らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】 -25ページ目

第324話 トラブル

携帯からの目次を作りました


店側からは色営業は禁止だとか

客に「来て」とは言ったらいけないと言われていたけれど

そんなものは最初から無視して自分流を貫いた。


「来て」がダメなら「逢いたい」と言葉を変えればいいだけのことだし

「寂しいから彼氏が欲しい」ということを前面に押し出して

客を客扱いすることなく『彼氏候補』に見立てた営業をした。


指名してくれる客には

「あなただけが特別」という特権意識を早い段階から植え付けた。


方法はいろいろあるけれど

手っ取り早いのは本名を教えてしまうことだった。


「あなたには源氏名じゃなくて本名で呼ばれたいの。

お店ではまりもだけど、店の外では『さゆり』って呼んでね♪」

私はこそこそと耳元で囁く。


もちろん『さゆり』も偽名だけど、客はそれを疑ったりはしない。


指名客は全員私をさゆりだと信じ

俺だけが知っている秘密だと思い込んでいた。


「風邪引いちゃったの。 お店の前まで薬を届けて。 こんなことあなたにしか頼めないの」

なんて言うのもかなり有効な手段だ。 


キャバクラに指名を入れて飲みにくるような客にとって

気に入った女からの我侭は

無邪気な女の愛らしさにうつるものだということを私は知っている。


店の前まで来させてしまえばこっちのもので

「ありがとぉ! 顔見れて嬉しい♪」なんて潤んだ瞳で見つめれば

客はそこで帰ったりはまずしない。


「一時間だけ飲んでいくよ!」と鼻の下を伸ばして言いだすので

店の黒服に「ご案内お願いします」と頼めば一丁上がりだ。


まんまと私の指名1本が加算され

必要のない薬のストックが溜まることになる。


指名が重なっているときは客席についた途端

「あぁ~落ち着く。 ここでは仕事モードじゃなくていいんだもん♪」

ととびっきりの笑顔で微笑む。


これは、売れっ子になればなる程有効で

「たくさんの客の中から俺が選ばれた」という優越感が発生しやすい。


兎にも角にも

「あなたは他の客とは違うの」というアピールをするのが肝だ。


だけど決して嘘八百を並べて詐欺師みたいなことをするわけではなく

どんな会話でも自分の思ったことや本音を率直に話す。


身も蓋もないくらい正直に

時には自分にとって不都合なことも織り交ぜて話を展開させる。


そのほうが「この子は正直な子だ」という印象を与えられるし

結果として客の警戒心が解けていくものだから。


男はよっぽどの馬鹿じゃない限りホステスに警戒心を持っているものだ。


まず真っ先にその警戒心を取り払ってしまわなければ

勝負に持ち込むことは出来ない。


警戒心がなくなり心を許すようになれば

客の財布の中身に合わせてこちらのペースで事が運びやすくなる。


かなりベタな営業だけど

ラトゥールに来ている大抵の客には通用した。


指名本数はおもしろいように伸びていく。


私はラトゥールのホステス達の中ではやや浮いた存在になりつつあったが

『他の子達も指名が欲しいなら同じようにやればいいのに』

と特に気にすることなく上から目線で調子にのっていた。


そんな私が古株のホステス達に目をつけられないはずがなかった。

入店一週間もしないうちにトラブルはおこった。


ある日の営業後

高梨からミーティングを口実に事務所に呼ばれた。


私服に着替え、帰り支度をしてから事務所を訪れると

高梨は「おつかれさま。 どう、店には慣れた?」と切り出した。


「はい。 とても働きやすいです。 付回しが上手なので指名も伸びて感謝してます」

私は高梨にお礼を言った。


実際、高梨の付回しは見事だった。


あれだけの客数と大勢のホステス達を

臨機応変に回し続けるには、相当頭の回転が速くないと無理だと思う。


若いのにラトゥールを任されているだけのことはある。


しばらく他愛のない話をしていると

高梨が咳払いをして本題と思われる話を始めた。


「実はね、ちょっと気になることがあって。 アリサの口紅がメイクルームでなくなったんだ」


私は最初、話の意図がよくわかっていなかった。


アリサとエリという子がラトゥール歴が一番長く、4年近く在籍しているのは知っている。

アリサは長身で髪が腰近くまであり飯島愛に似ている。 エリは鼻筋の通った美人で美脚だ。

ただヤンキー上がりっぽくて、正直私はあまり得意なタイプではない。


「それで、ある女の子がね

まりものバニティケースの中でアリサの口紅を見たって言ってるんだけど

…ちょっとその中見せてもらえるかな?」


高梨の言葉を聞いて耳を疑った。

次の瞬間、私は頭に血が上って大きな声を出していた。


「はぁ? なんで私が口紅なんて盗むんだよ!

どんだけ貧乏人だよ! 口紅なんて配る程持ってるんだけど?」


言いながらデスクをバンっと叩くと

他店の黒服達が一斉に私に注目した。


「まぁまぁ… とりあえず、そういう報告があったからには店側は確かめないといけないからさ」
高梨はなだめるように笑顔でそう言った。


「どうぞ? 隅々まで見てくれてけっこうですよ!」

私はシャネルのバニティケースを高梨の前に勢いよく投げ置いた。


「ごめんね。 じゃあ開けるよ」


高梨は山ほど入った化粧品をデスクの上に一つ一つ並べていく。

ファンデーション、ビューラー、マスカラ、数種類のコンパクト、口紅 


「あっ!」 思わず声が出た。


そこには知らない口紅が入っていた。


高梨がその口紅を持ち上げ

「これ、まりもの?」と尋ねたのに対し、私は「違います」と即答した。


私は自分がハメられたのか

あるいは、メイクルームでたまたま混ざってしまったのかについて考えを巡らせた。


出勤前の慌しいメイクルームで鏡の前で何人ものホステス達が化粧をしているのだから

何かの間違いでアリサの口紅が私のバニティに紛れ込むことはありえるかもしれない。


だけど、アリサとエリが私のことをハメている可能性も十分考えられた。


わからなかった。


疑うのはやめようと思った。

さすがにそこまで陰険なことをするとは思いたくなかった。


「う~ん… メイクで紛れ込んじゃったんですかね?」

私は高梨に言った。


「そうかもしれないね。 とりあえず明日俺のほうからアリサには返しておくよ」


「そうしてください。 気がつかなくて私もすいませんでした」

私は自分の非を認めるというスタンスを取った。


だけどこの口紅の件は後を引く形になってしまった。


想像は出来たけれど

やはりというか、二人は次の日から態度を急変させた。


何かのキッカケを待っていたかのように

「あの子は手癖が悪いから気をつけたほうがいいよ」と陰で噂を立てられた。


泥棒扱いされるのは腹が立つけれど

私は新人でまだ友達も少なく

文句を言うことも態度をつけることも出来なかった。 


それからは、あからさまに無視されたり

同じテーブルにつくとソッポを向かれたりした。


ラトゥールは完全マンツーマンシステムで

客一人にホステスが一人つくから

団体席でアリサやエリと一緒になっても

自分の隣の客に集中していればその場はやり過ごせた。


「やれやれ… くだらない…」 

私は憂鬱な溜息を吐く。


女ばかりが大勢集まれば

異色のものを排除したがるボスタイプは必ずいる。


それに

女から嫌われるのは慣れっ子だ。


ストリップの姐さん達は比べ物にならないくらい怖かったし

女同士の足の引っ張り合いには相当な免疫がついている。


「こんなことで私は負けない」


負けず嫌いと闘争心に火がついて

私はますます仕事に精を出すようになっていった。


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