快速〔みえ〕で鳥羽へ行く

 7月26日(木)、青春18きっぷで名古屋〜鳥羽間を往復しました。往路は名古屋9:37発快速〔みえ3号〕で鳥羽まで、復路は鳥羽13:07発快速〔みえ14号〕での移動でした。

 車両はキハ75系で、製造初年は1993(平成5)年の為、今年で運用開始から30年経過します。新型車両と思っていましたが、そんなに経つのですね。運用開始当初は快速〔みえ〕の他、関西本線・名古屋〜奈良間の急行〔かすが〕や武豊線に投入されています。後年、急行〔かすが〕の廃止や武豊線の電化により高山本線での運用に切り替えられたりしています。

 ただ、この日は猛暑日だった為か、冷房の効きが悪かったです。トイレだけは空調が効いていましたが、客室はとにかく暑かったです。

 関西本線、伊勢鉄道、紀勢本線、参宮線と走り、伊勢市に11:07と定刻に到着しました。ここで4両編成のうち、後ろ2両を切り離しました。伊勢市〜鳥羽間は輸送量が少ない様です。切り離し作業等で13分も停車していました。近鉄特急に対抗する為に設定された列車ですが、13分間の停車時間と言うのは「バカ停」と言っていいと思います。

 伊勢市を出ると、二見浦に停車し、終点鳥羽に到着します。鳥羽駅はJR東海と近鉄の共用駅ですが、JR東海の駅については2020(令和2)年3月18日から無人化され、みどりの窓口も前日までの営業となりました。

↓JR東海・鳥羽駅の窓口の様子(カーテンにて閉め切られている)



↓JR東海・鳥羽駅発時刻表



 JR東海・鳥羽駅の様子はローカル線末端部のそれです。構内は1面3線で0.1.2番乗り場がありましたが0番のりばは閉鎖され、1面2線となりました。

 これに対し、名古屋、京都、大阪から直通特急が頻繁に運転される近鉄は全く様子が違います。窓口には当然ながら駅員がいて、特急券や乗車券の販売をやっています。単線非電化のJR東海と違い、複線電化で駅構内も活気があります。


↓近鉄・鳥羽駅時刻



 写真では分かり辛いですが、運転本数はJR東海のとは雲泥の差ですね。

 鳥羽駅前で昼食を摂り、13:07発の快速〔みえ14号〕で名古屋に戻りました。

 

三重県に於けるJR東海と近鉄との関係について

 今回は鳥羽駅の様子を観察する事でJR東海と近鉄との関係をほんの僅かですが、述べました。三重県には他に桑名、津、松阪、伊勢市がJR東海と近鉄との共同使用駅です。また、四日市はかつて近鉄との共同使用駅でしたが、これは共同使用の相手がJR東海ではなく、国鉄時代に遡ります。また、伊賀上野は近鉄が伊賀鉄道に経営移管しても、近鉄時代と変わらずJR西日本との共同使用駅となっています。

 伊賀上野については、他の共同使用駅とは事情が異なりますので割愛します。

 また、近鉄との共同使用駅に内容の関係から四日市を含めます。

 これらの共同使用駅に共通しているのは、「近鉄は賑わっていて、JR東海は寂れている」です。時刻表を見れば一目瞭然ですね。圧倒的に近鉄の方が列車の本数が多いですからね。

 2021(令和3)年度の年間の乗降客数は桑名はJR東海が7,124人、近鉄が17,943人、四日市がJR東海が3,613人、近鉄が34,491人等、近鉄の乗降客数がJR東海のそれを圧倒しています。

 JR東海は名古屋〜桑名間、名古屋〜朝日、富田、富田浜、四日市間に近鉄との対抗上、特定運賃を設定しています(八田、春田、蟹江からの設定もありますがここでは割愛します)。名古屋〜桑名間は350円、名古屋〜朝日、富田、富田浜、四日市間は480円です。これに対して近鉄は名古屋〜桑名間は530円、名古屋〜四日市間は760円等となっています。

 桑名と四日市については名古屋からの運賃面ではJR東海が圧倒的に有利なのに、近鉄に乗客が流れています。四日市は近鉄が繁華街に駅がある点を考慮すべきですが、桑名は同じ場所に駅があるのに、JR東海は乗客の取り込みができていないと言う現実があります。


近鉄は特急網の構築により乗客の取り込みに成功している…

 近鉄は名阪間や伊勢神宮等のビジネス客や観光客輸送の為、路線や車両への設備投資等で特急網を整備してきました。特筆すべきは伊勢湾台風襲来後に名古屋線や湯の山線等を狭軌から標準軌への改軌、新青山トンネル建築による大阪線の複線化です。

