『桃山ビート・トライブ』 天野純希著 2008年
『黒ん棒』で紹介した弥助が出てくる小説。著者のデビュー作にして第20回小説すばる新人賞受賞作。
幼き頃に「出雲のお国」のパフォーマンスを観て触発された少年少女と弥助が、後に出会って破天荒な演奏をする一座を結成するという、安土桃山時代を舞台にしながらもとてもロックで疾走感のある物語。
主人公は盗んだ荷物が三味線だった掏摸の藤次郎、食べることと踊ることしか能がない舞の天才少女・ちほ、笛職人の息子だが「自分も舞台に上がりたい」という衝動に駆られた小平太、そして日本では誰も聞いたことがないアフリカン・ビートを叩き出す弥助、の四人。
藤次郎と小平太は最初憧れのお国の一座に加わりますが、一座は庶民の前でパフォーマンスしていた頃とは違い、貴人の邸に呼ばれるようになって演奏は大人しく、決められたことをやっていればいいというものに変わっていました。
それが不満で二人はそこを飛び出し、本当に自分たちがやりたいもの、まだ世の中にないカタチを模索し、流行の模倣をしただけのものや舞い手の容姿が良いだけのものばかりが持て囃される世間の度肝を抜くことになるのですが・・・というお話。
本作がデビュー作ということもあってか時代小説としては荒削りですけど、本能寺の変の後の消息が分からない黒人の弥助をリズム担当にしたり、あまり陽の目を見ることのない悲運の関白、豊臣秀次を重要なキャラとして登場させるなどの人物配置はなかなか良かったです。
マンガでも読んでいるかのようなポップな感じなので大人の読者には好き嫌いが分かれそうですが、これが漫画なり映画なりになったとしたらきっと面白いものになるだろうという予感はビンビンします。誰か作ってくれないかしら。
本作の「音楽は反体制。世の中のルールをぶち壊すもの」という姿勢に共感して久々に熱くなりました。オススメ!
主人公たちが演奏するのは三味線、笛、太鼓のはずですが、読んでいて頭に流れてくるのはハードロックでした。
きっとこのグループの存在が頭にあったからでしょうけど。
「六三四」というグループ名で、その由来はギター、三味線、ベースの弦の数からとのこと。
ロックの演奏陣が邦楽器たちの演奏レベルに張り合えていない点がいささか惜しいところですが、邦楽×ハードロックというアイデア自体はすごく好きです。


