同級生のK君は、それからは何も言わず、私を部屋においてくれた。

一緒に起きて、一緒に眠る、ただ、それだけの関係。

K君が、仕事に行っている間に、掃除や洗濯はしたけれど、買い物だけには出なかった。

相変わらず、Tさんからは、携帯に何度も着信があったけれど、出る事はなかった。

K君は、ただ優しくしてくれた。

ある時、出勤するK君を玄関まで送ったら、K君にキスされた。

K君は笑いながら、いってきます、そう言って出て行った。

その後、メールがきて、遊びじゃないから、そう書いてあった。

最初は、Tさんから逃げるため、それだけだった。

今は、K君と、ずっといたい、そう思い始めていた。

だけれど・・・

私は、今までの事を聞かれるままに、同級生に話した。

同級生は、私にTさんと別れるように、と言った。

そんな簡単なものではないのに。

私は、自分の中で自分を見失っていた。

そして、誘われるままに同級生の部屋に向かった。

携帯は、Tさんからの着信で鳴りっ放しだった。

ある時、ふと、家に帰った。

そして、そのまま部屋で眠った。

携帯の着信音で目が覚めた。

Tさんからだった。

Tさんはひどく慌てていた。

私は、用事があったから帰って来ただけだと、告げて電話を切った。

Tさんのマンションへ戻るのに駅に行った。

そこで、同級生と偶然逢った。

なんとなくだったけど、何かが変わる気がした。

そして、私はTさんのマンションで暮らし始めた。

Tさんは、生活用品から、パジャマ、下着まで、私の身の回りのものを買って来た。

私は、外に出る事もなく、ただ、一日中Tさんのマンションにいた。

「お前を大事にしたい。」

Tさんは、そう言い、私に触れる事はなくなった。

ベットを私に使わせ、自分は床に布団をひいて眠った。

私は、Tさんと話す事はなく、ただいるだけだった。

それでも、Tさんは満足そうだった。

「幸せだ。」

毎日、そう言った。

結局、私の手の中に、残っているものは、何だろう?

カレ、子供、仕事も、全て失った。

残っているのは・・・

何もなくなった今、Tさんと落ちるところまで落ちてみよう。

どうせ、逃げられないのだから。

そして、私はTさんのマンションへ向かった。

2日間入院した後、退院した。

金銭的にも、精神的にも、辛かった

とにかく、Tさんから、逃げたかった。

携帯の電源を入れて、メールチェックしたら、Tさんからのメールで一杯だった。

メールは読まずに削除して、また電源を切った。

会社には、体調を崩したので、と説明した。

家に帰って、しばらくして、携帯の電源を入れた。

そして、Tさんに、電話をした。

Tさんは、すぐに出た。

「逢いたい。」

Tさんは、何度も繰り返した。

私は、無言で電話を切った。

そして、また、電源を切った。

異変に気がついたTさんが、目を覚ました時には、私は、もう話せる状態ではなかった。

口から出てくるのは、呻き声だけ。

Tさんに支えられ、車に乗って病院へ向かった。

そこで、妊娠していた事、流産した事、これから処置に入る事を伝えられた。

処置後、落ち着いた頃に、医師が来た。

流産の原因は、やはり暴力を受けた為だった。

膣内にも、無理やり入れられた為の傷があったらしい。

顔にも殴られた傷があった為、女性センターへの一時保護入所をすすめられた。

私の身体の傷の原因がはっきりしなかったので、Tさんは私との面会が許されず一度自宅に帰されたとの事だった。

少し考えてから返事をする事を、医師に伝えた。

Tさんの事よりも、妊娠していた事実に驚いた。

憎い男の子供、でも、私の子供、結局は生まれなかったけれど。

Tさんは、私を憎み、殴り、蹴り、そして、自分の子供を殺した。

これでよかったんだ、と思う気持ちと、また、あの男に大切なものを奪われたんだ、という気持ちが入り混じり、なんとも言えない気持ちになった。

次の日、仕事が終わって帰ろうとしていたら、Tさんからの呼び出しメールがきた。

ファミレスで待ち合わせ。マンションへ連れて行かれた。

ここまでは、いつもと同じだった。

違うのは、まったく話そうとしないTさんの態度だけ。

部屋に入った瞬間に、今まで大人しかったTさんの、態度が豹変した。

イキナリ、私を突き飛ばし、殴った。

起き上がる隙もなく、今度は、何度も蹴られた。

「ちくしょう、ちくしょう。」

そう言いながら。

服を破かれ、暴れると、お腹を蹴り上げられ、無理やり入れられた。

乱暴に揺すられ、恐怖と激しい痛みとで気が遠くなった頃、奥に生暖かい感触がした。

Tさんは、終わった後、私の両手を縛った。

そして、酒を飲み、そのまま寝てしまった。

しばらくして、強烈な腹痛が襲ってきた。

それと同時に、Tさんに出されたものとは違うものが、あそこから流れ出てくる感触がした。




会社の帰りに、Tさんが待ち伏せしていて、また、マンションへ連れて行かれた。

「話し合おう。」

そういうTさんに笑いが止まらなかった。

一体何を話し合うのだろう。

Tさんから一方的に始められたこの関係の、どこに話し合う必要があるのだろう。

「結婚したい。」

そう何度も言ってきた。

好きでもない、むしろ憎い男、しかも15歳も年上のバツイチと、なぜ、私が好き好んで結婚しなくてはならないのだろう。

「責任をとりたい。」

その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが爆発した。

「責任って言うなら、今後一切私と関わらないで。」

私は、泣きながら、そう叫んだ。

「今すぐ別れる事は出来ない。別れた後、妊娠しているのがわかっても、勝手におろされたら困るから。判るまでは別れない。」

結局は別れるつもりがないのだろう。

「妊娠はありえない。私には子供は出来ないから。」

Tさんの呆然とした様な顔見たら、笑いが止まらなかった。

「私とあなたの子供は絶対産まれない。」

もう一度、笑いを堪えながら言ってやった。

「どうして・・・」

そう呟いているTさんを残して部屋を出た。

可笑しかった、笑いが止まらなかった。

やっとやっと、あの男に仕返ししてやった、そんな気持ちしかなかった。

その後の事なんて、何も考えてなかった。




Tさんへの復讐心で一杯の私は、周りの事が一切見えなくなった。

妻帯者であるTさんに、レイプされ、脅され、関係を続けさせられ、それでも、この形は不倫というのだろうか。

望んでいるわけでもないのに。

そう思うと、怒りの止め様がなかった。


ある時、Tさんに、奥様の弟さんという人に会わされた。

「結婚を前提にお付き合いしている人。」

そうTさんは言った。

弟さんは笑いながら、今度こそ幸せになってね、と答えた。

「付き合ってなんかいません。脅されているんです。」

気がつけば、そう言っていた。

弟さんは、もう笑ってはいなかった。

Tさんは、ケンカしてるから、とか言い繕って、私の手を引っ張って車に乗せ、マンションに帰って来た。

「もうとっくに離婚は成立してるんだ。」

私を脅してマンションに連れてきた時には、既に離婚は成立していたとTさんは言った。

Tさんと奥様の事は、私には全く関係ない。

Tさんの周りや、友人に紹介される覚えもない。

私は、無言のままだった。