担当している高1では、単語帳を利用して、語彙の増強を図っています。
毎回見開き2ページずつ進めていて、授業では単語とフレーズ(左ページ)の発音確認(=発音練習)をしています。(残念ながら、右ページの例文まで読み合わせる時間的余裕はありません。)
そんな実情ですが、先日の授業で読み進めるところに、comfortable が出てきました。
中1から持ち上がってきた学年で、綴りと発音の関係については、折りに触れ、しつこくしつこく
しつこく説明してきた学年です。
その生徒たちに、どうやってこの語を導入しようか考えて、結局、次のようにしました。
「…じゃぁ、次の語なんだけど、"o"の発音はどうなりそう?
【早くも /ʌ/ と言う生徒が数名】 ←感激!
よく見ると、次に"m"が続いているんだけど…。
【ここで /ʌ/ だと気付く生徒が増える】 ←さらに感激!
にょろにょろした"m"の前だから…。
【/ʌ/ という生徒が大半に】 ←「おお、よしよし、ついにわかってきたな」と安堵!
だから、"com”だけ読むと…
【大多数の生徒から /kʌm/ の声】 ←「よーし!」と確信!
全体で…」
こんな具合です。
念のため、このあと
「そうだね、にょろにょろの前だから、この<o>はbus, cutの <u> だと思って読んで、/kʌmfɚtəbl/ 」
と言ってから繰り返させましたが、まずは上のような「誘導尋問」で、綴りと発音の関係を意識
させて自力で読ませてみました。
もう何年にもなりますが、綴りと発音関係の講習会を行なうときには、副題に「"Repeat after me.
からの脱却」と添えることがあります。
授業中、生徒は、教師の発音モデルを聞いて(綴りと音の関係を意識することなく)
それを真似して発音。
大きい声でリピートしているので教師も安心。
ただ、綴りと音の関係を意識していないので、家に帰ると読めない。
次の授業ではローマ字読みになっている。
ということから脱却させるためにどうしたら良いのか。それを考えて続けてきたように思います。
ちなみに今回のページでは他の単語についても、以下のような説明を補足しました。
( / / の中は実際の発音であって、記号を見せているわけではありません。念のため)
pleasantについて
「動詞は<ea>を /i:/ で読んで /pli:z/ だけど、ここでは <ea>を /e/ にして /plezənt/」
realisticについて
「2文字目の<e>は /i:/ で読んで、<al>を弱く付け足して/ri:əl/。その音を活かして、/ri:əlɪstɪk/」
successfulについて
「<cc>の中の2つめの<c>は<e>の前にあるから /s/。1つめの<c>は /k/。<cc> で /ks/。
ただ、<ss> は <s>1文字分で /s/」
certainについては、curtainを板書して、双方を自力で発音させたあと
「certainの<c>は<e>の前だから /s/、curtainのほうは、<i>や<e>の前じゃないから /k/ だね」
また、綴りと発音の関係ではありませんが、冒頭の conscious については、
「あまり見かけない<sci>っていう綴りがあるけど、これで<sh>だと思って読んで」
と添えた後、
「<sci>で始まる単語、みんな知ってるよね?」【"science" という声を聞いたあとで】
「実は、science っていうのは「知っていること、知識」っていうのが語源。
で、conscious “意識がある、意識している”っていうことは、何が起きているか知っていること
だよね。science が書ければ、consciousの綴りも大丈夫!」
とも添えました。
ちなみに、使用している単語帳は、これ。
営業の方によると、日本の学校での指導経験がある英語ネイティブの先生による例文とのこと。
私の思い込み+勘違いかもしれませんが、単語帳というと、
どこの誰が、誰に対して言っている/書いている文か
が、まったくわからないような例文が載っていることが多い印象があります。
ところが、この単語帳の右ページの例文は、使われている場面がよくわかるものばかり。
日本の高校生が言いたいこと=すぐにでも使ってみたい英文がたくさん載っていて、いつも生徒には
例文をよく見るように伝えています。
【補足】
そういえば、comfortableの /m/ の発音にも触れていました。
まず、綴り字通りに /kʌm/ と言い、そのまま /m/ の音を長く伸ばして両唇が閉じていることを目視
させたあと、/f/ の音に移るところを見せました。
そして
「 /m/ で唇を閉じたあと、大急ぎで /f/ の音に移るのは難しい、と同時に、面倒くさい。
だから、ネイティブの人は /m/ を言うとき、両唇を閉じずに、次の音の準備をして
/f/ の口の形で言うんだ。こんな感じでね」
と言いながら、文字通り、実演して“見せ”、生徒にも真似させました。
symphonyとか、pamphletなど、この音(正確には、<m> の最後に内巻きの尻尾がついた [ɱ])は、
それなりに出現する音だと思い、この機会にと思って説明しました。
(ちなみに、40年以上前に音声学の授業で教わったこの音。今ではYouGlishで単語検索し、再生速度
を落として見てみると、その通りだということが、よ〜くわかります。
中には、副次調音的に、あらかじめ /f/ の発音の準備をした状態で両唇を閉じて /m/ を調音している
ように見受けられるものもなくはないですが…。
それにしても便利な世の中になったものだと思います。)
なお、高1になってからは普段の授業でも、たとえば at the gate の中の at の /t/ については、
「舌先は、次の音 /ð/ の位置に置いておいて、言っただけの時間をとってから /ð/ を発音すれよい」
と伝え始めていますから、発音への意識が高い生徒には、役立つ情報だったのではないか、と思って
います。(2025年6月5日付記)