 では、国鉄やJR東海やJR西日本が観光客輸送をやっていなかったかと言えば、そうではありません。国家神道が叫ばれていた太平洋戦争突入前はは伊勢神宮参拝客輸送の為、列車が多く設定されていたそうですし、当時の参宮線の一部区間は複線でした(亀山〜多気間は尾鷲〜紀伊木本〔後の熊野市〕間開業により、紀勢本線に編入)。現在もその痕跡が残っています。

 しかし、戦局の悪化で参宮線は不要不急路線に指定され、物資供出の観点から単線化されました。

 戦後から国鉄時代末期にも名古屋、京都、大阪(天王寺、湊町)と奈良、伊勢市方面を結ぶ特急や急行列車は走っていました。国鉄分割民営化後も名古屋〜奈良間の急行〔かすが〕は残っていましたし、名古屋〜伊勢市・鳥羽間の快速〔みえ〕の設定は注目を集めました。

 しかし、近鉄から乗客を奪うところまでは行っていないですね。電化や複線化と言った設備投資ができていない事や、国鉄時代からのダイヤを踏襲している面が否めないところが主な理由です。

 特に伊勢と伊賀を分ける布引山地を越える近鉄大阪線とJR関西本線の設備の差は大きいと思います。複線電化の近鉄大阪線と単線非電化のJR関西本線。路線の地形の差があるので断定的な話はできませんが、もしJR関西本線が近鉄と同じ複線電化で列車が高速で走れる設備であれば、ここまで差が付かなかった可能性があると思います。

 JR関西本線の立地条件を考えると、名古屋と大阪の最短経路であり、草津線を使えば名古屋と京都の最短経路となります。戦後の高度経済成長時代に設備投資をしていれば…と思います。しかし、当時の国鉄は東海道本線への設備投資はしましたが、関西本線や草津線についてはあまり顧みる事はなかったのではないでしょうか。そう言う事情が積もり重なり、人口減少や名阪国道の開通や高速バス路線の開業で、没落の一途となり、ついにJR西日本は亀山〜加茂間の営業係数の発表に至ります。

 JR東海の関西本線や紀勢本線についても、およそ本線を名乗る風格に欠けているのが現実です。関西本線・四日市〜亀山間や紀勢本線・亀山〜津間は特にローカル色が目立っています。

 ICカードのが利用できるのは名古屋〜四日市間と言うのも、四日市から先の区間や紀勢本線の鉄道経営を諦めている様に見えてしまいます。東海、近畿地区の県庁所在地のJR線の代表駅で、ICカードが使えない駅は津だけと言う現状です(但し、近鉄利用の場合はICカードが利用可能)。

 新年に総理大臣が伊勢神宮に参拝する際も、東京から名古屋までの移動は新幹線、名古屋から近鉄に乗り換えて宇治山田に移動と言うのが、定番になっています。ニュースで報道される際も、まるで伊勢神宮に行くにはJR線が走っていないかの様な報道です。


JR東海が三重県で乗客を取り戻すには…

 人口減少やコロナ禍によるビジネスモデルの変化により、鉄道を含めた公共交通機関の経営環境は厳しいのが現実です。高速道路の延伸も進み、JR東海のライバルである近鉄も運賃改正に踏み切る等、経営環境改善に取り組んでいます。

 設備投資なんかとてもできないとは思いますが、それでもやらなければならない面があると思います。

 まず、関西本線・笹島信号場〜弥富間、桑名〜朝明信号場間、富田〜富田浜間、四日市〜南四日市間の複線化です。特に名古屋〜弥富間は単線の為、列車交換による運転停車があり、これが乗客離れを招いていると思います。

 八田駅付近の高架化工事も、何故関西本線を複線化しなかったのだろうかと思います。

 更に、伊勢鉄道・中瀬古〜津間も複線化し、これにより名古屋〜津間は完全複線化する事になります。近鉄や高速バスに対抗する為にはここまでやる必要があると思います。

 ダイヤですが、快速〔みえ〕を現在の30ヘッドでの運転にして欲しいです。普通列車もそれくらいの運転間隔にすべきとは思いますが現状では難しいと考えます。

 また、関西本線・四日市〜亀山間についても、快速〔みえ〕に接続させる形で普通列車を設定し、現在の1時間ヘッドから30分ヘッドにするのがいいと思います。この区間はそれなりに人が住んでいるのに、1時間ヘッドの運転では地元住民に見向きもされないと思います。

 できれば、名古屋〜JR難波・大阪間や名古屋〜京都間に「直通快速」を設定すればいいと思いますが、東海道新幹線に乗って欲しいJR東海が積極的になるとは思えませんし、山岳路線である亀山〜木津間を近鉄並みの路線改良をするには莫大なコストが掛かるので、JR西日本も積極的にはならないと思います。

 しかし、折角路線があるのにこのまま朽ち果てるのを待つよりは、何らかの活性化策を地元を巻き込んで進めて欲しいと思います。