『火を焚きなさい』 | Wind Walker

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火を焚きなさい―山尾三省の詩のことば

 

『火を焚きなさい』 山尾三省著 2018年

 

 

山尾三省さんは有名な詩人ですが、実際に作品を読むのは初めてです。

 

1960年代に「部族」と呼ぶコミューンを作ったり、1年間インドを旅したりした後、1977年に家族で屋久島の廃村へ移住し、農民として田畑を耕しながら詩作を続けました。2001年に死去。

 

私が昨年リリースした『WINDWALKER』はアメリカインディアンの長老の「歌い、踊り、火を熾せ」というメッセージに触発されて生まれましたが、本作のタイトルはズバリですね。

 

より正確に引用すると長老のメッセージは「コロナは人類が本来の道を外れたために起こったのだから、我々は本来の道に戻らなければならない。それは、歌い、踊り、火を起こすことである」というもの。

 

山尾三省さんは東京から屋久島に移って、人として本来の生き方に戻ったということなのでしょう。

 

彼の詩の題材も、夜明けのカフェオレだとか、夕日や雲がきれいだったとか、長男が成人して島を出ていくだとか、ごくごく日常的なものばかり。

 

普遍的なテーマであればこそ、いつまでも古びないで多くの人に響くのでしょうね。

 

 

 

 

 

山尾三省さんとゲーリー・スナイダーさんの対談本『聖なる地球のつどいかな』(1998年)もついでに読んでみました。

 

ゲーリー・スナイダーさんのことも同様に「名前をどこかで聞いたことがある」という程度の認識でしたが、日本で禅の修行をした後に1969年からカリフォルニアのシエラネバダ山麓の森の中で生活をしている詩人。

 

住む場所を定めて自然を愛するという生き方は山尾三省さんと非常によく似ていますが、それは「自分の場所が見つかれば、そこで自ずから修行がはじまる」という道元禅師の教えなのだそうです。

 

二人の価値観や思想があまりにも似ているために意見の衝突が起らず、対談としての面白みにはやや欠けるものの、終盤のスナイダー氏の「たまに人に『たぶん君が勝つことはないだろうよ』などと言われたりするんです。そんな時は、私は、『勝つためにやっているんじゃないんですよ』と答えるんです。『正しいことだからやっているんですよ』と、答えるようにしているんです。」(p.266)という一言が印象に残りました。

 

 

 

 

心が洗われる生き方を目の当たりにしたい方には、どちらもオススメです。