きみは とても たいせつだよ | Renge☘️下大静脈平滑筋肉腫

Renge☘️下大静脈平滑筋肉腫

2018年5月下大静脈平滑筋肉腫を地元病院で切除。6月K病院の肉腫科と医療連携。2020年3月再発。下大静脈を人工血管、肉腫と右の腎臓と副腎摘出。10月O大呼吸器外科で肺転移切除。12月睡眠時無呼吸症候群。2023年子宮内膜異形増殖症。5月右肺転移手術。2024年5月左肺転移切除

毎週木曜日、朝の小学校の読み聞かせでは、

リブログした、いとうひろし著「だいじょうぶ  だいじょうぶ」の本をいつも読んでいましたが、

今朝は、幼少期に子ども達に読み聞かせて以来、7~8年ぶりに手に取る本を選びました。

「きみはとてもたいせつだよ!」

文:スー・ボックス 

イラスト:スージー・プール 

訳者:おの くみこ 

出版:ドン・ボスコ社



何故、約7~8年、私はこの本を手に取らなかったのだろう…

未熟な自分では解決困難な現実問題、疲れ、苛々、うまく生きれなさ…等日々抱え、


「きみはたいせつか…。

そう思うことが大事って分かってるけど。

それどころじゃないよ…今は心が受け付けないし、心に入ってこないよ。

この本を読むのは無理…」


そんな気持ちで、本棚の奥に置き、手に取ることはなかったです。

ですが、今朝は急に、「この本だ」と思い、子どもたちの待つ教室へ行きました。


「あなたたち、一人一人が、大切な存在なんだよ」 


と、体操座りして、真っ直ぐな目で本を見上げる20数人の子ども達一人一人を見つめながら、

祈るような気持ちで、心を込めて読みました。


マイナス思考、自己否定、自罰意識が強く、

自分を大切に思えない思考で私が苦労したから、

子ども達には知っていてほしかった、

「自分は大切な存在」だということを。

そして、読み聞かせが終わった後、

帰り道で、7~8年ぶりに、何故、この本を選んだのだろう…と問いかけてみた。


それは、前夜の家族とのやり取りで、心がモヤモヤしていたからかもしれない。


「身体の調子が悪い。なにかの病気かもしれない。」


と心配し、今度、検査へ連れて行く家族からメールが届く。


「もし、病気だったら、会社にとっては用なしになるから、もう会社にはいれないだろうな…。

自分にしか出来ない仕事があるから、恨まれるだろうし。なんか辛い。」


「病気になったら、もう人間として誰にも認められなくなる気がする…。

働けない自分なんて意味ないから。」


「死ぬのは怖くないし辛くないけど、

用なしの価値ない人間、もう認められなくなるのが一番辛い…。」


と。

少し理解できる気がしました。


1年前の3月、4月からの再就職前の検査へ行きました。

検査を済ませ、気持ちスッキリして、

さぁ、働くぞ!お給料、もらうぞ!

と希望と不安と期待を胸に、検査はサッと済ませよう…くらいの軽い気持ちの中、突然、


「腫瘍が見つかりました。

紹介状を書きます。精密検査へ行って下さい。」


と言われた瞬間から、

様々なことで自分の価値を見出し、健康体と思い込んでいた人間から、

患者のID(患者番号)がつき、

検査が必要な人、治療が必要な人、患者、病人、

という立場になりました…一瞬で。


病院の待合室で、御高齢の方や御家族が多い中、患者として一人ポツンと座る自分。


息つく間も無くバリバリと仕事をされている医師や看護師さん医療者の方々と変わらない年齢の私が、

先々への不安や心配を抱え、虚ろな顔で患者として院内に身を置く日々を、家族の言葉で思い出しました。


自分は、ここで、何をしてるんだろう?

自分はこの先、どうなっていくのだろう?

自分って、なんの価値があるんだろう?


