなく、「ブルベの応用問題編」といった感じもしました。
しかし私の場合、夏のPBPに出場するために必要な今年の認定を、限られた自分の日程の中で確実にとっておきたかったので、(こんな悪天候の日に一昼夜かけてこれから走るなんて)という後ろ向きになりそうな気持ちを押し殺しながら、まるで戦場に向かうかのように(行ったことはありませんが)、スタート地点に向かいました。
早朝から雨が降り出していましたが、幸い、今回のスタート地点は近所の二子玉川ということで、心理的な負担も軽減されていたのと、(スタートしてしまえば、もう逃げられないだろう)といった自分自身の心理的な追い込みも。
3/7 4:58 自宅前
天気予報で悪天候は予想されていたので、最初からゴアテックスなどの雨具一式はもちろん、ホームセンターで手に入れた、水産加工用の強化ゴム手袋と、その内側にウォーマー手袋をはめたものや、ガーミン(etrex30)の雨除け対策(ビニール袋かけ)など、事前に入念な雨(+寒さ)対策をしておきました。
それでも、今回、手元灯としてヘルメットの額上付近に着けてみた、CAT EYEのセーフティライト オムニファイブ フロント用は、養生しなくても大丈夫かと思いきや、途中で「水没」しました。
スタート 二子玉川(兵庫島公園)
5:35
私は6時スタート組でしたが、前述の通り、この天候でDNSが多いらしく、
一瞬、スタート地点を土手から遠望した際、場所を間違えたか、と錯覚するほど、橋の下付近に人や灯火の類が見えませんでした。
実はこれまで、防水防塵カメラ(オリンパス)の写りの悪さに悩まされていましたが、思い切って同様の防水防塵カメラ(ニコン)に買い替えました。これも、PBPがあるから、と、踏み出せた買い物。
ところが、今度のは性能がちょっと良すぎて、見えないはずのものも写っている(謎)
換言すると、レンズが明るいので、暗いところのものもはっきりと映し出してみせるのです。
↓
実はこの写真、上のと同じ時間、場所。
実際には、まだこんなにまだ明るくありません。真っ暗でした。
あとで写真を再生してみて、(ああ、こんなに水たまりがあったんだ)と気づかされたり。
見えているそのままにきちんと写っていれば、それでいいんですが。
いいのやら悪いのやら。
記録用としての性能はいいんでしょうが。
で、ぱらぱら降っている中、
(どうせずぶ濡れになるんだ)と、少々やけ気味な気分で出発です。
しばらく多摩川左岸を河口方向へ。
6:29 国道1号に出て、横浜方面へ。
雨はいったん上がりました。
そして平坦なので、巡航速度が上がります。
ところが、通常よりも厚手のジャージを着込んでいた上に、ゴアテックスのレインジャケットなので、汗びっしょりに。上着のチャックを大きく下してベンチレーションを心がけますが、それでもなかなか涼しくならない。
せめて、インナーの重ね着しているジャージのうちの厚手の1枚はこれまで通り、薄手(ユニクロのヒートテック)に戻したい感じ。それはサドルバッグに予備用としていれてあるのですが、着替えに時間がかかりそうで、そのままにしていました。
信号待ちの間にはかろうじてヘルメットを脱いで、フリースのネックウォーマーは外せました。
といった具合に、序盤は早朝の雨や寒気を警戒して着込んでいたものが、ゴアテックスが仇になり、通風がうまくいかず、余計な発汗につながってしてしまいました。
フリースの帽子もかぶったままでしたが、気温は少しづつ上がってきているようで、これも暑い。暑さで頭が朦朧としながら、横浜の市街地に入っていきました。
7:02
降ってはいませんが、(また降るかもしれない)という警戒と、
PC1で大々的に着替えよう、とそのままで進みます。
7:47 分かってはいるものの、信号が多い区間です。
そして帰りにも同じ区間で「信号峠」が待ち構えている訳です。
PC1(50.3km ファミリーマート逗子渚橋店 8:33着)
重ね着していたジャージは薄手のものに取り換えたりしましたが、空はまだまだ降りそうな雲行き。レインジャケットはそのまま着続けることに。
最近のブルベで定着させた牛乳(500ml)などを飲み干し、再出発します。
9:30 いつもの国道134号。また降ってきました。
(今日の心境を写真で表すなら、まさにこういう感じ)と思いながら撮った1枚。
心を無にしていた、というなら格好いいですが、そうではなく、高揚感もなく、心が空っぽ。
そして、参加者がちらばっているのか、そもそも出走数が少ないのか、前後にほとんどいないソロ走行、というのもどことなく寂しい感じでした。当然、この天気なので、前方に望めるはずの富士山も雲中のどこへいったやら。
幸い、例の、水産加工用強化ゴム手袋のおかげで、手はまったくの濡れ知らず。
代わりに、レインジャケットにくるまれた身体が流れる汗で濡れている、という難しさ。
10:00 大磯
今シーズンのブルベでも3本連続、ここを通ることになりました。
(到達時刻まで似ている!)
