最近の暑さは異常だが、
どうやら異常なのは暑さだけではないようだ。
『事実は小説より奇なり』
いや、人間の歴史を紐解けば、同じ事を繰り返しているだけの懲りない生き物なのかもしれない。
美しき勇者【スピンオフ1】
事件は、全て終わった、はずだった。
2023年、52歳になった令和のミヤビ(イ・ジアさん)には、20歳になる大学生の娘 晄(アキラ)がいた。
穏やかに帝都大学宇宙工学部の研究室で過ごしていたミヤビの所に、パク・レイ(クリスタル〈f(x)〉
)から一通の手紙が届いた。
手紙の内容はこうだ。
『突然の手紙、お許しください。
ミヤビさん、貴方の記憶には無いかもしれない人の話をこれからします。
貴方の事件が解決し、貴方が普通の人間になってからも、ケン・ソゴル(ソン・スンホン様)は貴方の警護を一人で続けていました。あの人は、こう言っていました。たとえ、ふたりの人生が死ぬまで交わることがなくても、彼は貴方の側にいて貴方を護ると。そして、彼は、警護中銃撃されました。彼の予感は当たっていたのです。まだ、全て終わってはいない。彼は、命は取り留めましたが、銃弾を頭に受けました。銃弾は、脳の危険な箇所にある為に、取り除く事が出来ませんでした。いつ、亡くなってもおかしくない状況です。
どうか、ロンドンまできていただけないでしょうか?貴方が、幼い頃過ごしたロンドン郊外です。
彼は、きっと貴方に会いたいはず。どうか、どうかお願いです。』
手紙には、涙の跡がある。
そして、読み終わったその瞬間、
何かがミヤビの全身を包みこんだ。
ミヤビのケン・ソゴルについての記憶は、この瞬間に鮮やかに蘇った。
ケンと過ごした幼い頃、共に困難を乗り越えた日々も。
ミヤビは、晄を呼び事情を話した。
そして
『さあ、貴方のパパに会いに行きましょう。』と。
ロンドンの郊外。
そこには、ミヤビにとって懐かしい風景が広がっていた。
晄が
『ママ、キレイな所だね。初めて来たのにとっても懐かしい。』と言う。
イングリッシュ・ガーデンの中から、白いワイシャツを無造作に来た背の高い東洋人の男性が近づいてきた。
まだ、ミヤビ達には気づいていないようだ。
『ケン!』ミヤビが声をかけた。
ケンは、驚き、そして狼狽えた。
『何故だ、何故ここにいる?』
ミヤビは、微笑み彼の側へと歩き始めた。