『しとやかな獣』

☝前置きなしに早速参りましょう!!

『洲崎~』に続けて観賞しました。

◇ 1962年作品
監督 : 川島 雄三
脚本 : 新藤 兼人
主演 : 伊藤 雄之助、山岡 久乃、若尾 文子、川畑 愛光、浜田 ゆう子、高松 英郎、船越 英二、山茶花 究、小沢 昭一


〈簡単なあらすじ〉

高層団地の建設が進む東京晴海、

元海軍中佐の前田 時造(伊藤 雄之助)・よしの(山岡 久乃)夫妻は来客の準備に忙しい、、
それも普段の生活より、みすぼらしく見せる為に、、


息子・実(川畑 愛光)が働く、芸能プロモーター会社の社長・香取(高松 英郎)は、かなりの剣幕で、経理係の幸枝(若尾 文子)、専属歌手のピノサク(小沢 昭一)を従えてこの前田家を訪れた。。
息子の実が、会社の金を横領して4日間も無断欠勤しているとの事で、探しだしてすぐにでも横領金を返却する様、要求するが、夫婦は知らぬ存ぜぬを繰り返すばかり、、ラチが空かないと、香取達は一旦は退散をした、、
その様子を玄関の外から覗き見していた実が何食わぬ顔で帰宅したが、両親は実に、全くお咎めなし。。。?

この前田家は、家族ぐるみのワルで、息子には会社の金を横領させ、娘・友子(浜田 ゆう子)には妾として金持ちに斡旋する、まるで女衒の様な父親とそれをなに食わぬ顔で肯定する母親という素顔があった。。

実は、会社から横領した金を経理係の幸枝にまで貢いでいたが、その幸枝から別れ話を持ちかけられ、必死に抵抗する。

幸枝は後家で子供までいるが、夢である旅館経営の為、時に手段を選ばず、女の武器を存分に使い資金集めをしてきただけで、実に対しての愛情等無かった上に、社長の香取や税務署員の神谷まで誘惑して金をせしめていたのだった。

この、守銭奴達を、
待ち受ける結末とは……?

…………………
(★ネタバレします(-_-;))


一見、強欲な銭ゲバ一家の不愉快極まりない映画(>o<")ですが…

団地の一室のみで物語が展開する舞台劇の様な、、または、音楽とリンクして「能楽」の様に能面を被った人間達の騙し合いにも見える。(金ズルの吉沢先生を見送る夫婦のすり足の様な動きも正に「能」)

実験的な試みと言っては語弊が生じるかも知れないが……上から・下からの斬新なカメラアングルや、、内面描写の様な非現実的な白壁の長い階段等、、かなりアバンギャルドな作品だと思います。

………………………………

ドン底を味わった事のある人間の生き方は、、滑稽なまでの貪欲さを自然と養ってしまうもので、、


「貧乏が骨の髄まで染み込んでいる…」
⬆絶対にあの頃の貧しい暮らしには戻りたくないと切実に話す父の言葉に、無言で聞き入る家族の顔がリアルだった。。

人間の強かさだけを描き、、其々が絡み合い、一触即発かと思いきや、何故か利害が一致して、調和の方向にすすんで行くが、
そこに「和」を乱す男の出現、、、

この辺が、非常にシニカル&ブラックユーモアたる所以で、、

全てが悪人というより、、苦労人……(苦笑)

幸枝の色仕掛けに騙され、安定した人生を台無しにされた、唯一まともで生真面目な税務署員・神谷が語った。「あたしは生まれて初めて、、楽しかった…」最後の台詞が虚しい。。

生気を失った顔は、完全に「ホラー」(-_-;)


警察に出頭するかと思いきや、その足で団地の屋上へあがり、そして見投げしてしまう………

神谷の自殺により、、幸枝や前田家との関係が全て明るみになってしまうかも知れないが。。

そうとは知らず、前田家は「休日一家団欒」の図……


よしのが、救急車の音に気が付きベランダから下を覗き、、ようやく事態を把握した…


この家族がどの様な結末を迎えるのかは、
⬆よしのの不気味な表情から察して下さい!と委ねられます。

「この腐りきった生活が終わる…」なのか?「自分だけは絶対、助かってやる。」なのか?

………………………………

この作品は怪優【伊藤 雄之助】さんと【山岡 久乃】さんありきの二人の為の映画です。



【山岡 久乃 】さん、以前はこんな役をやられていたんですね。ホント見事としか言い様ありません!!
ホームドラマのお母さんで、、「瞬ちゃん!スプライトあるわよ!」みたいな爽やかさゼロ0で「コーラ」を飲みます。。


とは言っても☝【若尾 文子】さんの妖艶っぷりは無視出来ませんよね!
考え方が、完全に悪女なんですが、それでも諦めきれない男達、、よくわかります。。


⬆そして、正に「同じ穴の狢」… (冷笑)

欲情を抑えられない男の単純さを巧みに操作した女の勝利で終わると思えたが……


⬆結局この人こそが『しとやかな獣』だった。恐々、、

その後の家族の結末を考えるだけでも、
居酒屋で五時間位は論議出来そうな映画だ。

役者、シナリオ、映像、どれをとっても素晴らしくチャレンジ精神旺盛な作品❗❗★★★

………………………

【川島 雄三】監督、
四十五歳の若さで病に伏された奇才の後期作品。
監督はきっと、こんな辛辣な映画を撮り続けたかったのではないだろうか。。

この作品の賛否に、川島監督の好き嫌いが別れる映画かも知れません。。

因みに私は、激しく「賛」の方でした。(笑)

これまでは有名な『幕末太陽傳』位しか観たことが無かったがm(__)m
これから、もっと深く「川島ワールド」にハマりたいと思っています。。


⬆赤い夕焼けをバックに「能」のリズムに合わせて「ゴーゴー」(?)を躍り狂う姉弟……カオス以外の何者でもありません。。

………………………

いつもの余談☝

犯罪を繰り返し生活の糧とする家族。。?

💡💡無理矢理感、無きにしもですがm(__)m
今、大変なブームとなっている『万引き家族』と何となく似ている……
確かに、両作品ともに、貧困からの脱出を勤労ではない方法で考える家族だが、、普通に働いても裕福には程遠い、格差社会の厳しい現実に喘ぐ家庭の真実の叫びが聞こえる。。

『万引き家族』との違いは、子供達は既に善悪の分別のつく、立派な大人の年齢である所と実の親子という設定…

本作では感動的なシーン等は皆無で、、
汗が吹き出る様な、暑く湿気の多い季節だが、
何処か、醒めていて乾いてると言うか……
人の暖かみの無い、空虚な体感温度の低さを感じます。。

そこが、『万引き家族』との大きな違い。。


そのまた超余談✌

ペテン外人ジャズシンガー「ピノサク・パブリスタ」(日本人)やら、「イブニング・プレスリー」等、、キャラ名も無茶苦茶に奔放で、ホント不思議な作品でしたが。。

一つ発見☝
そのピノサク(小沢昭一さん)が、『万引き家族』の祥太くんと同じ、ルーチンのおまじないをしていました。
回す指は違いますが……(笑)⬇


下らん事まで、お付き合いありがとうございました  f(^_^; 「ベサメ・ムーチョ~」!


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