しばらく進むと
この山の無言の存在が
道の脇に動くものを
見つけた
雷鳥だよー
お兄さん
子どもですね
近くに親がいるはず
少し待ってると
りょっぴー
ここに隠れてるよ
そして出てきた
あまり人を怖れない
まったく動く気配ないので
先に進むことにした
振り返ると
上高地を流れる
梓川が見える
次のポイント
蝶槍が見えてきた
巻き道の突端で
ひと休み
お兄さん
三重県志摩市から来た
というので
えっ、志摩?
ボクは
瀬戸内海の島出身だよ
同じシマだあ
あーそうなんですね
いいとこですよね
三重もええやん
去年、同窓会で
お伊勢詣りしたんや
いいよねえ、あのへん
みんなで
空気が違うって言ってたよ
じゃあ
いいとこ同士
友達になろうね
残念ながら反応なし
ここから
急な下り坂で
樹林帯に入る
約200m下り
鞍部の広場から
上りになる
休憩にぴったりの場所で
止まる
志摩のお兄さんは
またあとで
と先に行った
パンをかじり
コーヒー飲んで
ペース回復
急登を150mほど
上がって
ピークだ
あれっ
また下り〰️
そして
再び鞍部があり
池塘を回り込み
上りだ
振り返ると
ガスが東方から
上ってきて
蝶槍を包みこみそう
上空をヘリが
ホバリングしたり
旋回しはじめた
上りきったところの
崖にロープが張られ
捜索しているらしい
声のやり取りが
耳に入ってきた
覗きこんだが
何も見えなかった
その後
すれ違った男性が
ヘリが人を救助して
吊り上げていましたよ
と教えてくれた
3つ目の
ピークに立つと
両側から
あれー山頂まで
まだ結構あるじゃん
それにガスが
上がってきた
1時 やっと
常念岳 2857m
登頂
なんとか
ガスが取れていて
よかった
志摩のお兄さんの姿は
すでになかった
蝶ヶ岳直下まで
一緒だった
ひとり旅のおっちゃんも
お別れできず
行き違いになる
山での出会いは
はかない
山に何を求めて来たか
また歩くペースも
観る視点も間隔も
違う
逆に
はかない時を過ごすため
山に吸い寄せられて
いるのかなあ‼️
正面にも
槍ヶ岳 3180m
がはっきりと
北アルプスの
象徴する姿を現す
はかない出会いと
リンクする
頂上は混雑していて
先を急いでいるし
早々に
下りることにした
ところが
表示が見当たらない
以前の記憶をたどり
山頂の反対側から
下ることを思い出した
迷っている
おばちゃんも誘導して
一気に下る
ガスが下方を覆い
まったく小屋が見えない
りょっぴー
小屋に着いたら
名物のリンゴジュース
飲めるよお
と何度も
励ましてくれる
どこまで下りれば
見えるの?
と目標がわからない
辛さを感じる
途中、2度も
雷鳥がいたが
立ち止まる気にならない
目前でやっと
赤い屋根が見え
400mを下りた
小屋前のベンチに
到着したら
りょっぴーは
急いで
リンゴジュース400円を
買いに
常念小屋
に入っていった
もっと冷たかったらなと
思いはしたが
生き返る気分
すでに2時
先の小屋まで
3時間半
ここはまた
あきらめて
泊まらせてもらえるし
ここに
泊まることにした
予約していた
大天荘は
キャンセルした
1枚の布団に二人だ
6畳間に12人が寝る
部屋にいても
落ち着かないので
100円で携帯充電しながら
夕食準備する
4時まで食堂で
りょっぴーと
今後の計画を話し合う
明日
餓鬼岳まで行くのも
無理と判断
餓鬼岳小屋にも
キャンセルの電話をした
すると
小屋のおかみさんの
おばあちゃん
あらー残念だわあ
今、常念小屋なら
たいへんねえ
体調大丈夫〰️?
この前、奥さんと
たくさん話してね
会いたかったわ
来年いらっしゃいよお
と明るく応えてくれた
わたしたちも
会って話したかったなあ
6時晴れてきたので
小屋前の広場に出ると
しっかり
常念岳が見えた
部屋の入口近くの
ご夫婦が
さっき、そこに熊がいてね
と写真を見せてくれた
でも、一々
通報しないみたいですよ
こんなところまでねえ
6時半夕食
4交代で食事取るので
終わったところから
すぐ片付け
ビール出すと
長引くので
飲酒禁止になった
生ビールは
夕食前にすでに
売り切れだ
とにかく
連休で大混雑
再び
ご夫婦が
長野県警のヘリが
近くを飛んでいて
手を振って
写真撮ったと
見せてくれた
あのヘリだと
わかった
8時布団に入ったが
足を伸ばせない
窓を開けて
時々涼しい風が入るが
熱気を感じた
しかし
若いカップルの足が
しょっちゅう
当たるし
寝返りしづらく
眠れなかった
マッキー三世