過去を紐解いて…闘病の記録☆宣告 | まりんぼったの独り言

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ヨウムのまりん(2000年生まれ)との日々…
笑ったり、怒ったり、ひたすらにぎやかな日常の中で、私(なまちゃん)の日々も流れて行きます。
調子に乗って、俳句、短歌、川柳、小説なども。
秘境に1人暮らしをしている母も92歳になりました。


 



  ドアを開けて入ると、そこで待っていた
   のは副院長の医師だった。

  座ると、検査のデータを見ながら
  「組織を調べたら、悪性でした。
    手術をして病変を取り除くことを
     お勧めします」
   淡々と告げられた。

   「ああ、やっぱり・・・」
    不思議に落ち着いて受け止めることが
    出来た。

   マンモグラフィに始まり、超音波、
   MRI、組織検査と次々に検査を繰り
   返したことで、いつの間にか覚悟が
   決まっていたのだろう。


   幸い自覚症状もない状態での発見
    なので、全摘ではなく部分切除に
    なるという。


   「ところで、ご家族は?」

    「あっ、主人が一緒に来ているの
       ですが・・」

    「それなら、入ってもらってください。
       一緒に聞かれた方がいいからね」

    私は慌てて夫を呼び、並んで先生の
    前に座った。

   「今、奥さんに話したのですが・・」

    先ほどと同じ内容を、夫に告げる。

   「はあ、はあ」
    聞いてはいるのだろうが、何も質問
   しないし、理解出来ているのか不安
    になる。


   手術の日程などは後日ということに
   なり、頭を下げて診察室を後にした。


   外を見ると、すっかり日が暮れて、
  激しい雨脚が窓を濡らしている。

   駐車場までどうやって行こうか?
  傘もないのに・・・


   そんなことを考えて、夫を見ると
   表情が読み取れない。

  「仕方ないね。駐車場まで走って行こう」

   ずぶ濡れになりながら、遠い駐車場まで
   無心で走った。

   今日は結婚記念日なのに、がんの宣告
   を受けて言葉もなく、二人で雨に濡れて
   走っている。

   何年経っても、その日のことは忘れ
   られない。

   もしかしたら、人生最悪の瞬間だった
   かも知れない。

  後に、夫にその日のことを訊くと、
  「先生にがんだと言われた後は、頭が
    真っ白になって何も覚えていない・・」

   そうだろうな。
   立場が逆だったら、私も同じかも知れ
    ない。

    辛い立場に追い込んでしまったことを、
    ずっと申し訳ないと思っている。

    帰宅してから、大仕事が残っている
    ことに気がついた。

    今日の決定を母や娘たちに、ショック
   を与えないように伝えなければ。

   しかし、これが思った以上の波紋を
   起こしてしまうことになった。


   続きます


  




「なまちゃん、すごく落ち込んだと思うよ」