今は別の職種に就いている私ですが、ホテルや街のレストラン、バーなど、様々な飲食店で働いてきました。
先日、一緒に働いていた元部下から、
"辞めることになりました。mariさんにはお世話になりました。"
と報告を受け、あんなにイキイキ働いていたのに…と驚きと共に、この業界の闇を感じました。

今回は、「飲食店スタッフはなぜすぐに辞めるのか?」をテーマにして、現代における飲食店での仕事から深掘りをしていきます。


飲食店で働く社員の本音

どれだけ飲食店で働いている社員が辞めたいのか、まずはGoogleでの検索候補を使って調査をしてみました。

Googleで検索したいワードを入力しようとすると検索候補が出てきますよね?
これはさまざまなユーザーが入力した検索ワードをGoogleが集計して上位の検索ワードを検索候補として表示しているといわれています。
この検索候補を利用して「飲食 仕事」と入力すると、

飲食 仕事 辛い
飲食 仕事 きつい

というワードが検索候補の上位にあがってきました。
なんてネガティブな検索候補…。

離職率に関しても厚生労働省が出した統計データによると 飲食産業の退職率は全産業の中でぶっちぎりの1位です…!

ぶっちぎりという点ですが2位の娯楽産業は20%で、対する1位の飲食産業は30%。
つまり10人中3人が辞めるという、とんでもない数値なんです…。

とにかく働く時間が長すぎる…
これに関しては飲食店の営業時間が長いことが理由になっているかもしれないですね。
飲食店はランチとディナー営業で分かれていて、他の産業では2シフト制を導入しているのが普通かもしれませんが、 基本は通しで仕事をすることが多いのが飲食の世界です。そのために、プライベートなどあったもんじゃないです。
起きる→仕事→休憩・賄いを食べる→仕事→食事→寝る
これで1日が終わります。
実際に厚生労働省が出した統計データによると、全ての産業の中でTOP5に入るほどの労働時間の長さなのです。
さらにこのTOP5ですが製菓と製パン、宿泊関連のものは別で分かれているので、労働時間の長さランキングの上位は食に関わる仕事が占めているということになります。

それなのに休みも少なすぎる…
飲食店を経営している企業の中にも、今では月8日休み、週休2日制を導入しているところも増えてはきました。
しかし、未だに週休1日であったり、隔週で週休2日でやっているところもかなり多いです。
とくに料理長や店長などの管理職の立ち位置になるとさらに休みが少ないのは言わずもがな。
この姿を見ているからこそ、アルバイトの子たちは「飲食での正社員はやめておこう…」と思ってしまうのかもしれません。
こんな休日取得の状況では、飲食業の有給休暇の取得率はいったいどれくらいなのか…?

結果は予想通りで 有給取得率もワーストでした。
数値はなんと、30%台です。

世界と比べてみても、日本人の有給取得率は50%で圧倒的に低いといわれています。
その中でも、飲食産業が取得率を低くさせてしまっている要因のひとつとなってしまっているのです。

もう体力の限界!
キッチンスタッフもホールスタッフもそうですが、飲食店の仕事は体力的にキツいと感じるところが多いです。
ずっと立ちっぱなし、重量のある調理器具・食器類を扱う、厨房が暑すぎる…などなど、あげればキリがないんだとか。

労働時間長い・休み少ない・激務なのに、給与が安い…

ダメ押しもダメ押しですね…。
ここまでネガティブなことが理由が続いてるんだし、その分なにか良いことがあるんでしょ?
と、思いきや物理的な部分でもやっぱりキツいんです…。

平均賃金(年収)に関して厚生労働省の調査では1位である金融・保険業の460万円前後。

それに対して飲食業の平均賃金(年収)は270万円前後で金融・保険業と約1.7倍もの差を着けてワーストTOP3内に入っているのです。

こうもなると、いよいよ飲食の仕事をやめたくなる気持ちも分からなくもないです。

飲食店側・企業側はどうしたらいいのか?
人がどんどん辞めていってしまう理由はわかりましたが、飲食店側・企業側はどうしたらいいのでしょうか?

現状、「飲食店の仕事=ブラック」というイメージを持たれてしまっているので飲食業界は常に人手不足になっています。

有効求人倍率
人手不足の話をするその前に、みなさんは「有効求人倍率」という言葉をご存知でしょうか?

有効求人倍率とは、求職者一人に対して何件の求人があるかを示したものです。

たとえば、求職者が100人いるとして、求人が300件ある場合の有効求人倍率は3.0倍ということになります。

つまり倍率が高いと就職がしやすく、低いと就職がしにくいということで、有効求人倍率をみれば「就職のしやすさ」がわかるのです。

ちなみに、日本の有効求人倍率は厚生労働省の調査によると2019年は1.55倍から現在は1.32倍となっています。

コロナウイルスの影響により前年より低下しており、就職がしにくいものと推測されているようです。

では、飲食店の有効求人倍率はどうでしょうか?
前述での全業種平均1.55倍に対して、なんと飲食店は、2.99倍!!
めちゃくちゃ「就職しやすい」んですが、とにかく「応募がない」んです。

ここまで悪く書いて言うのも何ですが、私が飲食店で働いていたメリットはたくさんあり、しんどいことばかりではないと思っています。今でも本当に有難く思っているメリットは以下の通りです。

⭐︎早い段階でマネジメントやマーケティングが現場で学べる。
これらの経験はスキルや実績がしっかりつけば人材市場では貴重な存在となれるでしょう。

⭐︎この業界は色々な職種の人とたくさんの出会いがある。
そこで得た人脈が、仕事につながるかもしれませんし、単純に自分とは違う世界に生きる人と交流を持つことで刺激にもなります。

飲食店の仕事は未だにブラックです。全体的に徐々に改善されてきてはいますが、一般的な見解としてはまだまだといえます。
店舗側・企業側の責任者は現状を変えるべく労働環境の改善に努めて、人が辞めない環境づくりを整えることが今後、更に大切です。