ブルベしやすい、いいコースなのですが、そろそろ食傷気味です。
(もっとコースのバリエーション、考えなくてはなあ)。
自戒も込めて、そんなことを思いながらの通過でした。
11:49 熱海
雨は上がりました。しかし、天候は回復せず、日中の気温はさほど上がりません。
汗が引くと、今度は濡れたジャージで冷えを感じたり。
(でもまあ、仕方ないか)と開き直ってきました。
12:26 網代
また、いちご大福でも食べていきましょうか。
そういえば似たようなコースで300kmも並行開催されているのですが、大福はけっこう在庫がありました。寄り道しないで先を急ぐ人が多いのかな。
12:36
ブルベ中には珍しく、仕事が気になりだしたのはこのあたりから。
ここまでも、走行中にスマホがブーブー鳴って、メール着信が相次いだりしていたので、受信箱をチェックしたところ、どうやら、一仕事、ふた仕事をこなさなくてはならない状況になってきていることが薄々わかりました。
とはいえ、待っていては先に進めないので、とりあえず漕ぎ出します。
そして、雨につづいて、仕事がついに降り注いできました orz
国道135号から県道109号に入って、海岸線から川奈の登りにさしかかったところで、1回目の電話着信。その先の登坂区間でも2回目の着信。
そのつど、バイクを降りて、電話応対します。
そうこうしているうちに後続に抜かれ、遅れ始めました。
しかし、それらの電話やり取りから、さらに、メールで文書を作成・送信しなくてはならない事態になってきました。 orz(←今回はこの人形マークが頻発します)
とりあえず、PC2まであと10km切っている距離だったので、PC2でメール作業することにします。
PC2(154.5km ローソン伊豆高原店 14:11着)
そそくさと買い物してレシートをゲットして、食べながら急ぎスマホでメール打ち作業します。
ブルベ中に仕事、という人も結構いるようですが、私はこれまで幸い、ほとんどそういう場面はありませんでした。が、
こういう時は、周囲の写真を撮ったりする余裕はありませんね。
前回の300kmでも同じPCだったので、その時は撮っていたから、まあいいんですが、ブルベで習慣にしていることができない、楽しめない、というのもプチ・ストレス要因ですね。
とりあえず15分ぐらいで作業を終えて、また走り出します。
なんとなく遅れが気になりだしますが、このあたりから、時おり突風に襲われるようになっていて、しかも向かい風基調。スピードが乗りません。リアス式海岸特有のアップダウンも続きます。何度も行き来してきましたが、決して楽なコースではありません。
15:53 河津
折り返しまでまだ距離があるのと、ずっとソロ走行で、多少眠気もあったので、一度、河津の国道沿いのコンビニのイートインで休憩を入れました。そのコンビニの横にちょうど、満開のカワヅザクラの並木がありました。
小径車で旅行中らしい中国か台湾の男性と一言二言、挨拶を交わしました。
北海道の地図が描かれた、何かの証明カードのようなものをちらっとみせられましたが、あれは何だったんでしょう。しかし、そこまで尋ねる時間的余裕もなく、「take care!」と声を掛けあい、そそくさとコンビニの広い駐車場から漕ぎ出しました。
雨こそ上がっていましたが、気温が低いままなのと、相模湾沖に発達した低気圧がどうも、プチ台風的らしく、台風並みの突風が吹き荒れています。河津からの登り区間では一瞬、数秒間、真後ろから突風がきて、ペダルを止めているのに坂が登れる!という珍しい体験ができましたが、そういう追い風はその1回だけ。仰天したのは、かなり下っているはずなのに、ペダルをこがないとバイクが止まりそうになる、なんて経験もしたこと。
と、前から横からの風で、どんどん気持ちは折れてゆきます orz
白浜では、海岸からの黄色い砂が国道上に吹きだまりをつくっていて、坂を下ってきてそこを突っ切ろうとしたら、前輪がとられて、転倒しそうにもなりました。砂だまりは油断できません。というか、本来、避けるべきでしたが、避けられないほど大きい吹きだまりでした。
16:39 下田駅前
曇天のまま、ソロ走行のまま、下田へ。
ここまで来たら、もう残り200kmを走って400kmの認定をしっかり手中にすべきでしょう。
しかも、こんな天気の日にわざわざ遠出してきたんですw
しかし、正直、(PBPさえなかったら、ここで伊豆急で輪行して帰っていたかもなあ)との思いもよぎりました。まだ東京には夜までに十分帰りつける時間帯でした。
それほど、モチベーションがどうも低調なままのコンディションでした。
下田からさらに先へ進み、閑散とした石廊崎漁港へ向かいます。
通過チェック(写真) (209.3km 石廊崎漁港 17:28着)
日が暮れる前に折り返すことができました。
(小田原に零時ぐらいにたどり着ければ、OKかなあ)
残る距離から、そんな皮算用したりしましたが、(いや、アップダウンが続くここのコースの場合、もうちょっとかかるかな)とも。それで正解でした。
PC3 (217.7km セブンイレブン南伊豆弓ヶ浜入口店 17:59着)
いったん、折り返しから戻ってきて、ここで休憩。
走行中の軽い眠気がまだとれないので、下田駅構内のベンチで思い切って10分ほど仮眠。
