翌朝、麻矢はママより早く起きて
たまちゃんをのぞきに行った。
「生きてる!」
たまちゃんは昨日の姿勢のまま
小さなゆりかごの中ですやすや
眠っていた。
「疲れたんだね」
麻矢は一生懸命生きようとして
いるたまちゃんから目が離せ
ない。
その日から、かわりばんこに
たまちゃんに牛乳をやったり、
時には果物をかじらせたり
して育てることにした。
たまちゃんの顔はよく見ると
黒猫をミニチュアサイズに
したみたい。
コウモリってネズミのような
顔だと思っていたけど、全然
違うんだね。
たまちゃんはみんなに可愛がら
れてすくすく育っていった。
ある日、とんでもないことが
起こった。
「ねえ、たまちゃんの左足変
じゃない?」
ママの言葉にあわてて左足を
見ると、全然力が入らなくて
だらりとしている。
「骨折したんじゃないかな?」
ママはあわてて、動物園に電話
した。
「それは骨折していますね。副木
を当てて2週間もしたらくっつき
ますよ」
「副木?!」
麻矢の頭は真っ白!
コウモリの赤ちゃんに副木
なんて、どうやって当てれば
いいんだろう?
「ママにまかせといて」
ママはいやに落ち着いた声で
胸をポンと叩いた。
マッチを半分に割って、たまち
ゃんの足の長さに切り、折れた
足に添えて半分に切った傷バン
ソウコウでくるくる巻く。
「ママってすごいなあ!」
麻矢は魔法使いみたいなママ
をちょっぴり尊敬した
たまちゃんは少し不自由に
なったけど、左足を引きずり
ながら元気で何でも食べた。
すべすべだった黒い肌にポヤ
ポヤと産毛が生えて、たまち
ゃんはやっとコウモリらしく
なって来た。
2週間経って、副木を外す日が
来た。
ママは痛くないようにそっと
バンソウコウを取って副木を
外す。
副木がなくなると、たまちゃん
は「やった〜!」って言うよう
にカーテンをよじ登った。
2週間ですっかり治ったみたい
だよ。
たまちゃんは不思議なコウモリ
で麻矢に親友を作ってくれた。
クラスメートの留衣ちゃんが
遊びに来た時、ちょうど授乳
の時間が来た。
「留衣ちゃん、ちょっと待って
てね」
麻矢は留衣ちゃんの前でスポ
イトでたまちゃんにミルクを
与えた。
「わあ~!コウモリの赤ちゃん
なんて初めて見たよ!かわいい
なあ!」
留衣ちゃんは男の子みたいな
子だけど、夢中になって麻矢の
仕草をじっと見ている。
「いいなあ!我が家にもコウモリ
の赤ちゃんが来ないかな?」
そんな無茶苦茶なことを言い
ながら留衣ちゃんは帰って
行ったのだけど、2日後
電話が掛かって来た。
「ねえ、麻矢ちゃん聞いて!
我が家にもたまちゃんが
来たんだよ!」
そして「そんなの嘘だよ!」と
信じない麻矢に小箱に入れた
コウモリの赤ちゃんを連れて、
留衣ちゃんがやって来た。
「ホントだ!コウモリの赤ちゃん
だねえ」
小箱の中にはたまちゃんより
少し成長したイケメンの子が
入っていた。
留衣ちゃんはどうしても、コウ
モリの赤ちゃんが欲しくて夕方
家の周りをぐるぐる探したんだ
って……
そうしたら、お風呂の外の壁に
この子がペタッと張り付いて
いたから、大喜びで麻矢に電話
してきたというわけだ。
こうして麻矢と留衣ちゃんは
親友になったんだ。
たまちゃんが麻矢の家に来て、
3ヶ月が経った。
身体もずいぶん大きくなって、
羽を広げると15cmくらいある。
どんどん甘えん坊になっちゃ
って、麻矢の服の襟の下に
もぐり込んでじっとしている。
学校に行こうと思っていると、
カーテンに止まってユラユラ
片方の羽を広げて手招きする。
「もう、たまちゃんったら!」
たまちゃんが引き止めるから、
麻矢は何回も遅刻しそうにな
った。
そんなかわいいたまちゃんと
お別れの日がやって来た。
たまちゃんは洗面器のお風呂
に入れてもらって、鳥かごの
上に掛けられた布の上で
気持ちよくお昼寝をしていた。
「この布ずいぶんゴミがついて
いるなあ」
きれい好きなパパがやって
来て、たまちゃんが乗っている
布をベランダからパタパタ
振ったんだよ。
たまちゃんは家の中しか飛んだ
ことはなかったけど、勢いよく
大空に飛び出してそのまま帰っ
て来なかった。
ママと麻矢と知奈はたまちゃん
ともっとずっと一緒にいたかっ
たから、何日も探した。
たまちゃんの絵入りのポスター
まで描いて探したけど、見つか
らなかった。
たまちゃんは仲間のところに
戻って行ったんだよ。
夕方になると、麻矢の周りを
たまちゃんとその仲間達が
ひらひら飛び回って、まるで
お礼を言ってるようだった。
麻矢に留衣ちゃんという親友を
残して、たまちゃんは今頃
コウモリの国で幸せに暮して
いるんだろうね。
《おしまい》
ませて書こうと思ったけど、
なかなか難しいですね
逆にたくさんあったエピソード
を削って書きました
たまちゃんは私に3人の友達を
作ってくれました
もう三十年も前のことなのです
今なら骨折した時もネット検索
したでしょうね

