ツイッターでも聞いてくれてたりして、秋なので、おすすめの本でもつらつらと並べてみようかと思います。






1. キッチン   吉本ばなな

よしもとばななさんというと馬鹿にするひとがたまにいますが、そういう人と自分を隔絶するためにもこの本は必須でした。わたしは昔からよしもとばななさんのかく文がすごくすきです。はじまりは『海のふた』という本でしたねぇ、なつかしい。たしかわたしはまだ高校生でした。
みかげちゃんという主人公は、幾度となく自分と重なります。なぜなら、彼女も祖母を大切にしているから。境遇は違えど、みかげちゃんが、わたしのおばあちゃんに対する感情を丁寧に 的確に。ことばにかいてくれているんです。
これは脳みそのつくりのはなしかもしれませんが、わたしの脳みそはよしもとばななさんの文がいちばん、情景を描きやすいみたいで、揺れる柳、濡れた石畳、崖に立って眺める星のうつくしさ、そういうものがMVみたいに再現できる。みんなはどうかな。




2.彼女がその名を知らない鳥たち  沼田まほかる

映画を見て衝撃を受けた作品。わたしにしては珍しく、ミステリー作品を読みました。
映画をみてから小説をよんだのですが、これほどまでに小説の良さを完全に再現できたのは、阿部サダヲさんのおかげなんでしょうか。とにかくすごい、醜くて、それが人間らしいのに、なぜか神々しい。きったなくていやらしくて、でも愛ってそんなもんで、神はこういうところに宿るんではないかなって。とにかくわたしは心を揺さぶられました。これに限っては小説でも映画でも、先に手をつけるのはどちらでもいいと思います。




3.わたしが・棄てた・女    遠藤周作

薄汚くてやらしくて、でも神さま。ということで思い出しました。秋って透明で、おもってたよりもやさしくて、そんでもってものすごく、短くて、苦しいものではなかったですか?寒そうにとぶ最期のトンボに、本当に神様が乗っているの?
言っときますけどわたしはクリスチャンではないですよ。ただ、キリスト教文学からたくさんのことを学びました。この本も、大学のキリスト教文学の授業で出会いました。
遠藤周作といえば『沈黙』がマーティン・スコセッシ監督で実写化されましたが、あれには正直 がっかりしました。汚さが、全然足りない。汚ければ好きというわけでは全然ないのだけど、あの作品は 汚くなきゃダメなんです。窪塚さん 顔綺麗すぎるし。
その沈黙や『海と毒薬』(老人と海って書いてました、失敬)などの名作の陰に隠れていますが、遠藤周作はたくさんのキリスト教文学を遺しています。その中の一つ、えげつなく切なく じんわりとかなしみをのこす作品だったとおもっているのがこの『わたしが・棄てた・女』です。ぐっちゃぐちゃにもてあそんで棄てても、神は、見捨てないのか?沈黙しているのか?そう、キリスト教の神様は、絶対に見捨てないんだそうです。何か目に見えないものにすがりたいという人間古来の心理から生まれた、神さま。無心論者と言われる日本のみなさんは、今日びその話題を、どう思うんでしょうか。





4.マザー!    映画ですすみません。

神さまつながりでどうしても紹介したくなっちゃったので。
描写が過激すぎて日本で公開されることのなかった映画が、アマゾンプライム様々にきてくれました。話題になっていたのですぐ見ました。
すごく、あたらしい感想を持ちました。
《ものすごく心を揺さぶられた、でももう二度と見たくない》
気に入った映画や本を繰り返し見る私が、こんなことを思うのはすごく不思議な感覚でした。キリスト教を知っていればいるほど、内容への理解が深まります。
神は、拒まない、自分を尊ぶ者たちを決して、見捨てない、全て受け入れてくれる。罪を犯すものも、禁忌を犯すものも、ゆるしてくれる。
だから神さまなんですけど、なんだかそのこと、どこか《おかしい》《不公平だ》と思いませんか?と、問いかけられてるようなきがする。そういう意味で、欧米ではきっと問題作ですよね。日本の多くの人はある意味フラットに見れるので、内容が理解できたら妙に腑に落ちるのではないでしょうか。



5.通りすがりのあなた   はあちゅう

殺伐としたところで、ほんわかした本を一冊くらいね、のこしておきましょ。ほら、放っておくとすぐ暗い方にいきたがります。
はあちゅうさんの文体はどこかよしもとばななさんに近いものがある、とわたしはおもいます。さりげない日常を、気をつけて見なかったら気がつかないような小さなことに、意味を持たせます。美しさを見出します。そう、ちょうど、前々回のブログで書いた、ツイッターのことににている。
わたしにも、あなたにもきっとある「通りすがっただけの人」とのストーリー。やはり共感を生む、ということが、人と人とのつながりを一番に生み出してくれるんだなあ。みつを。あっさりと読めてしまうのに、軽すぎないのでぜひ。





6.本日は、お日柄もよく     原田マハ

結婚式のスピーチ原稿の書き方がよくわかる。堅苦しい空気に呑まれて、長ったらしく内容の薄い退屈なスピーチをしがちな結婚式。本当に伝えたい思いをちゃんと伝えるには。それが、小説を通して描かれています。原田マハさんの人物描写がとてもすき。西加奈子さんの人物描写もすき。
最近続々と、数少ない友人が結婚するんです。めでたい。うれしいけど、それだけじゃない気持ちを、ちゃんと表現したいから、もう一回読もう。





まりさ