PC4( 291.9km セブン-イレブン熱海下多賀店 3/8 0:32着)
7時スタート組の速い人とおぼしきブルベライダー達に抜かれながらも、こっちはマイペースで来た道を戻り、ようやく熱海まで。途中、標高の高い区間では、雪がちらついていました。突風もまだ時折、吹き荒れていて、登りで急に右(つまり走行車線寄り)に流され、後続の車と接触しそうになったことも。
※そういった意味でも、この国道135号は側道部分が狭くて安全マージンが少なく、本来、ブルベ向きのコースではない(しかし、伊豆半島でほかにいいルートがなかなか無い)、と私は感じています。
そうこうして、PC4に着いた時点で、貯金は1時間弱。
微妙な感じになってきました。
小田原は午前2時ごろ通過。
過ぎた先で、会館風の大きな玄関前のエントランスがある建物が右手にあったので、15分ほどそこで仮眠休憩しようと思い、道路を渡って広いエントランスに乗り入れようとしたら、何かに引っかかって、バイクごと転倒。
暗がりでわからなかったのですが、なんと入口にワイヤーが張ってあるじゃないですか。
400kmをずっと一人で走っていると、心が折れかけやすくなるのかもしれません。
バイクを起こしながら、ぶつけて痛む右ひざをさすり、時計をみました。
9:00までに二子玉川に帰りつかなくてはならない一方、残り80kmあり、あと6時間以内で走らなくてはならない、、、、まだ風は吹いているし、先に鎌倉山、さらに横浜の信号峠もあるし、、、、、(駄目だ、間に合わなくなってきているかも)。また気持ちが折れかけました。
ガーミンの地図に目をやり、近くに鉄道駅がないかなとつい、のぞいてみたり。
しかし、小田原過ぎてからしばらく、コース最寄りに駅はないのでありました。
(しかし、それでいいのか? ここで諦めて、また走り直しか?)
そう自問自答も。
(とにかく、こんな時間に止めても電車はないし、次の最後のPCまで走ってみて、貯金があるかどうか確認しよう)
というわけで、
その転倒した場所から、PC5がある横浜市栄区までの約40kmは、格好よく言えば、まさに「暗闇の中での自分自身との闘い」でした。延々と続く湘南の134号の海岸沿い、そして鎌倉山の坂、これらを前に、心の中で(ちくしょー!)と叫びながら走り続けておりました。
自分比で、DNF率が高めで鬼門になりがちな400kmだっただけに、大げさな言い方をすれば、
(これを克服せずしてPBPは無い)といった気持ちでペダルを回し続けた(無理走した)訳です。
※しかしですね。あとでふと思いましたが、時間的に厳しい400kmにわざわざ出走しなくても、SRはとれるんでしたよねw
PC5 (365.3km ファミリーマート鍛冶ヶ谷二丁目店 5:49着)
湘南モノレール直下の鎌倉山の登りはさくさくいけましたが、
平均速度でみれば、大いに足を引っ張る区間。
PC5は6:20クローズだったので、着いた時点で貯金は30分。
まだ油断はできない、と、休憩そこそこにリスタート。
そして早朝の横浜市中心部はやはり、信号峠のオンパレードでした orz
平均速度がどんどん落ちてゆきます。
一時、マイナスに。
国道1号でラストスパートをかけました。
残り20km
もう写真を撮っている余裕もありません。
たとえ信号にひっかかるとわかっていても、その間はできるだけ巡航速度を上げるようにしました。
そして、多摩川を渡って左折するところで残り10km。時間は7:50ぐらい。
ようやく、時間内ゴールを確信できるようになりました。
しかし、横浜以降、10kmに50分近くかかったことになります。
信号峠、おそるべし。
8:16 多摩川堤防道路 二子玉川のビル群が見えてきました!
400kmのゴールまでもう少し。ずっと一人で走ってきましたが、この時はつい、「よしっ」などと、声が出てしまいました。
我ながら、こんな天気によく400kmに出たものだ、と今さら思います。
一晩越して身体は冷え切り、帰宅後は、熱いシャワーの下で1時間ぐらいじっとしていました。
そして1人走行だと、内なる自分との対話が多いです。
なんとなく今回のブルベは、PBPを前に、ここでは書ききれませんが、これまで4年近くの自分のブルベ経験を振り返るような旅になっていた気がします。
そして、スタッフのみなさん、お疲れ様でした。
ありがとうございました。
<markun 走行記録集>
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「ブルベはフランス語で『認定』を意味します。ブルベには様々なものがありますが、オダックス・ジャパン(AJ)が統括する日本でのブルベはBRMといいます。BRMは規定の距離を規定の条件で完走すると認定される長距離サイクリングです」
「同じ年に200km、300km、400km、600kmを認定された人はシューペル・ランドヌール (SR。英語ではスーパーランドナー)として讃えられます」
「BRMの最高峰として位置づけられているのが4年に1度、ACP(オダックス・クラブ・パリジャン) が開催するパリ~ブレスト~パリ ランドヌール(PBP)=1200km」
いずれもAudaxJapan(オダックスジャパン)HPより