第118話 砂の城
魔法の葉巻を吸いながら
式場のパンフレットをパラパラと捲る。
『本当にこれでいいの?』
ぼんやりと蕩けた頭で
自問自答を繰り返している。
夢にまで見た結婚を目前にして
私の気持ちは急激に萎えていった。
直樹が双方の親に
結婚という言葉を出した時点で
私の気持ちは満足してしまったのだ。
私は
結婚がしたかったのではなく
直樹の気持ちを信じたかっただけに違いない。
心という目には見えないものの証拠を欲していたんだ。
直樹が
私との結婚の意志を表してくれた事で
はじめて直樹の気持ちを信じられるようになった。
それなのに
結婚がリアルになっていく程
私の心は暗い影に覆われていく。
結婚=幸せという幻想は
結婚が遠いところにあったからこそ思えた事だった。
私にとってこれは
子供がシンデレラなどの御伽話を夢見ているのと
なんら変わらない事だったのだ。
そして
直樹の気持ちが信じられるようになった今
もう一つの矛盾が私の中に生まれている。
直樹の愛している女の子はどこにもいない。
直樹の愛する私は
私の演じてきた架空の女の子だという事。
社長令嬢のまりもなんてどこにも存在しないんだ。
直樹が本当の私を知ればどう思うだろう。
援助交際、中絶、ヤクザの愛人
そしてドラッグ
社長令嬢だと偽り、親からもらっていたはずのお金は
実は私が体を張って稼いだお金なのだと知ったら・・・。
汚れきった過去を知っても
直樹は変わらず私を愛してくれるだろうか。
今もこうして
直樹をだましながらラリっている事がバレたら
どう思われるのだろう。
嘘の土台の上に
さらに嘘を積み重ねてきた2年間・・・。
本当に数え切れない嘘をついてきた。
直樹の好きだったOLの家に
何度も無言電話をかけた事もある。
勇気を出して
全部正直に言えたなら・・・
それを謝って許しを請う事が出来たなら・・・
直樹は許してくれるだろうか。
ありのままの私を受け入れてもらえるなら
結婚して、本当に幸せになれるのかもしれない。
でも
今のまま
このまま結婚してしまえば
私はずっと直樹をだましていく事になる。
結婚してからも嘘の上塗りを続ければ
私は、膨れ上がった巨大な嘘の塊の下敷きになってしまうだろう。
それに
私の方こそ架空の男を愛していたのだと思う。
出会ったその日から
直樹の事を運命の人だ
王子様だと思い込んでいたのだから。
直樹の事を理想化して
結婚という未来予想図を完成させるためだけに生きていた。
愛していたつもりだったけれど
本当はあそこから救い出してくれれば誰でも良かったのかもしれない。
私は直樹の事をちゃんと見てきたのか
自分でも解からなくなってしまった。
こんな自分勝手な話が許されるわけがない。
自己中心的にも程がある。
でも
私は自分の事で精一杯で
人の事を考えられる余裕なんて全くなかった。
いつもギリギリの精神状態で心はずっとヒリヒリしていた。
こんなの言い訳になりはしないけれど・・・
これから
どうすればいいのかわからない。
大事に守り
必死に築いてきた砂の城は
もう崩壊寸前だった。
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