『秘境…余話』
蔵に道具を取りに入ったYくんが、
慌てて走って来た。
「く・蔵の中に大きなタヌキが居る❗️」
「え~! 何でまた?」
1週間前に、下の弟のMくんが帰って
「タヌキが蔵に入って困るから、何
とか塞いで欲しいよ」と母に頼まれ
戸板で厳重に塞いだはずなのに?
母に告げると、そんなにびっくりした
風でもなく
「この前、糠の容器がひっくり返って
いて、おかしいなあと思っていたよ。
多分、まだ中にタヌキが居るのに、
戸板で塞いだから出られなくなった
んだね」
「何だか丸々太っているよ」
「じゃあ、住み着いたんだね」
そんな呑気に構えていていいのか❗️
「戸を開けて出してやろうよ」
Mくんが行って、重い蔵の扉を少し
開けてやった。
「これで、タヌキも山に帰るね」
ところが、従妹のEちゃんが来た時、
その話をしたら好奇心旺盛な彼女は
「まだ、蔵の中に居るかも知れない
から行って見よう」と言う。
Yくん、Eちゃん、私の3人でそっと
蔵に入って、パチッと灯りをつけた。
ドサドサドーン❗️
凄い音がして、何かが駆け抜け奥の
暗闇に跳び込んで行った。
「アッ!タヌキだ❗️」
「スゴい大きなタヌキだね❗️」
YくんとEちゃんははっきり目撃した
という。
私はびっくりし過ぎて、その姿を
見落としてしまった
そして、タヌキは今も実家の蔵の中に
居るはずだ。
母よ、もしかして蔵の中でタヌキを
飼うことにしたのだろうか?
「なまちゃん、ねえ❗️ボク笑い事じゃ
ないと思うよ」