「この街の命に」という、WOWOWでやってたドラマを見ました。



保健所でまだ犬猫の殺処分が行われていたころの話。
保護されたり、飼い主によって持ち込まれた犬たちが、1日ごとに部屋を移動していき、飼い主が現れなければ5日目にはガス室に到達し殺処分される。そういう時代の保健所職員の話です。

主演は加瀬亮さん。獣医資格を持ち公務員になり、結果、動物を殺さなければいけない立場になった役です。
収容している犬たちの瞳をみつめているうちに、5日目の犬の処刑が辛くなった主人公は、まだ犬舎には余裕があるしもう少し様子をみませんかと先輩職員に伝えると、こう言われます。



「自分がつらいからって、決まりを破ったらダメだよ。保健所を作って運営してきた 先輩たちが作って、守ってきたルールなんだから」
(うろ覚えで、たしかこんな感じでした、スイマセン)






私がずっと耐えてきたことを、あなたが、あなたごときがコロッと変えてしまうなんて許さない、みたいな醜さが、人間にはあるなぁって思います。



この先輩職員には、
「俺だって最初つらかったんだよ、犬が、動物が好きでこの仕事に就いたのに毎日殺処分しなきゃいけなくて、それに耐えてずっとやってきたんだよ。なのにお前はつらいからってそれをやらないのかよ。ダメだよ、やれよ。ズルイだろ。」


みたいな気持ちがあるんだろうなって、手に取るようにわかりました。わたしにもこの醜さは、ある。誰にでもきっとある。
変える勇気を、行動力を、ズルい、と嫉妬する気持ちです。



これからの時代、というか、きっとこれまでも、
今まであったものを壊して、新しい時代をつくりあげてきたひとは、こういうことを言われてきたんだろうと思います。


今で言うとたとえば、印鑑とかね。
上の人のハンコをもらわないと話が進まないからそのためだけに東京の本社に赴く、とか、ザラだったんだろうなとおもう。
ハンコなんかいらない、電子証明書だ!と最初に言った人は勇気がいっただろうし、上司は「ハンコを押してもらうために出勤した俺らの苦労は…?」ってなるだろう。でも結果的に、確実に効率の良い、時代に沿った業務だけが生き残っていくだろう。


アナログなものは歴史になり、やがて化石になる。
印鑑は、公式な書類に必須のものでなくなったあとも、今で言うと手紙を閉じるときの封蝋のように、もしくは血判のように、アンティークでかわいいものとして残るでしょう。



先人たちの苦労は間違いなく積み重なって時代を築き、高く高く積み上がったものが崩れて、やっと、新しい芽が出る。
決して無駄なものではなく、それがあったから今があると、胸を張っていきたい。し、時代に合わせて形を変えて生き残っていきたいものです。





わたしは、
中傷や心ないコメントも芸能人だから仕方ないとか、大人なんだから下ネタもサラッとかわしましょうとか、アンチがいるのは有名の印とか
そういう暗黙のルールみたいなのを崩してくのが我々の時代の責任だと思います。
"ちょっとした"セクハラや舐めたコメントに対して、鉄仮面のにっこり笑顔で返してきた先人たちの涙を見過ごさないためにも、わたしは全力で言います。




「キモい」と。





摩吏紗