ほんの一例 | さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

酒場であったあんなこと、こんなこと。そんなことを書いてます。ほとんど、妄想、作話ですが。

「アタシ、ハンパは嫌なの。安くて美味しくて量たっぷりなお店じゃなきゃ、嫌!」
美帆(仮)はそう言うと、フンッと鼻を鳴らしそっぽを向いた。
それは、ナカメの或るフレンチの店で、美帆の誕生日ということもあり、慎太郎(仮)としては、随分無理をし、奮発して彼女を招待したつもりだった。なのに、最初の前菜が運ばれてくるや、彼女の気を損ねさせてしまうとは・・・
「わかったよ。ごめん、僕が悪かった。半端、嫌だよね。」
慎太郎はそう言うと、努めて笑顔を作り、立ち上がった。
「よし、他行こう!」
美帆の横に立ち、右手を彼女へと差し伸べた。
「他ってどこよ?」
美帆は訝しげに、右手を差し出したままの慎太郎を見上げる。
「取って置きの店があるんだ。」
慎太郎はそういうと、美帆から目をそらし、遠くを見るような目で、店の天井角を見つめた。
「いいわ。」
美帆は彼の差し出された右手に自分のそれをそっと乗せた。
「もう一度言うけど・・・」
「ハンパ、イヤなんだよね?!」
美帆に最後まで言わせることなく、慎太郎はそういうと、ニヤリと笑った。

慎太郎が美帆を連れてきたのは、ムサコの隠れ酒場だった。
その外観をみて「なにこれ?」と呆れ、さらに二階に通じる細く急峻な階段をみて、「ちょっと、アタシ、無理!」と逃げ腰になった美帆だったが、慎太郎のエスコートで、なんとか二階に上がることができた。
上がった瞬間、今まで灯っていたはずの明かりが消え、真っ暗になる。
「なに?なに?ヤダ、慎ちゃん、どこ?」
と彼女が悲鳴にも似た声を上げたとき押入れの扉が開いた。
23本のろうそくの炎が揺れて見えた。
そして暗闇の中、ハッピーバースデーの歌声とともに、幾人かの人々が押入れから出てくるのが、気配でわかった。
目が慣れてきてわかったが、暗闇の中ケーキを持った親友の典子(仮)が笑っていた。
それから、道子(仮)と涼子(仮)の姿も。
「ハッピーバースデー ディア、ミホ。ハッピーバースデートゥーユー♪」
ハッピーバースデーの歌が終わり、美帆が蝋燭の炎を吹き消したところで、明かりが灯った。
慎太郎の他、美帆の知らない男たちも揃って、素敵な友好的な笑顔を見せていた。
「これからが、本番やで!」
慎太郎はそういうと、ピンク色の泡の入ったグラスをつかみ、
「誕生日おめでとう!かんぱーい!」
と頭上に振り上げた。

さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

果たして、出てきた料理は、どれも美帆の条件にあうものばかり。
すっかり満足した美帆は、慎太郎の肩に頭を乗せると言った。
「うふん、あなたって最高よ!」
そんな美帆に、慎太郎は言った。
「いいや、最高なのは僕じゃないさ・・・この店さ」
「あなたのそういう謙虚なとこ、大好きよ!」
美帆は、そういうと、慎太郎の唇に、自分のそれを、

・・・・続きは、ご自由に妄想されてくださいね。



あ、毎度のことですが、すべてフィクションね。料理の写真以外、登場する人物、名称、背景はすべて架空のものです。

なお、紹介した料理は・・・以下、タイトル参照。


さてと、今夜はどこ行く?