『植物と叡智の守り人 ネイティブアメリカンの植物学者が語る科学・癒し・伝承』 ロビン・ウォール・キマラー著 2018年
著者はネイティブアメリカン、アニシナアベの女性。子供の頃から植物に興味を持ち、大学で植物学を学び、博士号を取って教授になりました。
しかしネイティブの伝統的な世界観での植物の見方を改めて知ったとき、自分の学術的な理解がいかに薄っぺらなものであるかに気づきます。
そこから自然を観察して風や川や植物の歌を聴くようになり、それらを科学的知識と共存させる理解の仕方が本当に素晴らしかったです。
先住民の知恵を紹介する本のほとんどは言葉だけなので抽象的な理解で終わってしまうことが多いですが、本作では著者が子供の頃に野イチゴを摘んで食べた思い出や、メープルシロップを作ったり、子供たちのために池を作ったりなどの具体的なエピソードの中で先住民の知恵がどのように活かされているのかが語られるところが良いところです。
多くのエピソードで繰り返し語られるのは、自然からの贈り物には「感謝して受け取る」ということの大切さ。
「良識ある収穫」のガイドラインが示されていて、その一部をご紹介すると、
自己紹介をしなさい。その生き物の生命を奪おうとしている者としての責任を負いなさい。
生命を奪う前に許可を求め、その答えには従いなさい。
自分に必要なもの以外は奪わないこと。
進んで与えられたもの以外は奪わないこと。
敬意を持って使うこと。手に入れたものは決して無駄にしてはいけない。
分け合いなさい。
与えられたものに感謝しなさい。
あなたが奪ったもののお返しに贈り物をしなさい。
あなたを生かしてくれるものの生命を守りなさい、そうすれば地球は永続するだろう。(p.235)
など。
本作にも出てきますが、人々が感謝の心を忘れたがゆえに大地の恵みが途絶えてしまい飢餓に苦しむという先住民の民話もたくさんあります。
日本では食前に「いただきます」という風習がありますけど、その言葉だけで本当に感謝として十分なのか私は常々疑問に思っているのです。
そういえば日本やネイティブアメリカンの文化には無いと思いますけど世界には鼻笛というものがあって、なぜわざわざ鼻で笛を吹くのかと思ったら、その理由は「口は嘘をつけるから」だそうですよ。
2段組で約500ページと文字量は多いですが、植物やネイティブアメリカンの世界観に興味がある方には本当にオススメです!
人として生きるべき叡智が示されているので、一人でも多くの人に読んで欲しい一冊でした。