『死者の舞踏場』 トニイ・ヒラーマン著 1973年
本作は刑事が殺人事件を捜査するというミステリなのですけれども、なにが特殊かと言うと事件はインディアン居留区で起こり、主人公はナヴァホ族警察の所属なのです。
あらすじ:ズニ族の少年とナヴァホ族の少年が行方不明になった。ナヴァホ族警察のリープホーン警部補はズニ族警察へ赴き、共同で捜索を始める。やがてズニ族の少年の遺体が見つかり、犯人がカチナの格好をしていたことも判り・・・という物語。
舞台がインディアン居留区というだけではなく、先住民の儀式や神話が事件に関係してくるところが面白いところです。
「カチナ」が何かを知らないようなアメリカインディアンの知識が全くない方には難しいだろうとは思いますが、最低限の知識があれば十分楽しめます。
リープホーン警部補はシャーロック・ホームズのような天才型ではなく、地味にコツコツと足で捜査するタイプ。そのおかげでズニ族居留区の大地や集落の空気を存分に感じさせてくれました。
ズニ族とナヴァホ族の文化の対比も興味深いですし、途中からFBI捜査官がやってきて捜査の主導権を取られてしまうという展開で白人とネイティブアメリカンの力関係を描いているところも巧みです。
話がというよりも、ネイティブアメリカン × ミステリという組み合わせが極めて斬新でした。
『魔力』 トニイ・ヒラーマン著 1986年
ナヴァホ族警察シリーズは18作出版されていて、その中でも7作目となる『魔力』から人気に火がついたとのことなので、こちらも読んでみました。
呪術を嫌悪するベテラン、リープホーン警部補を主人公とする物語が3作、呪術師を目指す若きチー巡査が主人公の3作がこれまでにあって、本作はこの対照的な二人が初めて共演する作品。以降はリープホーン&チーをダブル主人公としたシリーズとして継続していきます。
原題は「Skinwalkers」。スキンウォーカーとは動物の皮をかぶることで変身をする、ナヴァホ族の伝説上の悪い魔法使い。
呪術(あるいは迷信)が残っているインディアン居留区だからこそ起きた連続殺人事件で、ただのミステリーではなくナヴァホの文化的背景も学べることがこの作家の醍醐味でした。
著者は白人でしたが、ネイティブアメリカンの文化に精通したベストセラー作家として敬意を受け、ニューメキシコ州のアルバカーキに「トニイ・ヒラーマン中学校」や「トニイ・ヒラーマン図書館」が建てられたそうです。














