JPモルガンAの太田ファンドマネージャーのIPOコメント
週末にブルームバーグボイスで、JPモルガン・アセット・マネジメントの太田忠 ファンドマネージャーのIPO市場の意見を聞いた。とても楽しく、有意義であった。同意見の部分と反対意見とがあっておもしろかった。
まず、今年1月~6月のIPOは24社で、昨年の同時期が73社であったため7割減であるが、現在の状況は「当然起こるべくして起こった」という。
2006~2007年には、「パブリックという名にふさわしくない会社が次々と出てきた」ため、「途中でボロを出したり、ビジネスモデルが崩壊したりする」企業が次々と出てきた。それにより、これが試金石となり、今年は選別を受けた会社のみが上場する年となっているとの見方。
そして、何よりも激しい意見としては、名証セントレックス、札幌アンビシャス、福岡Qボード上場52社のうち、株価が公募価格を上回っているのは2社しかなく、上場企業の質等の観点から即刻(上場or市場自体)廃止すべきだというものだ。地方3市場について、①どんな会社が上場したか②上場後の株価③どういう主幹事証券会社が上場させたかという観点から見た場合、ほぼIPOとしては失格の会社ばかりとのこと。市場間競争の中で、本来であれば競争すればするほど、お互いのレベルが上がるところだが、日本のIPOでは競争すればするほど、会社のレベルが下がっている。もはや、この3市場については存在意義は全く失われている。
<<その他の太田氏の主張>>
初値が高いと活況というのは間違い。
初値は、同氏の言う「幻想価格」であり、現実的な将来性を表した株価とは言えないことが多い。
2008年の初値(幻想価格)のつき方が穏やかで、まともになっている。
2006年に公募価格なら投資してもいいと思ったは10社に1社だった。今は30%。
機関投資家は、IPO時のロードショーには参加しない。参加しても時間の無駄だ。
ジャスダックと大証の統合を評価。マザーズも統合すべき。東証2部も同様。
外国人投資家には日本の中小型株に適当なベンチマークがない。
今年は、とことん叩き売られた局面のため、長期投資家にとっては仕込み時。
以前から太田氏の意見は日経の経済羅針盤 で知っていたわけだが、今回は改めて映像で意見を聞いたため。物凄い印象に残った。同氏は、業界関係者が当然のこととしてわかっていても、あまり公では言わないことを主張されている点に感銘するわけだが、いくつか意見を言いたい。
地方市場をまともに長期投資しようと考えている投資家は機関投資家であれ、個人投資家であれかなり少ない。むしろ、地方三市場で問題を起こす企業があっても、新聞もあまり取り上げないし、一部の2ちゃんねるしか話題にもならない。問題は、地方三市場ではなく、太田氏も投資対象としている東証マザーズ、ヘラクレス、ジャスダック企業の不祥事や幼さである。
また、太田氏は地方三市場は即刻廃止にすべきだと主張するが、これは完全にその企業に投資していない外野からの意見である。自分が投資していないからどうにでもなれという意見に聞こえる。地方三市場の投資家はほとんどが個人投資家であり、即刻廃止にして困るのは個人投資家である。流動性を失うことにより困る投資家をいることを意識してから「即刻廃止」と主張すべきである。
太田氏の意見は概ね正しいと言えるし、日本市場のことを考えての意見だろうが、私のような個人レベルに言わせると情報に優位性のある機関投資家の意見である部分も多かったように考える。
しかし、太田氏の意見は貴重であり、新興市場活性化のためもっと積極的にいろいろなところで主張してほしい。でも・・・意見が一部の人々の反感を買う恐れがあるために今のレベルの露出度に留めるのが賢明かも。