今、世の中、大変な時代になったという。

しかし、果たしてそうかな。

人間のやる事は、何千年の昔から何も変わってはいないと思うのだ。形は違うが。

ただ、今まで隠れていたモノが露見しているだけのこと。

物事は、見方次第。

岸田総理のお蔭で、政治家としての資質を欠く人物が全て表面化し、次の選挙では必ず落選するだろう。


無敵の防御【第十四話】

石丸(北村一輝さん)が、本部に呼ばれ、その間、代わりにケン・ソゴル(ソン・スンホン様)がミヤビ(イ・ジアさん)の警護をしていた。


どうしてそんなことになったかは、別として。


ケン・ソゴルの携帯が鳴る。

『ヨブセヨ』

イ・ソングク(チ・ジニさん)からの電話だった。

〈以下、韓国語〉

『そちらの状況は?君にしては、珍しく時間がかかってるじゃないか?』

『はぁ、日本の公安の警護は鉄壁で彼女に近寄る事が全く出来ません。いや、しかし、必ずミッションはやり遂げます。お任せください。』

ケンは、ニヤッと笑いミヤビを見つめ、ウィンクした。

ミヤビは、呆れたように苦笑いする。




イ・ソングクは、ケンとの電話を切り、側にいたチェ・ジノン(チン・イハンさん)に尋ねた。

『実際の所、どうなんだ。アイツは、何をしている。』

『よく分かりません。』

ジノンは、お茶を濁した。

『分からないとはどうゆうことだ?』

『ケンはともかく、我々のミッションを誰かが妨害しているのは、明らかです。』

『誰か?』

『西側の組織かと。』

イ・ソングクは、『同盟国か・・・』と呟き、深いため息をつく。そして、天を仰いだ。


その頃、警察庁警備局局長方崎(渡部篤郎さん)と公安外事4課警視正草野(北村一輝さん)は、時の総理 佐間慎太郎(堤真一さん)と対峙していた。



『貴方がたは、一体何をしているんです?1日も早くこのプロジェクトを進める必要があるのは、おわかりなはずだ。』

『はい』

方崎の表情は暗かった。

佐間総理は続ける。

『20年前、このプロジェクトが成功していたなら、今の日本は違っていた。あの失敗で、ここまで落ちぶれた日本を世界に誇れる国に戻さなければならない。全く腹立たしい。』

更に話は、続く。

『太平洋戦争敗戦で、日本国は、米国の属国扱い。今もそれは変わっちゃあいない。あの時、東條英機ではなく、ブーゲンビル島で戦死した山本五十六(役所広司さん)が生きて首相になっていたら?彼は、開戦に強く反対し米国との講和を強く望んでいた。』

山本五十六は、軍人ではあるがロンドンに長く駐在、ハーバード大に留学経験があった。

どこか掴みどころのない男だったが、軍人というより政治家向きなのは誰が見ても明らかであった。

彼は世界情勢に通じていた。科学的数学的なその知能に先見の明。彼は、日本がアメリカに勝てない事など、とっくに分かっていた。

とっとと和平をアメリカと結び、日本を護る。

真珠湾攻撃も講和を出来るだけ日本に有利に運ぶためのモノだった。彼が、生きて首相になっていたら、あの無意味な戦争も原爆投下も無かったはずだ。

佐間は、本気でそう思っている。

いや、佐間だけではない。

『日本は、属国ではなく独立した東洋一の国であるべきだ。

昔、帝都と呼ばれていたこの東京。

今度こそ、プロジェクトを成功させ、山本五十六の命を救い日本の第40代内閣総理大臣に据えるんです。早く、彼女にプロジェクトに戻るようにと、伝えろ。』

佐間の脳裏に、山本五十六の国葬の様子が浮かんでいた。



草野は、20年前の3000人以上の犠牲者に対する哀悼の念がない佐間に怒りを感じた。草野が佐間に詰め寄るのを押し止めた方崎。

『国益を考えたまえ。日本の国益だけを。』

佐間は、椅子をくるりと回し背中を向けた。

『了解いたしました。』方崎は、静かに返事をした。


総理執務室から出た途端、

『方崎さん、なんで何にも言わないんです?あの総理は、いや官邸は狂ってる!』

方崎は、悲しそうな眼差しを向けた。

『草野、今、彼らに逆らったら私は間違いなく解任されるだろう。中枢にいるから出来る事もある。』

なるほど、そうかもしれない。

『国益かぁ。』草野は、呟いた。

『どうした?』

『いや、国情のケン・ソゴルに言われたんですよ。』

『なんて?』

『〈国益?そんなモン考えてるから、足元をすくわれるんだよ。〉って。』嘲笑するケンの顔が草野は悔しかった。


『なるほど、確かにな。』方崎は、言う。


ケンは変わった男だと方崎は思っていた。

仕事がら、各国のインテリジェンスのエージェントに出会ってきた。

優秀なエージェントは皆口を揃え

〈Nothing lasts forever!〉と言う。永遠など存在しないと。

しかし、コールドブレイドと異名を取るケンが、意外にも方崎に

『永遠は、俺の心にあるんだよ!』と言い放った。


『そうだな。国益など、どうでもいいと私も思っている。今は、国がどうのと言っている場合じゃあない。明日、地球が消えてなくなるかも知れないんだからな。人生は、一度しかない。やり直しは効かないんだよ。たとえ、失敗したとしても、未来を見て生きる。だから、尊いんだろう。歴史だってそうだ。過去に戻って自分達の都合のいいように書き換える、そんな事が、許されて良いはずはない。過去の過ちを正面から受け入れる。それが、今を生きる我々の責任だ。それをしないのは、その瞬間、確かに生きた人々の命を人生を侮辱することだと私は思う。これからの日本の未来を護る、それが我々の仕事だ。』






石丸(草野)は、方崎の言葉が深く心に沁みた。

そう、目の前の美しい命を未来を全力で守る、その思いが最高の防御だと。


ケンは、ミヤビに何もなかったように、

『あ〜腹減った。何か食おうぜ。俺は、誰かさんみたいにあれがいいとか言わないから。

君は、何食べたい?』

『ナポリタン(笑)』

『なんだ、それ(笑)ハイ、決まり。イタリアン?石丸、もう帰ってくるな〜!』

久しぶりに、ミヤビは、声を出して笑っていた。


2023年10月、様々な国の思惑が、ミヤビのいや人類の未来を壊そうとしている。