▷ ボス猿の指揮下軍団走る夏
季語……夏
▷ 猿の食ぶ親指ほどの新藷よ
季語……新藷(しんいも)……夏
長雨が止んで、真夏の太陽が秘境の
畑を照らす頃。
音もなく、奴らがやって来る。
50匹もの猿の軍団だ。
毎年、夏野菜が熟れる頃、時ならぬ母
からの電話に驚かされる❗
「猿が何もかも持って行ったよ❗」
今年は、少し状況が違った❗
今年の猿は、秘境の母の畑を襲う前に、
谷一つ隔てた隣家のSさんの畑に
現れた。
Sさんは在宅していたのに、僅かな
時間に若いとうもろこしと、まだ
親指大にしか育っていないサツマイモ
を根こそぎやられてしまった。
「猿がそっちに向かっているよ」
Sさんからの電話に、慌てて母が
畑に出て見ると、折しもボス猿が
見張りに立ち、モロッコ菜豆(さいとう)
を、千切りに掛かっているところだ❗
母は、咄嗟に傍にあった鉄製の管を
掴み、走りながら怒鳴った
「コラーッ💢💢💨」
驚いたのは猿である。
まさに、蜘蛛の子を散らしたように、
四方に散って逃げて行った。
後にSさんがやって来て、2人で話し
合った。
「私は、猿が何かをしそうで怖くて、
追い払えないんよ」とSさん。
Sさんより母の方が高齢で、脚も弱い
のだが、負けん気の強さは天下一品。
平気で猿に向かって行くし、一度は
下の畑に猪が出ていた時、大きな
石を背中に投げつけたこともある。
致命傷にはならなかったが、猪もさぞ
驚いたことだろう。
とは言え、離れて暮らす娘としては、
高齢の母が猿軍団に戦いを挑んでいく
姿は、少しばかり刺激が強いのである。
※ 五月の連休最後の日に、4人で力を
合わせて、夏野菜を植え付けました。
猿にやられては、たまったものでは
ありません。
「カッコさん、幾ら温めても、これって
胡瓜だよね?
ボク、胡瓜って好きじゃないんだよ」