5月27日の長崎新聞の記事によれば、政府・与党の検討委員会で「九州新幹線長崎ルート(以下「長崎新幹線」と表記)の並行在来線の経営にもJR九州が『関与すべき』」との方向性を示したそうです。「関与すべき」の度合いが不明ですが、JR九州が長崎新幹線開業後も経営に関わるべきとした点は評価していいと思います。

 

 

 

整備新幹線は各地で建設が進み、これまでに東北・北海道新幹線の盛岡〜新函館北斗間、北陸新幹線の高崎〜金沢間、九州新幹線の博多〜鹿児島中央間が開業しました。また、北海道新幹線の新函館北斗〜札幌間、北陸新幹線の金沢〜敦賀間、長崎新幹線の武雄温泉〜長崎間が建設中です。

新幹線と聞かれて真っ先に思い浮かぶのは東海道新幹線と言う方が最も多いでしょう。これは第二次世界大戦後の急速な経済成長によって東海道本線の輸送力が逼迫した事が大きな建設要因で、旅客輸送の高速化の他に、東海道本線の東京〜大阪間の実質的な別線線増との性格もあります。事実、東海道本線は新幹線開業後も経営母体は国鉄のままでした。

しかし、整備新幹線沿線は東海道新幹線沿線とは異なり、人口は少なく、物流も活発ではありません。新幹線開業後の在来線の経営が悪化するのは目に見えていて、整備新幹線沿線の殆どの並行在来線は第三セクター鉄道へと転換されました。

道南いさりび鉄道(旧江差線)、IGRいわて銀河鉄道・青い森鉄道(旧東北本線)、IRいしかわ鉄道・あいの風とやま鉄道・えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン(旧北陸本線)、肥薩おれんじ鉄道(旧鹿児島本線)はJR貨物の第二種鉄道として運賃収入も期待できます。

ただ、貨物収入も経済状況に左右される面は否めないですし、特にコロナ禍では旅客運賃収入と共に減収は避けられないと思います。また、JR貨物も鉄道からトラックへ輸送手段を切り替えている路線もあり、そこでは貨物収入は期待できなくなります。

また、JR時代には頻繁に直通列車が走っていた新潟県の上越地域(上越市や糸魚川市等)と県庁所在地である新潟市との鉄道での移動は北陸新幹線開業前よりむしろ不便になった様です。

ところで、長崎新幹線沿線ではかねてから長崎本線・肥前山口〜諫早間のJR九州での経営維持を当時の佐賀県鹿島市の市長が求めていたと聞いた事があります。これに対して当時の佐賀県知事の態度は冷淡だったそうです。

長崎本線の鳥栖〜長崎間の営業キロは約120km、長崎新幹線は肥前山口より西側は佐世保線と大村線に沿って走るので、特急〔かもめ〕に対する時間短縮効果がどれだけあるのか、甚だ疑問です。因みに東海道本線の大阪〜東京間の所要時間は特急〔サンライズ出雲・瀬戸〕の大阪駅の発車時刻が0:33、東京駅の到着時刻が7:08なので所要時間は6時間35分、東海道新幹線〔のぞみ2号〕の新大阪駅発車時刻は8:45、東京駅の到着時刻が11:15なので所要時間は2時間30分です。単純計算で4時間以上の時間短縮効果があります。

しかし、長崎新幹線はここまで時間短縮効果は見込めないでしょう。ただ、建設は順調に進み、長崎駅も在来線の高架化が完了し、開業も目に見えてきました。これからの行く末がとても気になります。