群翔する鳥



群れの中で、一羽だけを見ても

空の流れは分からない。



本当に変化を読み取るには、
いくつかの羽ばたきを
同時に見なければいけない。



一羽が急に高度を上げれば、
もう一羽は風を避けるように
軌道を変える。



その二つの動きが重なった時、
群れ全体の空気がわずかに揺れる。



けれど、時には
まったく別の一羽が
群れの中心に向かって
強い風を起こすことがある。



その風は、

直接ぶつけられた一羽だけでなく、
周囲の鳥たちの羽ばたきまで
乱してしまう。



風を起こした本人は
「何もしていない」という顔をしていても、
群れの空気は正直。


羽ばたきの速さ、
距離の取り方、
目線の向き、
群れの静けさ。


それらが少しずつ変われば、

証拠がなくても
「何かあったんだな」と分かる。



状況を理解するには
一羽だけを見ていては分からない。


二羽の距離、

三羽目の風、

群れ全体の揺れ、

空気の温度、

無意識の視線。


それらを総合して、

何度も同じ揺れが繰り返されれば、
"状況証拠"として浮かび上がる。


ホテルで働いていた頃、

こうした「群れの揺れ」を読み取って、
トラブルや事故を事前に防いできた。


だから今でも、

数羽のわずかな軌道の変化を見る癖が抜けない。