らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】 -45ページ目

第305話 弟の浩一

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浩一は

赤と白と黄色のケーブルをテレビに差込み

セガサターンを起動させた。

私はベッドの上にうつ伏せに寝転がり

両肘をついて顎を支えゲームを鑑賞する体勢をとった。

理沙も同じ姿勢で隣に寝転がる。

「最近のハードは画像が綺麗なんだねー

でもこういう3Dのゲームって操作が難しくない? よく出来るわね」

目まぐるしく変わる場面に酔いそうになって私は言った。

浩一は「慣れだよ」と言ったけれど

なんだか世代の違いを感じてしまう。


「昔はよく一緒にファミコンやったよね。 

私の中学受験が終わってからファミコン買ってもらったんだったね。

最初の頃ってさー、ソフトも抱き合わせ販売じゃなかった?」


「そうだったね、マリオとドラクエとあとしょーもないソフトが二つついてた」

「何がついてたんだっけ? マッハライダーとロードランナー?」

「姉ちゃんよく覚えてるな~ ファミコンはいろいろやったな~

ポートピア連続殺人事件とか覚えてる?」

「覚えてるよ! 攻略本なかったら絶対クリアできないやつ!

なつかしぃねぇ~

休みの日はドラクエを交代でやったよね。

お姉ちゃんはしょっちゅう復活の呪文を書き間違えてさー

なのにあんたは、慎重に何度も見直すから絶対に間違ったことなかったよね!」


「あはは、そうだったね。

姉ちゃんはドラクエはどのへんまでやったの?」


「うーん。ファイブかな? 天空の花嫁まではやったよ。

あれ良かったよね。 すごい感動した! パパス出てくるやつだよね?」


「そうだね、ドラクエはスリーとファイブが名作だよな~」


「天空の花嫁さー。

浩一はどっちと結婚したの? ビアンカと金持ちの娘いたじゃん?」


「当然ビアンカでしょ」


「えーーーー! 

やっぱなぁ。 これって性格なのかね。

浩一は昔から冒険しないタイプだよねぇ。 なんつーか地味よ!

たまにはハメはずしてる? 彼女は? 

もう十八なんだし、まさか童貞じゃないんでしょ?」


「……理沙の前でそういう話はちょっと……」

浩一が肩をすくめた。

「あぁ、それもそうね」

私が横目で理沙を見ると

恥ずかしそうに頬を赤らめていた。


「姉ちゃんさ、エヴァ知ってる?」
浩一が話題を変えようと話を振った。


「エヴァ? エヴァンゲリオン? 名前だけは知ってるよ」


「最近あれをずっと見てたんだ。

姉ちゃんも見たほうがいいよ。 俺全部ビデオに撮ってあるから」


「ガンダムみたいなやつでしょ? あんまり興味ないんだけど」


「全然ガンダムとは違うよ……

エヴァは精神論が軸になってるんだ。 俺も自分の存在価値について考えた」


「存在価値?!

あんたの口からそんな言葉が出てくるなんてねぇ!

浩一いつのまに大人になっちゃったの? お姉ちゃんはなんだかさみしいよ!」

私はそうちゃかしたけれど

浩一の口から発せられた『存在価値』という言葉の重みを感じていた。


浩一の存在価値。


幼い頃から浩一は

おとなしく手のかからない子供だった。


両親は問題児の私にかかりきりで

家族の中で浩一は影の薄い存在だった。


私と母が親子喧嘩を始めると

浩一は黙ってまだ赤ちゃんだった理沙を自室に連れていき面倒を見ていた。


私と母の親子喧嘩の後

父と母の夫婦喧嘩の後

浩一はさりげなく母の元に寄っていき

言葉少なに慰めていた。


母が「浩一はおりこうさんね」と声をかけると

控えめな笑顔で応えた。


お年玉をもらうと

すぐに使い切ってしまう私とは違い

浩一は今の年までそのほとんどを貯蓄している。


「浩一はしっかり者ね」

母に言われてはにかむ浩一の姿。


母の膝の上でおとなしく座っている浩一の姿。


その一つ一つを私は切なく思い出していた。


「姉ちゃんは必要とされてる人間だ」

浩一はゲームをする手を休めることなく言った。


「どういう意味?」


「俺はさ~

自分が誰からも必要とされてないってどっかで感じてたんだよね。

でもさ、エヴァを見て考えたんだ。

人間がもしも必要とされているならそれは役割としてなんじゃないかな。

その役割っていうのは代替可能なものなんだよ。 

かけがえのない存在なんて本当にありえるのかな?

だから孤独なのは何も俺だけじゃなくて皆もそうなのかなって思った。

姉ちゃんの周りにはいつも人が大勢いたけど、本当は姉ちゃんもさみしかったんでしょ?」


「役割かぁ・・・・・・

たしかに人って知らず知らずのうちにいろんな役割を演じてるものよね。

浩一は私のせいでずっと『良い子』を演じてこなきゃいけなかった?

自分がしっかりしなきゃって思ってたの?」


「うん。 それはある。

お母さんが可哀想だったから。

姉ちゃんはお母さんを責めるけどそれは間違ってるよ。 悪いのはお父さんだよ。

お父さんがあんな風だから母さんは一人でいろんなことを抱え込むしかなかったんだ。

お父さんはダメなやつさ。 あんな風には俺は絶対になりたくない」


「でも! お父さんはきっと仕事で忙しかったんだよ。

医者っていっても開業してるわけじゃないから大学でずっと研究しいてたでしょう。

論文書いたり本を読んだり、きっとお父さんのやってる事はすごく高尚なことなのよ!

お父さんの理論はとても難解で理解出来る人が少ないけど

一部には熱狂的な信者がいるらしいよ!

だからきっと・・・…普通の父親らしいことなんてやってる暇がなかったんだよ」


「そんなの言い訳にならないでしょ。父親なんだから。

あの人はその役割を放棄してたと思わない? 姉ちゃんが庇うの俺にはわかんないね。

俺さー、姉ちゃんが家を出てからいろいろやってたでしょ・・・・・・? 

それを知って正直すごいショックでさ・・・・・・

その時、お父さんと初めてサシで話し合ったんだ。

姉ちゃんが好きであんなことやってるわけないから助けてやれよ!って俺言ったんだよ。

でも結局は父さんも俺も無力だったね・・・・・・」


「浩一・・・・・・」

私が目頭が熱くなった。


浩一の話は骨身に染みる。

一番の被害者は浩一と理沙なのだと思った。


「浩一、お姉ちゃんはこういう風にしか生きてこられなかったの。

でもね、今こうやって浩一や理沙と一緒にいられて本当に幸せだわ。

兄弟ってかけがえのない存在だよ! 役割なんかじゃない。

そうでしょう?」


「・・・・・・そーかもね。

今度一緒にエヴァ見ようよ。 理沙も一緒にさ」


「うんうん」

私は頷いた。


「浩一、お姉ちゃんはあんたのことが大好きよ」


浩一は黙ってゲームを続けていたけれど

背中が「俺もだよ」と言ってくれているような気がした。


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