らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】 -4ページ目

第344話 過食

携帯からの目次を作りました


ノリ君と毎晩飲みに行くから

暇を持て余すことはなかったけれど

一人になった時に思い浮かぶのはやっぱり俊ちゃんの顔。


それを消し去るように私は過食に走った。

いわゆるヤケ食いで気分を紛らせることが習慣になってしまった。


悲しくて泣きたいとき、苦しくて耐えられないとき

とりあえず食事を大量に取れば気分が安定して感情が穏やかになる。


そういう経験を繰り返すうちに

食欲とは無関係に食べることで心を満たそうとする条件付けが形成されていった。


とくに酔って帰ってきてからは

満腹中枢がイカれているからいくらでも食べることが出来た。


食べたら安心する。

食べ物が無くなると不安で仕方なくなる。


食べて食べて食べ疲れるまで食べて…ようやく眠る、そんな毎日だった。


当然のように

そのツケは私の身体にダイレクトに反映された。


ある日、店で接客をしていたら

自前のチャイナドレスの尻の部分が破けたのだ。


まるで漫画みたいに

客席に座った途端ビリっと音がして思わず目をむいた。


「ちょっとお手洗いに」


引き攣った笑顔でそういい残すと

バニティで尻を隠して立ち上がり早足にフロントに向かった。


慌てて後姿を確かめる。


自慢の白のチャイナドレスの尻の部分が

見事に菱形に裂けていてピンクのパンツが丸見えだった。


「どうしよう! パンツ見えちゃってるよぉぉ!」

私は半泣きで高梨に助けを求めた。


「だから、あれだけ痩せろって言っただろう!

おまえの太り方は尋常じゃないって。 ったく…

とりあえず、ウェイターに店の制服を持ってこさせるから今日はそれ着てやって」

呆れ顔で高梨が言った。


「バイトの子と同じチャイナで営業とか… 嫌すぎるんだけど!」


「しょうがねぇだろ! とにかく痩せろよ!

クラブに移動するまでもう一月切ってるんだぞ? その体型じゃ正直キツいの自覚してる?」


私はあからさまにムっとした。

だけどそう言われてもしかたないことも十分わかっていた。


近頃は「まりも太ったな」と言われない日がなかったし

さすがに客から指名変えをされるようなことはなかったけれど

場内指名は目に見えて減っていた。


だけど、自分でそれを認めてしまえば食べられなくなるから

「私はグラマーなの! 巨乳売りなんだし別にいいんだもん!」

と開き直りにも似た言い訳をして気にしないようにしてきた。


その気になればいつでも痩せられる自信はあった。


ただ、明日からダイエットしようと毎日思いながら

今日までズルズル来てしまったのだ。


結局その日は

店服のLサイズのチャイナドレスを着て接客することになった。


自業自得とは言え

No1の私がバイトのホステスと同列の服を着るのは屈辱的だった。


さすがにヤバいか…

マジで痩せないとな…


いよいよ追い込まれた私は

営業後、メイクルームに戻ると鏡に映った自分の姿をまじまじと見詰めた。


クビレが全くないトドみたいなウエスト。
お腹は思い切りひっこめても胃のあたりがポコっと出ている。

顔はアンパンマンみたいに膨れている。


ずっと目を背けてきた現実。


たった数ヶ月で

ここま変わってしまった自分のプロポーションに我ながら絶句した。


こんなの私じゃない! 醜い! デブ! ブス!


今更のように自分を責めたところで後の祭りだった。


綺麗なことは私の唯一とも言えるアイデンティティだった。

その崩壊はますます心のバランスを危ういものにしていった。


ダイエットを決意してからの私は

美に対する強迫観念のようなものが日増しに強くなっていった。


痩せなければ美しくなれないし

誰からも自分の価値を認めてもらえない。


痩せなければ生きている価値さえないと思い込んだ。


そんな強迫観念とは裏腹に

ダイエットは思ったようにうまくいかなかった。


「痩せなければ」と意識すればするほど

私の意志とは別に食欲の強度と頻度が増していく。


痩せたい、痩せたい、と強く思うことは

食べたい、食べたいと同じだけ強く思うことだった。


どうしても口に何かを入れたい…

自分の中を食べ物でいっぱいにしたい…

だけどこれ以上太るわけにはいかない…


しかたないから

食べ物を口に入れ咀嚼だけしてビニール袋に出すようになった。


外出中はそんなことは出来ないから

食べた後、トイレで自分の指を喉に押し込んで吐いた。


いくら食べても吐けば太らなかった。

むしろ痩せた。 


味を占めた私は

今度は吐き癖がついてしまった。


「どうせ吐けば太らない」そう思うと

一日中過食のことで頭がいっぱいになるようになった。


ノリ君と飲みに行くのもやめて

いつもスーパーの袋2つ分いっぱいに下げて帰ってきては
吐くための食事をした。


買ってきたものを残らず食べ尽くして

もう出ないくらいまで吐く。


ノドが焼けて血の味がする。辛い。

そこまでやって、やっと悲しさがこみ上げてくる。
無駄な出費と無駄な時間と、傷ついた食道と胃。


時々我に返って涙が出た。でも止められなかった。


店でもレストランでもバーでも隠れて吐いた。

それが人にバレないようにいつもビクビクしていた。


もはや吐くために食べているのか

食べると条件的に吐いてしまうのかよくわからなかった。


体重は減ってきたけれど

手や顔のむくみが引かず顔色がいつも悪い。


嘔吐するときに顔に強い力が入るためか

目の縁に皮下出血が出来る。


さらに、吐くとき指を喉の奥まで突っ込むから

いつも喉が痛くて口内炎が出来る。


身体は悲鳴を上げているのに過食は止められない。


綺麗になるために吐いていたはずが

私はますます醜くなっていく。自信も何もなくなった。


惨めだった。


自責の念と罪悪感

憂鬱、自己否定の気持ちがどんどん増していく。


過食に支配され

制御不能の自分自身が情けなくて虫けらみたいに思えた。


ある晩、指を突っ込んでも吐けなくて
歯ブラシの柄の部分を喉チンコに押し付けながら泣いていた時
ふと忘れていた記憶が蘇った。

私は今と全く同じような体験を以前にしたことがあると。

覚醒剤だ。

過食嘔吐と覚醒剤依存の症状は驚くほど酷似していると思った。

「そうか… シャブだっ!」
私は閃きと共に独り言を言った。

何故今まで気がつかなかったのは不思議で仕方なかった。
シャブなら食欲自体がなくなるから苦労なく痩せられる。


今度は絶対に依存しない。 

1グラムだけ買って痩せたらそれっきり。

それで全てが解決する!


綺麗になるためなら私は悪魔にだって魂を売れる。

シャブさえ手に入ればこんな惨めな思いはもうしなくてすむ。

腹の底から笑いが込み上げてきた。


思い立ってからの私の行動は早かった。


客のチンピラのツテを辿り

なんなく売人を探し出して自ら連絡を取った。


「今すぐに1グラム欲しい」と伝えると

相手の売人はすぐに手配して運んできてくれると言う。


覚醒剤が手元に届くまでの間

楽しみで胸が騒ぐのを止められなかった。


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