カフーあらそみそーり | さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

酒場であったあんなこと、こんなこと。そんなことを書いてます。ほとんど、妄想、作話ですが。

作家でもありキュレーターでもあり、原田宗典さんの妹さんでもある、原田マハさんが書かれた「カフーを待ちわびて。」という沖縄が舞台の恋愛小説があるのだけれど、それは玉山鉄二さん主演で映画化されている。DVD化もされていて、俺はそのストーリーが好きで、当然のことDVDを購入、時々それを観ては沖縄に行った気になっていた。
しかし、この度、リアルに沖縄に行けることになった。
俺でなくても、ここはひとつ、そのロケ地に、是非とも行って、玉山さんが走ったように、俺も海岸を走りたい、となるのは、当然のことだと思う。
あれは沖縄のどのあたりで撮影されたのだろう?
早速、ロケ地を検索すると、どうやら古宇利島とその界隈で多くの場面が撮影されたらということだった。
古宇利島。
はじめて聞く名前だ。
どこにあるのだ?
さらに調べたところ、これが思っていた以上に、那覇から離れたところにあった。
歩いてはもちろん、モノレールもそこまでは行ってない。
リムジンバスがその近所まで出ているということだが、本数が限られていて、なにかと制限が多く、自由度は低い。
タクシーを1日貸し切るという手も無くはなかったが、それをするくらいなら飛行機で石垣島に行った方がまだ安かった。
つまるところ、レンタカーを借りて、自ら運転していくのが最善の策に違いなかった。
沖縄二日目、俺は早起きするとホテル近くのレンタカー屋に出向き、二番目に廉価な5人乗り乗用車を12時間契約で借りた。一番安い軽自動車でもよかったのだが、それらは既にすべて出払っていたのだ。
担当してくれた女性店員が案内してくれたのは、「れ」ナンバーの白色のトヨタヴィッツだった。レンタカーというと「わ」ナンバーだとばかり思っていたが、最近は「れ」もあるらしい。
俺はドアを開け運転席に乗ると、彼女の説明を聞いた。
エンジンのかけ方からナビゲーションシステムの使い方まで、彼女は丁寧、かつ簡潔に教えてくれた。
エンジンが、キーを差し込んで捻ることなくかけられたのにはびっくりだった。
ブレーキを踏みながらエンジンボタンを押すだけで、それは起動した。
駐車するときも同じ。ブレーキを踏みながらエンジンボタンを押せば、エンジンは停止するという。
俺が知らないところで、日本車は随分と近未来的に進化していた。
俺は言われるがままにエンジンをかけると、次にナビに行き先を入力した。
まずは玉山さんが愛犬カフーと一緒に走った海岸からだ。
それはあるカフェの目の前にある海岸だった。映画ではカフェは写っていなかったが、google mapで確認したところそこに間違いないはずだった。
店の名をナビに入力すると、驚いたことにそれだけでナビは目的地を同定し、瞬時にしてそこまでの道筋を提示した。
今までナビを使ったことは無かったが、俺が思っていた以上に、それは優秀で便利なものに違いなかった。
「これは凄いな。」
驚き、そう漏らした俺に、彼女は思い出したように言った。
「そうそう、沖縄の一般道は左車線走らないようにしてくださいね。この時間、左車線はバス専用なんで、走ってるのが見つかると警察に捕まります。」
どうやら朝の時間帯は、バス専用レーンというのが敷かれていて、一般車はそこを走ってはいけないらしい。それを知らない旅行者がたまにそこを走ってしまい警察の餌食になるのだそう。旅行者だからといって、罪が免れることはないらしい。
俺は、女性店員にOKの旨を伝えると礼を言って、アクセルを踏んだ。
平日の朝と言うこともあって、一般道は通勤ラッシュなのか、そこそこに混んでいた。
たしかに一番左車線は空いていたが、そこを走っている一般車は見当たらなかった。
しばらくナビに従って一般道を走っていると、高速道路に入った。
高速道路は空いていて、気持ちよかった。
生憎の曇り空だったのが残念極まりなかった。
時折思い出したかのように雨も降った。
その度に俺はウインカーを出し、慌ててそれを戻した。
俺が普段乗っている車と、ウインカーレバーとワイパーレバーの位置がまるで逆だったのだ。だから、車線変更しようとウインカーをだしたつもりがワイパーが動きだすなんて事態も当然起こった。その度に俺はワイパーはそのままに、慌てて逆の位置にあるウインカーレバーを操作すると、車線を替えた。
もし、雨でもないのにワイパーを動かしながら車線変更をしていた「れ」ナンバーの白色のトヨタヴィッツを今年の一月初め、沖縄で見かけた人がいたならば、その運転手は俺だったかもしれない。
なんだかんだ、ナビに従うことおよそ二時間、俺は目的の浜辺に辿り着いた。
何度かナビの言うことを誤認し、へんてこな小道に迷い込んだりしたという事実に関しての描写は、ここでは割愛する。


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カフェには浜辺に降りられる階段もあって、俺は若い女性店員に断ると、浜辺におりた。
真夏の暑さと言うほどではなかったけれど、そこそこに気温は高く、シャツ一枚でも寒くはなかった。いや十分に暖かかった。
衣類を脱ぎ捨て、海に飛び込みたい心境にも駆られたが、服を着たまま、裾をまくり、靴を脱ぎ、裸足で浅瀬を歩くのみにとどめておいた。
波打ち際に立ち、ただ無心に地平線を眺めた。
さざ波がザブンと両足をつつみ、それから、サアッとひいていった。
波がひく際、足元の砂を持っていかれ、足がちょっと砂に沈む感じ、なぜか俺はあれが好きだ。
しばらく俺はその小気味よい感触を楽しんだ。
ひいてはよせ、ひいてはよせるさざ波をひとしきり楽しんだ後、さて靴を履こうという段階になって思い出したが、俺はタオルの類を持参してなかった。
俺は靴を手に持つと、裸足のままところどころ貝殻や流木やらが転がる砂浜を、それらを踏まないように気を付けながら、カフェへとゆっくり戻っていった。
そういや、誰かが言ってたな。
沖縄じゃ、ビーサン、水着、サングラスは必需品だって。

次、古宇利島!