もしかしてだけど・・・ | さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

酒場であったあんなこと、こんなこと。そんなことを書いてます。ほとんど、妄想、作話ですが。

もしかしてだけど・・・と、昼時、赤羽にまで来たついでに淡い期待で訪れた、テレビや雑誌でも何度も紹介されている老舗鰻屋は、やはりすでに満席だった。
「申し訳ありません。生憎只今満席で・・・」
そう言って頭を下げた女の子は、どことなく女優の内山理名似で可愛かった。
「どれくらいで空きそうですか?」
と訊き返した俺に
「お食事だけのお客様だけでしたら、けっこう早いのですが、お酒も召し上がられてる方が今日は多いので、なんとも・・・・」
と、彼女はすまなそうな顔をすると、再び頭を下げた。
そういうことなら仕方がない。
俺も酒を飲む立場、想像がつくが、鰻料理を数品頼んで、酒を飲んで、最後鰻重も食べて、というような一連の過程が30分やそこらで終わるとは考えにくい。
早くて一時間、長っ尻の客相手なら最低二時間は席は空かないだろう。
仕方ない、ここは諦めて、他行こう。
鰻屋は諦めることにして、踵を返した俺だったが、
「あのぉ~」
というどこか遠慮がちな彼女の声に呼び止められた。
「もし宜しければ、お席の準備が出来次第、ご連絡差し上げることもできるのですが・・・」
振り返った俺に、彼女はどうしますか?というように上品な笑みを浮かべると首をかしげた。
そういうことなら!
是非、宜しくお願いします。
空くまで、その辺で時間潰してますよ。
早速俺の携帯電話番号を伝えようと、口を開きかけたその横で、
「よかったねえ、オマイさん!」
マリイはそう言うと、さっさと自分の電話番号を彼女に告げた。
「それじゃあ、空き次第、こちらにお電話させていただきます。」
そしてにっこり笑う彼女に「宜しく。」と会釈し、店を背にぶらり街の散策に歩き出した我々だったが・・・

ところでなんだが、なあ?マリイ・・・

もしかしてだけど、
もしかしてだけど、
彼女、俺の携帯、聞きたかったんじゃないの

※フィクション



※写真はイメージです。