文法の説明において、あまりにも「強調」という言葉が多用されています。
しかし「強調」の意味が、文法項目ごとにあまりにも異なる意味合いで使われていることに納得が
いかず、次のような記事を書いたことがあります。
この記事の例(出典:『ロイヤル英文法』)を使って、試みに、日本語の近似値(?)に置き換えて
みようと思います。(自信がないので、最後に”(?)”をつけておきます。また、文体によって、
他の表現のほうがふさわしいこともありますが、それは考慮していません。あしからず。)
1) 疑問詞の強調
Where in the world did you find the tiny insect?
「いったいぜんたい」(?)
2) 疑問の強調
However did you go there?
「いったい」(?)
3) 形容詞・副詞の強調
awfully hot, extremely hard
「めちゃくちゃ」(?)
4) 再帰代名詞による強調
He is happiness itself./ . . . I made it myself.
「そのもの」/「ひとりで、じぶんで」(?)
5) 同一語句の繰り返しによる強調
He ran and ran . . . / Edward read the papers again and again.
The sharks is cruel and greedy and strong.
「さらにまた」「それだけでなく」(?)
6) 比較級・最上級の強調
I much taller than you.
「うんと」(?)
The cake i had yesterday was good, but this is still better.
「さらに、いっそう、輪をかけて」(?)
She is by far the most intelligent student in the class.
「抜群に、図抜けて」(?)
7) 否定の意味の強調
A foreign language is by no means easy to master.
「決して(〜ない)」(?)
I simply don't know what happened.
「とにかく/ただただ(〜ない)」(?)
先の記事に載せた他の例については、ここではその大半を省略しようと思いますが、
12) a)とその類例について、少々。
She does like dogs.
「確かに、間違いなく」(?)
次のようなものも、この類例かと思います(今回初出。自作)。
A: Were you at the concert yesterday?
B: Yes.
A: Are you sure?
B: Yes. I was there!
この2例で重要なことは、does, wasを「強く発音する」ことだと思います。
(特に、後者の場合は斜字体で印刷されるのが一般的かと思います。)
ちなみに、「確かに、間違いなく」という訳語は
かつて授業中に聞いた「「彼女は犬が好きです」を強調した言い方です」という説明が腑に
落ちなかった私が辿り着いた「結論」です。
本題に戻って…
このように余りに多様な日本語に相当するものでありながら、「強調」の1語で括られていることに
納得がいかずに先の記事を書いたわけです。そのモヤモヤは今も変わらずー
よって、授業で「強調」という言葉を使うことは極力避けています。
そんな折り、次のような文章を目にして、何度も何度も膝を打ちました。
(出典は、橋本陽介『中国語は不思議「近くて遠い言語」の謎を解く』(新潮選書)p. 149)
ちなみに私の中国語の知識は、ゼロに近く、漢字100文字くらいが読める程度です。
(ピンインはそれなりに読めますが…)
…このような「是」は、私は“強調”と教わった。しかし、文法の説明で「強調」と出てきたら
要注意である。よくわからないからとりあえず「強調」と言っているのではないかと
疑わなければならない。実際、これは「強調」ではない。(以下略)
橋本先生がおっしゃっている内容と私の意図するところが同じなのかどうか、かなり怪しい気も
するのですが、我田引水してしまいました。
英語の場合、「よくわからないから」とまでは言い切れないと思いますが、上に試訳を載せたように
相当に異なるいくつもの概念を、「強調」の1語で括って、説明したつもりになる、いや、
説明したことにするのには、いまだに与することはできません。
というのも、学習者にはその本当の意味が伝わ(りき)っていないだろうと思うからです。
