『虹の戦士』 | Wind Walker

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ネイティブアメリカンフルート奏者、Mark Akixaの日常と非日常

定本 虹の戦士

 

『虹の戦士』 北山耕平 翻案

 

 

どこの部族かは不明ですけど、アメリカインディアンに古くから伝わる予言とされている物語。後書きによると作中の女性がクリー族にいたことが確認されているそうです。

 

物語は「地球が病んで 動物たちが 姿を消しはじめるとき まさにそのとき みんなを救うために 虹の戦士たちが あらわれる。」という言い伝えで始まり、都会に住むインディアンの少年がひいおばあさんに「なぜ白人たちがこの大地を奪い去ることをスピリットは許したのか」を質問します。そのとき老婆は、失われたスピリットを持ち帰るものが一族の中から現れるという言い伝えを思い出すのでした。そして少年が戦士になるための修行が始まり・・・という内容。

 

 

この本は昔読んだことがありましたが、英語版のWikiにインディアンの予言というのは嘘でありキリスト教福音派が先住民を伝導するために創作されたもので、キリストの再臨に関連づけられた「隠された反ユダヤ主義」であり、「ネイティブカルチャーへの攻撃」であると書かれているのを最近発見し、「そんな話だったっけ?」とびっくりして再読してみました。

 

これが本当に先住民の予言に基づいた物語なのか真偽の程はわかりませんでしたが、「あなたが虹の戦士となれ」という内容なので、これをキリスト再臨への待望と読むのはかなり無理があるとは思いました。

 

日本語版は北山耕平さんによる後書きが付いていて、個人的には本編よりもそっちの方が価値があるようにさえ感じてしまいます。

 

 

もともと「癒し」とは「病気治し」や「利己的なリラクゼーション」にとどまるものではなく、つねに「自己と、社会(共同体)と、地球」の三者がひとつになっていることを理解し確信した上でもたらされるものなのである。(p.178)

 

 

「つながり」がネイティブの価値観でなによりも重視されているものと私は理解していますが、現代人が常に癒しを求めているのはこのつながりが日々の生活の中であまり感じられていないからかもしれません。

 

この本が「反ユダヤ主義」と言えるのかは微妙なところですが、以前北山さんのお話を伺った時に「日本にいることは牢獄の中にいるようなもの」と仰っているのを聞いて、この人はかなりアナーキストだなと感じたことはありました。

 

おそらくこの管理社会のコンプライアンスの中で生きることを当然のこととして受け入れている人にとってはこの本は危険思想にもなりうるのでしょうけれど、本当の意味で自由でありたいと願う人にとっては心から共感できる一冊だと思います。

 

自分が今どっち側の価値観にいるのか、読むことで客観的に分かる本なのかもしれません。オススメですし、読んだ方全員が地球を守る戦士となっていただきたいです。