この世に一人取り残されたような気持ちで、心に問い続けた日々…

患者、病人の立場になったショックを受け入れるのに、時間がかかりました。


だから、家族が言う、

「病気になったら、もう自分は価値がない気がする」

という気持ちは、分かる気がします。

ただ、昨年3月に私の腫瘍が見つかってからの一年間を通じて、これだけは確かです。


健康だから価値がある。

働けるから価値がある。

病気になったから、働けないから、価値がない。


と言い切ることは、絶対に違うということ。


人って、人間って…そういうことではないということ…それだけは確かです。


この一年の私は価値がなかったのでしょうか?

この一年、出会った沢山の方々は価値がないのでしょうか?

病気の私たちに関わって下さった沢山の方々(医療者や家族、周囲の方々)は、

価値のない、意味のないことをされていたのでしょうか?


絶対に、絶対に、そんなことはありません。

そんな気持ちで、家族に言葉をかけました。


「病院で何か見つかれば、後は一緒に治すだけだよ。

検査だけは行かないといけないよ。


とにかく、病気を見つけないことには、痛みが取れないし、治療が出来ないよ。


現在の身体がどんな状態なのか、特定することを優先しよう。

後のことは、それから考えよう。


手術して、復帰してる人、いっぱいいるよ。


病気になったら人生終わりじゃないよ。


今は、自己否定はいいから、

先ずは、身体のメンテナンスを優先しよう。


これまで、働き続けて来たことが、すごいよ。

働きづめで、ストレスもあり、身体に無理が来たんだよ。


だから、自分はがんばって来たんだ、と誇りを持って、自信をもって。


病気には、どんな人でもなるの。


病気は仕方ないのよ。


大丈夫だからね。」


と、言葉をかけました。


色々あり、会わない、会話しない、断絶状態の中に長年あった崩壊しかけた家族関係だけど、

病気になったことがきっかけで、立ち止まり、見つめ直す必要がありました。

自分が悪性腫瘍になり、国立がん研究センターなどのチームの研究結果の記事が目に留まりました。


「がんと診断されて1年以内の患者が自殺や事故で死亡する危険性は、がん患者以外と比べて約20倍になる。

診断が原因の心理的ストレスのほか、病気や治療による生活の変化、体力や注意力の低下などが影響していると考えられるという。」


と。


「うん…そうだよね…だろうね…」

と自分のこととして実感した闘病一年間でした。


元々、私より自己否定がすごく強い家族が、仮に悪性腫瘍になったとしたら…

治療途中に自ら…ということは、これまでの言動から考えられます。


それくらい、突然の病の告知、痛みや困難を伴う闘病生活は、辛いものだと思います。


私はまだ、そんな闘病生活を経験してませんが、

仮に、家族が私が経験した以上の辛い告知を受け、辛い闘病生活になったとしたら…


死なせる訳にはいかない…という使命感が、急に心に宿りはじめました。

私は昔、家族を絶望と孤独の中で一人で旅立たせてしまったから、

もう二度と、家族の中でそんな辛い悲しい出来事はあってはいけない…

そんな死に方をさせてはいけない…という使命感。


おこがましいけどね…。

この一年、そんな大切なことを気付かせてくれた命の恩人の方々がいらっしゃいます。


私一人では、とてもじゃないけど、一つ一つ向き合えないし、乗り越えられないことばかりでした。


感謝の気持ちは、生涯、忘れることはありません。

有り難い気持ち、心に刻み込まれています。

刻み込まれているから、忘れ得ないのです。


この一年間、想い出すと涙が出てきます。

けど、グッと心に言い聞かせて、涙を引っ込めます。


人が本気で人と向き合い、

人が本気で人と関わったら、

人は変わるのだということ…


そのことを、実感させてもらいました。

感謝と祈りを胸に、今日を、明日を、共に歩んで行きましょう。



最後に、「きみがとてもたいせつだよ!」

の最後のページを開くと、そのページには「鏡」があります。


きみはたいせつなひとって、だれだとおもう?

めをとじて、すこしのあいだ、そうぞうしてごらん?


さあ、ページをめくって…

なにがみえるかな?


ほら、それはきみのこと!


そこには、自分の顔が映るのです。

大切なあなたへ贈る本です。