第113話 悪循環
その日は夕方に直樹から電話が入り
同期会の飲み会があるから帰りが遅くなると言われた。
「えー…。さみしいから早く帰ってきてよ。」
私は不機嫌になり直樹に駄々を捏ねる。
「ごめんな。 適当に飲んで帰るから待ってて。」
直樹は申し訳なさそうに私を宥める。
「うん…。1時間に1度は電話してね。約束だよ!」
「うんうん。電話するから。」
サラリーマンだし
いろんな付き合いがあるのわかっているけれど
頭で理解できても感情がついていかない。
たった何時間か我慢して待っていれば
直樹はちゃんと帰ってきてくれるのに
その何時間を待つ事が私にはすごくつらかった。
直樹には私と付き合う前に好きな女の子がいて
その子は同期入社のOLなのだ。
付き合い始めた頃に
同期会の写真を見せてもらった事がある。
その子は森口博子をショートカットにしたようなかんじで
けっして美人ではないのだけど
直樹の好きそうなタイプである事はすぐにわかったから
私はその子に対してものすごいコンプレックスを持ってしまった。
直樹には私なんかよりも
絶対にあの子の方がお似合いだ。
私みたいな本当は汚れきった女と
直樹では釣り合いがとれない。
そう思うと
いてもたってもいられなくて
何度も何度も直樹のポケベルを鳴らしてしまう。
電話がくるとほっとするけれど
電話を切った後には
こんな事して直樹を困らせてたら嫌われちゃう・・・。
と、ますます不安は大きくなっていく。
一人で待っていると
嫉妬妄想や被害妄想が膨らんでいき
ありもしない事が現実のように思えてくる。
直樹は、もしかしたら
彼女と二人きりで飲んでいるのかもしれない・・・
私の悪口を言っているかもしれない・・・
だって、私って最悪だもん!
直樹が私の事なんて好きなわけない!!
そんな考えで頭の中がいっぱいになり
不安で不安でまたポケベルを鳴らしてしまう。
直樹だってこれじゃ
全然楽しく飲めないに決まっている。
私は泣きたくなってしまう。
どうして私ってこうなんだろう…って
自分の事がどんどん嫌いになっていく。
それに自分が日頃、嘘ばかりついているから
直樹の事も信じる事が出来ないのだ。
私がいっぱい嘘をついているのと同じように
直樹だって嘘をついているかもしれないって思ってしまう。
ポケベルを鳴らすと
直樹はそのたびにちゃんと電話をかけてきて
「もうすぐ帰るからごめんね。」
なんて言う。
「さっきからそう言って帰ってこないじゃん!
どうせ、あの子とよろしくやってるんでしょ! もういいよ!」
そう大きな声で言い、電話を一方的に切ったら
本当に泣けてきた。
こうやって直樹の事を試して困らせて
自分の事をますます嫌いになって・・・。
悪循環の輪をどこで断ち切ればいいのか解らずに
どうする事も出来ない。
直樹だってつらいだろうけど
私はもっともっとつらいの!
直樹が好きで好きでしょうがないのに・・・
このままじゃ私・・・嫌われちゃうよ・・・。
私みたいな女と付き合ったのは間違いだったって
直樹がいなくなっちゃう。
そしたら・・・私は・・・どうすればいいの?
好きになればなるほど
不安は大きくなっていき
私はその不安に呑みこまれていった。
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