あまり多く紹介しすぎても読み切れないだろうなと思って、最大でも週1冊ぐらいのペースを守って本をオススメしているのですけど、実際はもっと多くの本を読んでいて、ブログで取り上げられずに終わったものも毎月何冊かあるのですよ。
取り上げられなかったのには、自信を持っておすすめできない何らかの理由があったということなんですけども(笑)
そんな惜しい本が今月は特に多かったので、それらをこの機会にまとめてご紹介してみましょう。
『ウォールデン 森の生活』 ヘンリー・D・ソロー著
「この本が好き」という人が周りに結構いるので期待して読んだのですけど、私の感想は「思ってたのと違う」の一言。
・・・まあ、期待しすぎるとガッカリすることが多いですよね。本だけでなく、なんであれ。
てっきり俗世間での生活に疲れたおじさんが書いた本だと思い込んでいたんですけど、このときソローは若干27歳。森に住んだのはたったの2年と2ヶ月・・・。
森の中に家を建てて住んだという実体験よりも文明批判が多かったり、その博識な知識をひけらしたがる癖が強かったりで、上巻で挫折。
ただし思想そのものには共感できることが一杯ありました。変な先入観さえ持たなければ、人生のバイブルとして読めたのかもしれません。
惜しいことをしたとは思っていますが、下巻はもういいです。
『帰ってきたヒトラー』 ティムール・ヴェルメシュ著
ヒトラーが現代にタイムスリップしてきたら・・・というお話。映画は日本でもヒットしたそうなのでご覧になった方も多いのでは。
映画が面白かったので原作も読んでみましたが、ガチのドキュメンタリー部分があった分だけ、私は映画の方が面白かったです。
「最初は彼を笑っていたはずなのに、ふと気がつけば、彼と一緒に笑っている」という誰の心にもヒトラー的なものが潜んでいることを体験するという著者の意図は、確かに原作の方が強く感じましたけども。
笑えるコメディーですが、まだドイツがイスラム系難民を受け入れる前に書かれた作品だということがひたすら恐ろしいです。
まだ観てない方は映画がおすすめ。
『マイ仏教』 みうらじゅん著
実は私はみうらじゅんさんの大ファンなのですけど、彼の風貌や声や口調が好きなので、著書はあまり読んでいないのですよ。
徹頭徹尾バカバカしいことしか言っていないようで実はとても深いことを言っているというスタイルは活字でも健在。
「何か俺の周り、どうしようもないバカばっかりなんだよね」と言う人がいます。しかし「自分もその中の一人である」ということが、なぜかその人には見えていません。「今日の京都は混んでいるな」というのも同じです。自分がその中の一人であり、原因であることが見えていないのです。(p.141)なんかは、まさに正鵠を射た名言! 混んでいる時に自分もその原因の一人だと考えたことはなかったですけど、言われてみれば確かに仰る通りです(笑)
仏教入門のような内容なので、全国のお寺にたまにいる話の面白いお坊さんの説法を活字にして読んでいると思えば、これ以上面白い本はないでしょう。
一方、M・Jファンとしては内容の濃さも分量もちょっと物足りなさを感じてしまいました。
『砂の器』 松本清張著
先月秋田に行った時に、秋田弁が何を言っているのかわからないレベルだったことに衝撃を受けました(笑)
東京に帰ってきてから秋田弁についてググったりしていたのですけど、そうしたらこの作品が、「東北弁」が数少ない手がかりの殺人事件の話だということで興味を抱いて読んでみました。
先のみうらじゅんさんが松本清張の大ファンで、「崖ブーム」なんてのもありました。よく昔の刑事ドラマで、最後の犯人との対決シーンが崖なのは松本清張作品の影響らしいですよ。
松本清張さんの作品は着想や文章力ももちろん凄いのですが、今となっては「昭和」という時代の空気を濃密に味わえるというのが一番の魅力ですね。私にとっては。
なぜこれが「惜しい」作品なのかというと、以前読んだ短編集のほうが個人的には面白かったため。短編集は夢中になって何冊も読んだので、そちらは文句なくおすすめできます。
それにしても、これで今年ももう1ヶ月経つとは早過ぎます。
この分だと2018年もあっという間に終わってしまいそうですよ。